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女性特有のくも膜下出血の原因とその背景

           

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この記事を読んでわかること

女性でくも膜下出血が多いと言われる理由がわかる
エストロゲンと脳動脈瘤の関係がわかる
くも膜下出血を予防するためにおこなうべきことがわかる


交通事故などの外傷性を除くと、くも膜下出血の原因の多くは、脆弱化した動脈の瘤(これを脳動脈瘤という)が破裂するためです。
脳動脈瘤は人種にかかわらず女性に多いことが知られており、日本ではくも膜下出血の発症率は女性で約2倍と知られています。
そこで、この記事ではくも膜下出血が女性に多い理由やその背景などについて紹介します。

女性のホルモンとくも膜下出血の関連性

くも膜下出血
脳出血や脳梗塞・心筋梗塞などの重篤な疾患は、脳や心臓の血管が脆弱であり、動脈硬化が背景にあることが多い疾患です。
長期的な高血圧や高脂血症・喫煙などによって動脈硬化が進展し、硬く細い血管は閉塞しやすく、破綻しやすいため、出血や梗塞を引き起こします。
一方で、くも膜下出血は脳出血と同様、脳の血管が破綻して脳内部で出血を引き起こす病気ですが、くも膜下出血の原因は高血圧などによる動脈硬化よりも、脳動脈瘤の破裂がほとんどです。
脳動脈瘤とは、脳の動脈の一部が脆弱化し、瘤と呼ばれるコブを形成したもので、正常な血管よりも破綻しやすいです。
この脳動脈瘤が、人種にかかわらず男性よりも女性で生じやすいことから、くも膜下出血の発症率も女性で多いことが報告されており、日本では女性が男性の約2倍と報告されています。
また、全米の死亡統計をもとにしたくも膜下出血の死亡率は全ての人種で女性のほうが高く、年齢調整死亡率でも男性がやや横ばいであるのに対し、女性では近年倍増しているという報告がなされております。
では、なぜ女性でここまで脳動脈瘤・くも膜下出血が多いのでしょうか?
これまでの多くの研究から脳動脈瘤の発生に女性ホルモン、エストロゲンが大きく関わっていることが示唆されています。

エストロゲンの血管への影響

これまで脳動脈瘤の形成やくも膜下出血の発症率の性差から、女性ホルモンと脳動脈瘤形成の関係性が研究されてきました。
Mohanmadらのラットを用いた研究によれば、卵巣摘出したラットでは動脈瘤形成の頻度・大きさともに有意に増加し、逆に卵巣摘出したラットにエストロゲンを補充すると動脈瘤形成の頻度・大きさともに有意に抑制されることがわかりました。
エストロゲンには血管壁に対する抗炎症作用・抗動脈硬化作用を持つことが知られており、脳動脈瘤の形成に抑制的に働く効果が示唆されます。
また、日本人のくも膜下出血の発症は平均63歳で男女比は1:2でしたが、80歳以上では男女比1:5と女性が圧倒的に多く、60歳を超えると顕著に女性の発症率が上昇することがわかっております。
これらのデータから、閉経を迎えた女性では女性ホルモンの分泌が著しく低下するため、エストロゲンの枯渇に伴い、脳動脈瘤の形成が促進すると考えられているわけです。

妊娠・出産とくも膜下出血のリスク

くも膜下出血は稀に妊娠・出産などの女性特有のイベント時にも生じることがあります。
これまでの報告から、妊娠中は有意にくも膜下出血の発症率が増加するとの結論は得られておりませんが、発症が増加するとの意見も多いです。
理由としては、妊娠後期は緩やかに血圧が上昇し、また出産時には急激な血圧上昇を伴うことも多いため、血圧変動によって脳動脈瘤の破裂が生じることで、くも膜下出血を発症する可能性があることが挙げられ、注意が必要です。
また、妊娠中に異常な血圧上昇を伴う妊娠高血圧症候群を患うと、より脳出血やくも膜下出血を併発するリスクは高まります。
妊娠・出産中の母体のくも膜下出血は、最悪の場合母子ともに命を失う可能性があるため、非常にハイリスクかつ、対応には緊急を要します。
ガイドラインなどでの決まりはないですが、一般的に優先すべきは胎児よりも母体の命です。
兎にも角にも母体の救命が最優先であり、胎児がその時点で帝王切開で娩出しても生命維持可能(妊娠22週以上)である場合のみ、くも膜下出血の手術の前に帝王切開を検討されます。

