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トカゲの尻尾は再生する?!

           

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日は、さて今回はトカゲのお話です。
なぜトカゲがこのブログに登場するのか。
それは、トカゲの持つ再生能力を、人間の再生医療に応用できる可能性があるからです。
トカゲだけではありません。
トカゲと似て非なる生き物、イモリ。
イモリはなんと、人間がようやく編み出しノーベル賞を受賞した大発明を、生まれながらにして体に持ち合わせていました。
「ハテ?」と思った方。
今日はトカゲとイモリの生命の神秘に迫ってみます。

トカゲの尻尾再生の仕組み

トカゲは自分に危険が迫ったときに、尻尾を自ら切り離して逃げます。
切り離した尻尾はピクピク動いているので、囮になったり威嚇の効果となったりして、その隙に逃げます。
切り離した部分には、後から尻尾がまた生えてきて、再生します。
この現象自体は古くから知られている事ですが、徐々にその仕組みが明らかとなってきています。

脱離節(だつりせつ)

トカゲの尻尾には脱離節といって、骨や筋肉、皮膚の結合が緩い部分があります。
トカゲが身の危険を感じると、脱離節の近くにある筋肉が、結合を外すように反射的に力を働かせ、スポッと外れます。
外れた部分は少し血がにじむこともありますが、周囲の筋肉が盛り上がって止血の役割を果たし、ほとんど出血しません。
切り離された先の尻尾は、脊髄反射というメカニズムで、筋肉がランダムに収縮するためピクピクと激しく動きます。
これは反射によるものなので、脳からの指令に反応している訳ではありません。

再生芽(さいせいが)

切り離されむき出しになった筋肉部分には、徐々にふくらみが出てきます。
これを、再生芽といいます。
再生芽の形成には、元々筋肉にあった幹細胞が関与していると考えられています。
幹細胞とは、自ら様々な細胞に変化し増殖することで、組織を再生する能力をもった細胞のことです。
この再生芽が徐々に伸長して、新たな尻尾となります。
このようにして、トカゲは自らの体を守り尻尾の再生を果たしています。
それでは、この再生は何回でも起こせるのでしょうか?
答えは、否です。
再生が可能なのは1〜2回と言われています。
さらには、再生した尻尾は元々の尻尾と比較するとやや短く、また元々あった骨の構造は再現されません。
筋肉のみの尻尾となります。
これはトカゲの(元々筋肉にある幹細胞の)再生能力の限界といえるかもしれません。(それでもすごいですけどね)
このトカゲを超える再生能力をもつ生物、それがイモリです。

「再生のチャンピオン」と呼ばれるイモリ

イモリ
トカゲは虫類、イモリは両生類。
姿かたちは似ていますが、生物としての性質は大きく異なります。
イモリは、トカゲを超える再生能力をもっています。
イモリのしっぽは、何回切っても生えてきます。
足やアゴも再生します。
足は指のような部分まで再生し元通りの形になります。
なんと心臓や脳の一部を切り取っても、再生します。
この(某アニメの)鬼のような能力について、筑波大学の千葉親文先生が、遺伝子技術を応用した細胞の蛍光標識技術により、そのメカニズムを解き明かしました。
実はイモリが子どものうちは、トカゲと同じようなメカニズムで再生をしているそうです。
しかしすごいのは、大人のイモリが何回でも再生を繰り返すことができること。
そこには子どもの頃とは全く違う再生戦略がありました。
成熟して筋肉となった細胞を自ら若返らせて、多能性(様々な細胞になることができる)をもつ細胞を作り出していたのです。

これを、専門用語で「リプログラミング(脱分化)」といいます。
お聞きになったことがあるかもしれません。
これは人間の大人の細胞から多能性をもつ細胞を作り出す、すなわちiPS細胞を作ることと同じ事が起きているのです。
iPS細胞では人間の大人の細胞に4つの遺伝子を人工的に組み込むことでリプログラミングを果たし、多能性をもつ細胞を作り出します。
イモリはそれと同じような事を、意図せず本能として行っているのです。
ただし、イモリの足の再生には100日以上かかります。
その間動けないとなれば自然界で生きていくのは難しく、この再生能力は実は彼ら自身にはそれほどメリットがないとのことです。
ホントの鬼に進化しなくて良かったというべきか…

イモリ、トカゲと人間

トカゲと人間
イモリ、トカゲのような能力は人間にはありません。
しかし、再生のメカニズムを解明することで人間の再生医療などに応用できる可能性があります。
トカゲの尻尾が再生するメカニズム、その中心になるのは体性幹細胞という、体の一部分に存在する細胞です。
この細胞は人間にも存在します。
これを取り出して培養、移植する技術が幹細胞治療です。
イモリが元祖(?)かもしれないiPS細胞も、臨床応用が始まっています。
ただしiPS細胞は、ガン化のリスクがあることが問題です。
リプログラミングをして細胞分裂を多数回起こすと、ガン細胞が間違って生まれてしまう可能性が高くなります。
しかし、イモリにはほとんどガンが発生しないそうです。
これにはガン細胞を退けるようなメカニズムがあるのではないかと考えられています。
もしこれが明らかになれば、iPS細胞の問題解決に大きく貢献する可能性があります。
以上、今日はイモリとトカゲのお話でした。
イモリやトカゲの生命の奇跡ともいえる再生能力、少し力をお借りして我々の医療に役立てていきたいものです。


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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