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脊髄損傷における痛みについて

           

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この記事を読んでわかること

脊髄損傷後の痛みの特徴がわかる
脊髄損傷後に痛みを感じなくなる状態を理解できる
脊髄損傷による慢性期の痛みが与える影響がわかる


脳からの運動の指令を身体に、身体からの痛みなどの感覚を脳に伝達する脊髄を損傷すると、麻痺やしびれなどの神経症状が出現します。
発症早期には痛みが知覚できなくなりますが、時間の経過とともに今まで感じたことのない痛みを知覚することもあり、注意が必要です。
この記事では、脊髄損傷における痛みの特徴や原因について解説します。

脊髄損傷後の痛みの特徴と原因

脊髄を損傷すると感覚が障害されるため、痛みを感じなくなるとお考えの方も少なくありませんが、必ずしもそうではありません。
脊髄を構成する神経細胞が障害を受けることで、脊髄損傷患者の13〜94%の患者で神経障害性疼痛を経験すると報告されています。
また、神経障害性疼痛だけでなく、脊椎不安定性に伴う筋・骨格的な痛みも併発するため、脊髄損傷後は複数の痛みを感じる可能性があり、また痛みの原因を明確に診断することは容易ではありません。
そもそも、痛覚は末梢神経から脊髄の後角に伝達され、そのまま脊髄内を上行して脳に到達するため、この経路のいずれかが障害されることで神経障害性疼痛が出現します。
具体的な症状としては、下記のような症状が挙げられます。

  • 灼けるようなビリビリした痛み
  • 刺されるような、ピーンとした痛み
  • 本来痛くない触覚や温冷覚で痛みを感じる

神経障害性疼痛の特徴は、特定部位の灼けるような、刺されるような痛みとともに、その部位の知覚の低下を併発しやすい点です。
また、触覚や温冷覚に対して感覚が過敏になってしまい、本来痛くないはずの感覚でも痛みを感じる「アロディニア」と呼ばれる感覚異常も出現します。
では、なぜこのような状態になってしまうのでしょうか?
脊髄損傷後の神経系の再構築の過程で、神経の機能や構造が異常変化し、その結果感覚異常や痛みが出現すると考えられていますが、詳細なメカニズムはこれまで明確になっていないのが現状です。

痛みを感じない脊髄損傷の状況

褥瘡の問題
上記で示した神経障害性疼痛は、あくまで損傷した感覚神経や脊髄の再構築の結果生じるものであり、慢性期に生じる痛みです。
しかし、脊髄を損傷した直後の急性期には完全に感覚神経が障害され、損傷した部位より末梢側の痛みを一切感じられなくなることもあります。
痛みを感じないことによるデメリットも多いです。
通常、同じ体勢でいると痛みが出現するため、定期的に体位変換を行うべきですが、脊髄損傷患者ではそもそも痛みを感じていない上に、麻痺のせいで自身では体位変換できないため、しばしば褥瘡が問題となります。
また、脊髄損傷によるストレスで消化管穿孔など合併症が出現しやすくなりますが、内臓の痛みも感じにくくなっているため自覚症状に乏しく、重症化するまで気づかずに発見が遅れるケースも少なくありません。
以上のように、痛みを感じられないことは人体に生じている有害事象の発見が遅れることにも繋がるため、脊髄損傷の厄介な症状と言えます。

脊髄損傷と痛みの関係性

脊髄損傷の急性期には痛みを感じられないことが問題となり、その後慢性期には異常感覚や異常疼痛が問題となるため、どちらも注意が必要な状態です。
特に問題となるのは慢性期に生じる痛みであり、これは日常生活や社会生活にも大きな影響を与えます。
痛みがあることでリハビリに対して消極的となり、体を動かす機会も減っていくため、筋力低下を招いてリハビリがさらに進まなくなる悪循環に陥ってしまいます。
さらに、痛みのせいで友人との外出が億劫になってしまったり、家事や入浴・睡眠など日常生活に必要不可欠な行動にも制限がかかってしまうため、疼痛管理に悩んでいる方も少なくありません。
また、慢性期の痛みは一般的に治療が困難であり、時間の経過とともに増悪していくケースも少なくありません。
そのため、痛みと上手く付き合っていくためにも薬物療法やリハビリテーションなど、自身の症状にあった適切な疼痛管理を行っていくことが肝要です。

まとめ

今回の記事では、 脊髄損傷における痛みについて詳しく解説しました。
脊髄損傷によって身体からの痛みの情報が脳に伝達されなくなるため、発症早期は痛みを自覚しにくくなります。
しかし、時間の経過とともに神経が再構築され、むしろ痛みを過剰に感じたり、本来痛くないような刺激すら痛いと感じてしまう状態に陥る可能性もあるため、注意が必要です。
これらの症状に対して、現状では疼痛コントロールのための薬物療法や、リハビリテーションしか手立てはありません。
一方で、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、脊髄や神経の治る力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「再生医療×同時リハビリ™」によって、これまで改善の難しかった神経障害性疼痛をはじめとする脊髄損傷後の痛みの改善が期待されます。

Q&A

脊髄損傷にはどのようなレベル(程度)がありますか?
脊髄損傷には、その程度によって不完全損傷と完全損傷の2つがあります。
脊髄が横断して離断され、感覚や運動の情報の伝達が完全に絶たれた状態を完全損傷といいます。
反対に、損傷が部分的で神経機能も一部温存された状態を不完全損傷と言います。

脊髄損傷の麻痺レベルは?
脊髄損傷の程度は麻痺やしびれの程度によって、Frankel分類ではA〜Eの5段階に分類されます。
Frankel分類によれば、神経学的所見がない状態ならE、反対に障害部位より末梢の完全麻痺ならAと分類します。

<参照元>
・ J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/36/1/36_12/_pdf
・MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/09-脳、脊髄、末梢神経の病気/痛み/神経障害性疼痛



貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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