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脳梗塞で意識不明になるメカニズム

           

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脳梗塞は脳を栄養する血管がなんらかの原因で閉塞し、脳細胞が壊死してしまう病気です。
四肢の麻痺やしびれなどの局所的な症状が一般的ですが、症状の程度によっては意識不明・意識障害に陥ることもあります。
そこでこの記事では、脳梗塞で意識不明になるメカニズムや、その場合の予後について解説していきます。

脳梗塞の意識不明と意識障害とは

脳梗塞
脳梗塞とは、脳を栄養する血管がなんらかの原因で閉塞し、脳が機能するために必要な酸素や糖分を供給できなくなる病気です。
特に脳は非常に酸素需要の高い組織であるため、血流が短時間途絶えるだけでも壊死してしまいます。
壊死する範囲や部位に応じて様々な神経症状をきたし、代表的な症状として四肢の麻痺やしびれ、構音障害や嚥下障害などが挙げられます。
しかし、中にはそのまま意識を失ってしまい、意識不明・意識障害に陥ってしまう方もいます。
そもそも意識不明・意識障害とはどのような状態を指すのでしょうか?

意識不明・意識障害とは?

「目の前で人がバタンと倒れた=意識障害」と考える方も少なくありませんが、これは誤った解釈です。
意識が変容する時間が数秒から数分で、可逆性のある(その後すぐに意識が元に戻る)ものは意識不明・意識障害ではなく、「意識消失」と言い、医学的には明確に区切られています。
意識消失の場合、主に心臓の弁膜症や不整脈、てんかん、迷走神経反射などが原因として挙げられ、そのメカニズムは一時的な脳血流の低下や脳の過剰な電気信号の放出です。
それに対し、意識不明・意識障害とは数時間から数日以上続き、基本的には医学的介入がなければ改善することのない意識変容です。
主な原因は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、低血糖や高血糖、電解質(ナトリウムやカリウム)異常、低酸素脳症などが挙げられます。
意識障害と言っても、軽度のものから重度のものまで様々であり、日本ではJapan Coma Scales(JCS)という評価指標を用いています。
JCSでは、0が正常な状態で、数字が大きくなるほど、重度の意識障害であることを意味します。
まず覚醒度合いによって3段階(1桁、2桁、3桁)に分けられ、その中でも3段階に細分化されることから、「3-3-9度方式」とも呼ばれます。
例えば、JCS Ⅰ-3は「自分の名前が言えない」、JCS Ⅲ-300は「痛みを与えても体が全く反応しない」と分類されています。
このように、「意識障害=倒れる」というわけではなく、意識レベルの変容が長期間継続することを意味しています。
では、脳梗塞で意識状態が変化してしてしまうのはなぜでしょうか?
脳梗塞で意識不明に至るメカニズムは下記の2つです。

  1. 上行性網様体賦活系の障害
  2. 大脳皮質の広範な障害

上行性網様体賦活系の障害

脳梗塞によって上行性網様体賦活系(狭義には中脳〜視床)が障害されると意識障害をきたします。
人の意識は脳幹から視床、大脳皮質へと繋がる一連の神経線維のつながりによって保たれており、これを上行性網様体賦活系と呼びます。
脳幹とは中脳・橋・延髄の総称であり、脳幹の背側部には上行性の感覚を伝える神経線維の1部が走行しています。
この神経線維は網様体と呼ばれる部分に入り、その後、視床と脊髄前角へとつながります。
このうち、視床を経由するものを上行性網様体賦活系と呼び、視床から大脳皮質全体に放射状に感覚を伝達して、意識を維持しています。
そのため、脳梗塞によって脳幹や網様体が障害されると意識状態が悪化する可能性があります。

大脳皮質の広範な障害

脳梗塞によって大脳皮質が広範に障害されると意識障害をきたします。
前述したように、上行性網様体賦活系の電気信号は最終的に大脳皮質に入力され意識が保たれています。
そのため、広範囲な大脳皮質の障害では意識状態が悪化します。
また、脳梗塞が広範囲に及ぶと、そこに生じる炎症によって脳に浮腫が生じ、これを脳浮腫と言います。
脳は硬い頭蓋骨に囲まれているため、脳浮腫によって脳が肥大していくと、脳そのものが圧迫されていきます。
その結果、脳幹が圧迫を受けることで上行性網様体賦活系が障害され、大脳皮質の障害とともに意識状態を悪化させます。

意識不明を伴う脳梗塞の予後

前述したように、脳浮腫に伴う一過性の意識状態の悪化であれば​​、浮腫が治れば意識状態は改善する可能性があります。
通常、脳浮腫は脳梗塞発症から1〜2週間でピークに達し、完全に元に戻るまで数ヶ月はかかります。
しかし、脳幹や大脳皮質に不可逆的な損傷を受けると植物状態となってしまい、そこからの余命は平均3年ほどと言われています。
主な死因は誤嚥性肺炎の併発、栄養状態の悪化、尿路感染症の併発、褥瘡などが挙げられます。

まとめ

今回の記事では、脳梗塞と意識不明のメカニズムについて解説しました。
脳梗塞における意識状態の悪化は、主に上行性網様体賦活系や大脳皮質が広範に障害されることで生じます。
障害の程度によって、自身の名前が思い出せないなどの見当識障害が生じる軽度意識障害や、痛み刺激に全く反応がなくなる重度意識障害など、意識障害の程度にも差があります。
特に、脳の広範な梗塞に伴う脳浮腫が急速に進行すると、意識状態の悪化はもちろんのこと、脳幹の圧迫によって呼吸状態や循環動態にも異常をきたす可能性があるため、注意が必要です。
また、これまで一度損傷した脳細胞は元に戻らないと考えられていたため、重度の意識障害が残っても改善は望めませんでした。
しかし、近年では再生医療という革新的な技術が進んでいます。
脳梗塞によって損傷を受けた脳細胞が再生医療によって回復すれば、意識障害による植物状態から目覚める可能性があり、現在のその知見が待たれるところです。

Q&A

脳梗塞の意識不明はいつ回復?
脳梗塞によって意識不明状態になった場合は、炎症によって生じる脳浮腫が改善するまで待つ必要があります。
脳浮腫は脳梗塞発症後1~2週間でピークに達し、その後元に戻るまで数ヶ月はかかるため、その間は意識状態を細かく評価する必要があります。

意識レベルが低下するとどうなる?
意識レベルが低下した場合、一過性の症状なのか不可逆的な症状なのかによってその後の対応も異なります。
脳梗塞などによる意識レベルの低下は、そのまま放置すると呼吸状態の悪化や循環動態の破綻により死を招く可能性もあるため、早急な医療機関の受診が必要となります。

<参照元>
・ Smajlovic D, et al. Five-year Survival after first-ever stroke. Bosn J Basic Med Sci. 2006; 6(3): 17-22
・日本神経学会:https://www.neurology-jp.org/public/disease/ishiki_detail.html
・脳梗塞リハビリステーション名古屋:https://rehabili.nagoya/blog/184.html
あわせて読みたい記事:脳梗塞の治療法を徹底解説

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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