くも膜下出血の予防法と女性の健康管理

くも膜下出血の予防法について紹介します。

  • 高塩分食を控える
  • 脂質の多い食事を控える
  • 飲酒・喫煙を控える

これまでの研究からくも膜下出血のリスク因子として、脳動脈瘤の発生を除けば、高血圧が代表的であり、高塩分食は控えるべきでしょう。
また、脂質の多い食生活や過剰な飲酒・喫煙も動脈の損傷を招き、血管の破綻するリスクを増大させます。
健康的な食生活・継続的な運動習慣を意識しましょう。
また、女性ホルモンの分泌を減少させる過度なダイエットなども控えるべきでしょう。

まとめ

今回の記事では、女性でくも膜下出血が多いと言われる理由や、脳動脈瘤とエストロゲンの関係性について解説しました。
女性の持つエストロゲンには動脈に対する抗動脈硬化作用があり、動脈を健康な状態に保つ効果が期待されます。
そのため、閉経を迎えて急激に体内での女性ホルモン分泌量が低下する60代以上で特にくも膜下出血の発症率が増加すると考えられています。
一方で、くも膜下出血は重篤な後遺症を残す可能性もある病気で、最悪命にかかわる可能性もあるため、できる限りの予防を行うべきです。
高血圧を避け、規則正しい食生活と定期的な運動習慣を身につけ、過度な飲酒・喫煙は控えましょう。
また、近年では再生医療の発達もめざましいです。
再生医療は、自身の幹細胞を用いて損傷した細胞の再生を試みる治療であり、くも膜下出血によって損傷を受けた脳細胞の機能再生が期待されます。
リハビリとの相性も良く、麻痺などの後遺症の新たな治療法となるため、今後のさらなる知見が待たれるところです。

Q&A

くも膜下出血になりやすい人は?
くも膜下出血最大の原因は脳動脈瘤であり、先天的もしくは後天的な理由で脳動脈瘤を持つ方は発症しやすいです。また、他に高血圧・過剰な飲酒や喫煙・高脂血症・女性などのリスクファクターが挙げられます。

くも膜下出血が女性に多いのはなぜですか?
研究によってくも膜下出血の男女比はさまざまですが、世界的に見ても人種問わず女性で多いと報告されています。最大の理由は、女性ホルモンであるエストロゲンであり、エストロゲンには血管の炎症を抑制する作用があります。そのため、閉経に伴い女性ホルモンが減少すると、発症率が増加すると考えられています。

あわせて読みたい記事:くも膜下出血と脳動脈瘤について
<参照元>
・日本神経治療学会 クモ膜下出血:https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_04.pdf
・性差医療情報ネットワーク なぜくも膜下出血は女性に多いのか?:http://www.nahw.or.jp/blog/4126.html
・Pub Med Role of estrogen deficiency in the formation and progression of cerebral aneurysms. Part II: experimental study of the effects of hormone replacement therapy in rats: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16381192/
・J STAGE くも膜下出血の疫学と転帰:https://www.jstage.jst.go.jp/article/spch/47/1/47_3/_article/-char/ja
・日本脳卒中データバンク2021 「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握」 報告書 2021 年:https://strokedatabank.ncvc.go.jp/f12kQnRl/wp-content/uploads/日本脳卒中データバンク報告書2021年_FIX.pdf

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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