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脊髄損傷の男性の子作りについて

           

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脊髄損傷では麻痺やしびれ、自律神経障害などの様々な神経障害が生じてしまいます。
その中には、脊髄損傷による勃起中枢の障害に伴う勃起もしくは射精障害を認め、その結果子作りにも影響してしまい男性不妊に陥る患者も少なくありません。
そこで今回は脊髄損傷に伴う男性不妊の機序について解説し、そうなってしまった時の対処法も紹介します。

脊髄損傷と性機能について

脊髄は神経の束のようなもので、その内部には運動神経や感覚神経、自律神経など様々な神経が通っています。
脊髄を損傷すると損傷したレベル以下の神経の交通が絶たれるため、広範な神経障害が残ってしまう点で脊髄損傷は厄介な病気と言えます。
脊髄は頸部の頸髄、胸部の胸髄、腰部の腰髄、仙骨部の仙髄と高さごとに名称や機能が異なります。
例えば、腰髄が損傷した場合は脳からの運動の指令が下肢に伝えられなくなり麻痺が出現し、下肢からの感覚を脳に伝えられなくなり下肢の感覚障害が出現します。
またそれ以下のレベルである仙髄の機能も、損傷した腰髄の影響で脳との交通が絶たれているため障害されてしまいます。
頸髄が損傷した場合はさらに厄介で、頸髄が支配する上肢の運動や感覚はもちろんのこと、それ以下の胸髄が支配する内臓神経や自律神経、腰髄の支配する下肢の運動や感覚、さらには仙髄の機能も含めて広範な神経障害が出現するのです。
逆に言えば、最も下位のレベルに存在する仙髄は脊髄損傷において非常に障害されやすいと言えます。
では仙髄とはどういった役割を担っているのでしょうか?
仙髄の主な役割は下肢の一部の感覚支配と、排尿や排便、勃起や射精などの性機能に関与しています。
つまり脊髄損傷に伴う仙髄の障害は、性機能に障害が生じる可能性があるということです。
では具体的にどういった機序で性機能障害が出現するのか解説していきます。

脊髄損傷における男性不妊の機序

男性器
脊髄損傷における男性不妊の機序には、2つの理由があります。

勃起や射精の障害

男性の陰茎は性的刺激を受けた際に勃起しますが、これは正確には陰茎内の血管が拡張し血液が大量に流れ込むことで起こります。
視覚による性的な情報のインプットや陰茎への直接的な性的刺激により、仙髄に存在する勃起中枢が興奮し副交感神経である骨盤神経を介して海綿体の平滑筋を弛緩させます。
筋肉が弛緩することで、陰茎内の血管も拡張し大量の血液が流入し陰茎の勃起が起こります。
次に射精についてです。
陰茎からの性的情報は仙髄に回収され、仙髄から脳にインプットされます。
その後、脳の視床下部と呼ばれる部分で処理された情報を元に、脳から下腹神経に刺激が入り射精が起こります。
少し難しい単語が続いてしまいましたが、端的に言えば、仙髄が損傷すると勃起中枢の興奮が起こらずに勃起不全になり、性的刺激も入らないため射精に至らなくなるということです。
脊髄損傷の程度によっては、勃起そのものは可能な方も少なくありませんが射精障害はほとんどの方で生じてしまいます。
これにより、男性不妊となり子作りに影響が出てしまうわけです。

精子の質の低下

脊髄損傷後、時間の経過とともに精子を作る能力そのものが低下していくことはすでに知られています。
厄介なことに、これは受傷から時間が経てば経つほど進行してしまう症状です。
2021年にWHOが発表した精液検査の基準値として、精液量1.4ml、精子濃度1600万/ml、総精子数3900万、精子運動率42%、生存率54%、正常形態率4%と11年ぶりにデータを改訂しました。
このうち、脊髄損傷によってどのパラメーターが低下してしまうのかはいまだに結論が出ていませんが、多くの報告例では精子の運動率が低下していたそうです。
また精子の量や濃度は比較的保たれますが、正常形態率が低下してしまうことが多いようです。
このことからも、脊髄損傷患者では精子の量よりも質が低下しやすいことが分かります。
脊髄損傷に伴う体温調節障害や睾丸周囲の血流に変化が生じ、睾丸周囲の温度変化が影響しているのではないかと言われています。
精子は非常に熱に弱いため、これらの温度変化により運動率や正常形態率に異常をきたしている可能性が高いのです。

脊髄損傷後の男性不妊に対する対応

では、脊髄損傷に伴う男性不妊に対してどういった対策が取れるのでしょうか?
勃起はできても射精ができない以上は男性不妊は解消されませんが、近年は医療の発達に伴い、精巣から精子を取り出して顕微鏡下で受精させる技術が存在します。
これにより、射精が障害され精子の質が低下した男性でも高い妊娠成功率を保つことが可能になりました。

まとめ

今回は、脊髄損傷における男性不妊についてまとめました。
仙髄は特に障害されやすく、神経細胞は一度損傷すると回復できないため、勃起不全や射精障害など日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。
しかし、近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
骨髄から採取した幹細胞を使った最先端の治療法であり、これにより今まで修復不可能と言われてきた神経細胞の再生が期待できます。
もし一度は損傷した神経も再生できれば、男性不妊の問題は解決し子作りも可能になるかもしれません。


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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