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脊髄損傷者でみられる自律神経障害について

           

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この記事を読んでわかること

自律神経について
脊髄損傷者でみられる自律神経障害について
脊髄損傷の後遺症は?


脊髄損傷後、運動や感覚神経が障害されることで生じる麻痺や感覚障害と併せて、自律神経が障害されて生じる症状もあります。
自律神経が過剰に反応する結果、異常な血圧や脈拍の変化を起こす自律神経過反射、体温調節障害、排便・排尿障害など、ときには人間の生命維持に影響を与えうる障害を起こすことがあり、予防や介護を中心とした適切な対応が求められます。

自律神経について

自律神経は、血圧や呼吸など、身体のさまざまな活動を調節しています。
その特徴は、人が意識的に努力しなくても、自動的に働くところにあります。
血管、胃腸、膀胱、生殖器、肺、瞳孔、心臓、および汗腺、唾液腺、消化腺などの内臓に分布しており、交感神経と副交感神経の2つに分かれています。
一般的に交感神経系は身体を刺激、副交感神経系は抑制する方向に作用します。
交感神経の神経節の多くは、脳幹や脊髄のすぐ近くに位置しており、副交感神経の神経節は、臓器の近くか、臓器内に位置しています。

脊髄損傷後にみられる自律神経障害について

胸髄
では続けて、脊髄損傷後にみられる自律神経障害について、解説します。

自律神経過反射

自律神経過反射とは、外部や身体の刺激に対して突然身体が過剰に反応してしまう状態のことを言います。
この症状は、第6胸椎(T6)以上の脊髄損傷者に最もよく見られます。
血圧の急激な上昇や低下、著しい徐脈、末梢血管の狭窄、呼吸困難、筋肉の攣縮などがみられ、医学的な緊急事態とみなされる重篤な状態です。
最悪の場合、脳卒中や肺水腫などが生じ、場合によっては心停止に至ることもあります。
自律神経過反射は、交感神経と副交感神経の両方が遮断された状況です。
例えば膀胱が満杯になったなどの刺激に対して、交感神経が過剰に反応してしまいます。
それだけでなく、抑制する方向に働くはずの副交感神経は、その反応を効果的に止めることができず、むしろ悪化させる可能性があります。
自律神経過反射への対策は、このような過剰な反応を起こさないようにすることです。
特に排便と排尿に対するケアは重要で、場合によっては膀胱内にカテーテル(管)を留置することもあります。
また身体に刺激が加わるような処置を行う際には、慎重に血圧や脈拍をモニターし、異常があれば至急対処できる体制のもとで行うことも重要です。

体温調節障害

わたしたちは、汗をかくことで体温を調節していますが、第4胸椎(T4)以上の脊髄損傷者では、汗の量をうまく調節できなくなり、結果的に体温調節がうまくできなくなることがあります。
また、末梢血管を収縮させて熱が体外に逃げないようにしたり、筋肉の小刻みな収縮を起こして熱を生み出したりして、体温を上げることも難しくなってしまいます。
そのため、環境温が高くなっても汗が出ず、熱が体内にこもって高熱状態になります。
そのまま放置していると、いわゆる熱中症と同じ状態になり、生命の危機にさらされることもあります。
逆に環境温が低くなると、体温も下がりすぎてしまうことがあります。
体の中心部の体温が上がりすぎたり、下がりすぎたりすると、適切な体温に戻すことが大変になってしまいます。
したがって予防が重要です。
水分補給をしても汗が出てきませんので、熱中症の治療と同じように、体の表面を濡れたタオルで拭いたり、霧吹きで水を吹き付けたりします。
最悪の場合、冷たい風呂に体を浸すこともあります。

末梢血管の調節障害

わたしたちの皮膚の表面に走る末梢血管では、気温の変化や感情の変化、また体位の変化に応じて拡張や収縮を繰り返し、血流量を調節しています。
この調節を司っているのが、自律神経系です。
特に高位の胸部以上の脊髄損傷者では、この血管の調節が障害されてしまい、末梢血管が拡張したままになることがあります。
その結果、手足のむくみを生じたり、頭痛やめまいを生じたりすることがあります。
また拡張したままの血管からは熱が逃げてしまいますので、低体温になってしまうことにもつながります。
さらには、体内の腸や脳などの臓器への血流も維持できなくなり、臓器の機能障害の原因となることもあります。

起立性低血圧

末梢血管の調節障害の結果起こる障害のひとつが、起立性低血圧です。
これは横になった状態から座ったり、体を急に起こしたりしたときに生じるものです。
わたしたちの身体は、このように体を起こすと血液が一過性に下半身の方へ集まってしまうため、末梢血管を収縮させて血流を調節し、頭や心臓への血流を維持しています。
しかし自律神経障害のために末梢血管の調節が障害されていると、重要臓器への血流が維持できなくなり、体を起こすだけでめまいが生じたり、脈が異常に速くなったり、一過性に意識を失ったりすることもあります。
もしこのような症状が体位の移動によって生じたら、体を横にすることで回復が望めます。
足の位置を頭の位置よりも高く持ってくることで、さらに状態が安定します。
また予防するためには、体の移動をゆっくりと行うこと、普段から積極的に水分を補給しておくことなどが挙げられます。

排便・排尿障害

排便や排尿という行為は、わたしたちの意思で行いますので、自律神経が関与している訳ではありませんが、腸管や膀胱などの機能は、自律神経の影響を受けています。
自律神経が機能していると、腸管内では便やガスが移動し、直腸へと送られる結果、スムーズに排便ができます。
また膀胱内に量が蓄えられ、適切に排尿ができます。
比較的低い位置の脊髄損傷でも、これらの自律神経機能が障害されることがあります。
その結果、便が腸管内で蓄積してしまったり、膀胱から絶えず尿が漏れてしまったり、逆に溜まりすぎてしまったりすることがあります。
そのため脊髄損傷者のケアでは、定期的な排便や排尿ができるようにすることが重要で、そのために介護者が指を使って肛門から便を出す摘便や膀胱内のカテーテルを挿入して排尿することも必要となります。

まとめ

脊髄損傷後に起こりうる自律神経障害について説明いたしました。
残念ながら現在の医学では、これらの症状を完全に治癒させることは困難です。ただ最近注目されている再生医療の力を使えば、わたしたちの生活に密接に関わっている自律神経機能の回復が望める可能性が十分にあります。今後の医学の進歩に期待したいところです。

Q&A

脊髄損傷の後遺症は?
主な後遺症は、上肢や下肢の麻痺やしびれ、排尿や排便の調節が付かなくなる膀胱直腸障害などが挙げられます。
また、自律神経が損傷すると血圧や体温の調整が付かなくなり、起立性低血圧などの後遺症を残すこともあります。
第4頸髄以上の損傷では、呼吸筋麻痺をきたす可能性があります。

脊髄損傷の自律神経障害はなぜ起こるの?
自律神経とは交感神経と副交感神経の総称であり、血圧、脈拍、体温、排尿、排便など多くの生理機能をコントロールしています。
自律神経の一部は脊髄内を走行しているため、脊髄を損傷するとこれらの機能に影響が出てしまいます。
主に、起立性低血圧、発汗異常、尿閉、便秘などが挙げられます。


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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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