サイトカイン療法について

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サイトカインのもつ組織再生・修復作用、免疫調節・炎症抑制作用を利用して美容目的やAGAの治療に、最近では脳卒中や脊髄損傷の後遺症改善目的に行われる治療。
細胞を使用しないため安全性が高く、費用も抑えられている。
サイトカインとは、細胞から分泌されるタンパク質で、細胞と細胞の情報伝達に関わる物質の総称です。
元々は造語で、「サイト」は「細胞の」、「カイン」は「作動物質」という意味を表します。
ホルモンも細胞の情報伝達に関わる物質ですが、ホルモンは分泌する臓器から離れた場所でも作用する(男性ホルモンや女性ホルモンは体全体に作用しますよね)のに対して、サイトカインは産生された場所の近くで作用を発揮することが多いという特徴があります。
新型コロナウイルス感染症で、重症になってしまった方に「サイトカインストーム」という怖い現象が起こるというニュースで、サイトカインという言葉を知った方もいらっしゃるかもしれません。
サイトカインは、命に関わるような現象を引き起こす一方で、体中の免疫細胞の活性化や組織の修復、機能維持を司る非常に重要な物質です(非常に重要な役割を果たすからこそ、バランスが崩れると重い症状になると捉えることもできます)。
その能力を利用して、C型肝炎ウイルス感染症や、多発性骨髄腫(白血病の一種)、脳腫瘍などの難しい病気の治療にサイトカイン療法が用いられます。
近年、サイトカイン療法が再生医療の分野で用いられるようになってきました。
再生医療に用いられる幹細胞を培養する過程で、このサイトカインを抽出できることが分かってきたからです。
今日は、再生医療分野で用いられるサイトカイン療法について、解説します。

サイトカイン(幹細胞培養上清液)とは?

細胞培養
再生医療では、体から幹細胞を取り出したあとに、培養する作業が行われます。
体から一度に取り出せる幹細胞の数には限りがあるので、治療効果を上げるために、細胞を十分に増やしてから自分の体に戻す必要があるからです。

その培養作業の際にできるのが、幹細胞培養上清液です。
細胞を培養する時には、適切な温度・浸透圧・pH(酸性・アルカリ性)などが必要です。
幹細胞はそれらの条件を満たした特殊な液体に浸され、培養されます。この液体のことを培養液といいます。

幹細胞を培養した後に、その培養液の上澄みを採取したものが上清液です。
この上清液には、幹細胞が分裂する過程で分泌される、有用なサイトカインが多く含まれています。
これを治療に応用します。

自家・他家の違い

幹細胞培養上清液には自家・他家という言葉があります。
自家というのは、自分の幹細胞を培養してできる上清液のことで、他家は他人の幹細胞を培養する際に採取されるもののことです。

培養上清液には細胞が含まれないため、他人の培養上清液から有効成分をもらうことができます。
拒否反応の元になる細胞成分が含まれないため、トラブルはほぼ起こりません。
幹細胞を採取するには、脂肪の採取や骨髄への穿刺など、一定の負担がかかります。
その必要がないという点が他家を使用するメリットとなります。

ただし他人のものを使用することに抵抗がある方や、より高い安全性を求める場合には自家が選択されます。
実施する施設により方針が決められていることが多いようです。

サイトカインの種類

ニューロン
サイトカイン療法に用いられる培養上清液を取り出すには、幹細胞を培養する作業が必要です。
その際に用いられる幹細胞は、体性幹細胞と呼ばれ大人の体の一部に存在するものです。
幹細胞は脂肪や骨髄から比較的簡単に採取できるため、幹細胞治療に用いる場合はその方法をとります。
一方サイトカイン療法において注目されているのは、「臍帯(へその緒)」由来の幹細胞を培養した際に採取される培養上清液です。

実は、臍帯由来の幹細胞から採取された培養上清液は、他の部位(骨髄、脂肪、乳歯など)由来の幹細胞から採取されたものよりも、サイトカインを圧倒的に多く含有しています。
臍帯由来の幹細胞は、分裂する能力が高く寿命が長いためと考えられています。

サイトカインは組織修復作用や、免疫抑制作用・炎症鎮静作用を有し、体内のバランスを調整します。
臍帯由来の培養上清液は、その純度が高くより高い治療効果が期待されます。

自分の臍帯から幹細胞を採取することはもちろん簡単ではありません。
ですので、製品化された他家由来のものを使用することになります。
細胞成分が含まれないために、より効果が期待できる培養上清液を、安心して使うことができます。

サイトカイン治療の効果

サイトカイン療法は、全国の皮膚科や美容クリニックなどで、アンチエイジングやAGAの治療に用いられるようになってきています。
たるみが気になる部分や、薄毛の部分に注入するなどして、組織の再生を図るものです。

また、その高い再生能力に注目し、脳卒中や脊髄損傷の治療に使うという動きがあります。
脳卒中や脊髄損傷では、神経がダメージを受けてしまい、自分の力では十分に回復することができません。
そこで、再生医療の分野では、幹細胞を神経に移植することで、神経の再生・回復を促しその働きを取り戻す試みが行われてきました。

この回復を促す効果がどのようなメカニズムなのか不明な点も多かったのですが、細胞と共に移植される、もしくは細胞が分裂する際に分泌されるサイトカインが関係しているのでは、という点に注目が集まりました。
2017年名古屋大学は、脳梗塞・脊髄損傷に対して培養上清液のみを投与したところ、幹細胞の移植と治療成績が同等であったと報告しています。
そこから、実際の治療に応用する動きが広まりました。

現在脳梗塞や脊髄損傷にサイトカイン療法が用いられる場合、培養上清液は点鼻で投与されます。
さらに専門的なリハビリテーションを組み合わせることで、自身の回復力を最大限に引き出し、脳梗塞や脊髄損傷の後遺症改善を試みます。

サイトカイン治療の価格

現在、美容目的やAGA、脳卒中や脊髄損傷に対するサイトカイン療法は保険適応外であり、自由診療となっています。
そのため治療にかかる費用は、治療が行われている施設によってさまざまです。
何由来の幹細胞を使用するのか、自家・他家なのか、といった点も費用に影響してきます。

幹細胞を使用する再生医療の場合、自分の細胞の採取・培養や管理に非常に手間がかかるため100万円~400万円といった費用がかかります。
サイトカイン療法の場合は、1回数万円~20万円程度の費用となっています。

細胞自体を使用せずに、同等の治療効果が得られるのであれば理想的ではありますが、病態は人により大きく異なります。
一人一人に合った最適な治療法の選択が重要となります。

以上、再生医療の分野で用いられるサイトカイン療法について解説しました。
現在受けられる再生医療の選択肢の一つとして、認識していただければと思います。


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