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脊髄損傷後の妊娠の可能性について

           

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外傷などにより若くして脊髄損傷を負った方にとっては、その後の性行為や妊娠、また分娩は大切なテーマです。
現在のところ、膣内射精が困難になる、また精子の運動能が低下する可能性があるなど、男性側の課題はあるものの、受胎可能性、妊娠や分娩については、産婦人科医だけではなく、複数の専門家が関わることによって、実現可能性が高まると考えられています。

脊髄損傷後の性生活

受傷した当初は性行為に対する欲求がないかもしれませんが、時間の経過とともに欲求が高まる可能性が高いと言われています。
脊髄損傷のレベルによる違いはありますが、男性も女性も、性器等への刺激などを通して性行為の準備が整うと言われています。
つまり女性は膣の潤滑性が高まり、男性は勃起します。
ただし場合によっては、シルデナフィル等の薬の助けが必要になるかもしれません。
なお女性の場合、受傷後一時的に生理周期が乱れることがありますが、受胎可能性については影響を受けないとされています。
一方、男性は性交渉によってパートナーを妊娠させることができる人もいますが、多くの男性はそうではありません。
膣内に射精することができない場合がありますし、精子の運動性が落ちるために受精が難しくなることもあります。
したがって、泌尿器科医や産婦人科医に相談が必要です。

脊髄損傷後の妊娠

妊娠
あらゆるレベルの脊髄損傷を持つ女性が、子どもを出産しています。
とはいえ、妊娠している、または妊娠を希望している場合、注意すべき点がいくつかあります。

妊婦前〜妊娠初期の注意点

通常の妊婦検診に加え、リハビリの担当医にも相談をしておきます。
排尿に問題があれば、泌尿器科医への相談も必要です。
というのも、胎児は膀胱を圧迫し、母親の排尿に影響を与えることがあるからです。
また背骨の弯曲などにより姿勢の変化がある場合、整形外科医にも相談が必要です。
胎児が成長するためのスペースが少なくなる可能性があるからです。
できればそれぞれの担当医と産科医の間で連携してもらい、必要な情報を交換できるようにします。
妊娠が進むにつれて、脊髄損傷の合併症に対するリスクは増加する可能性があります。
産科医と協力して、可能であれば合併症の悪化を予防し、発症した問題を管理するための治療が必要となることもあります。
このうち自律神経障害は、胸椎6番(T6)以上の損傷があれば発生するリスクがあります。
妊娠中は頭痛や吐き気がよくありますが、ドキドキするような頭痛や吐き気は、自律神経障害のサインかもしれません。
尿路感染症の危険性も高まります。
妊娠中の発症を予防するために、抗菌薬を内服することがあります。
便秘が悪化することもあり、水を多めに飲む、不溶性食物繊維を多く含む食品を食べるなどに加え、緩下剤を服用することについて検討が必要です。

妊娠中期の注意点

妊娠中期では、胎児が急速に成長しているため、体重が増加する時期です
体重が増えると、妊娠前と同じように行動することが難しくなります。
例えば、車いすを押すのが難しくなります。
また、すぐに疲れてしまうこともあります。
理学療法士や作業療法士に相談して、日常的な作業をこなすための新しい方法を見つけるとよいでしょう。
例えば、移動の回数を減らす方法を考える、電動車椅子をレンタルまたは購入するなどです。
間欠的カテーテルを使用して排尿管理をしている場合は、妊娠中にカテーテルを挿入する頻度を増やすか、留置カテーテルに変更することを検討します。
また妊娠中は、褥瘡のリスクも高まります。
体重が増えると、皮膚をこすらずに体を持ち上げて移動することが難しくなります。
また座ったり横になったりしているときに、骨のある部分に負担がかかりやすくなります。
トラブルを防ぐためには、皮膚の状態を頻繁にチェックし、圧緩和をもっと頻繁に行うことが必要です。

妊娠後期の注意点

妊娠後期は、胎児が大きくなり続ける時期です。
大きくなった胎児が横隔膜を圧迫します。
そのため、呼吸がしにくくなり、深呼吸をしたり、咳をしたりすることが難しくなります。
成長する胎児は、腹部内の圧を上昇させ、母体の足への血液の流れを阻害し、足のむくみを悪化させます。
これは血栓を作る危険因子になります。
なお過去に血栓ができたことがある場合は、血栓ができないようにするための薬について、主治医に相談が必要です。

脊髄損傷後の出産

脊髄損傷を持つ女性は、他の女性と同じように出産・育児を計画する必要があります。

陣痛の特徴

脊髄損傷後であっても、陣痛は通常通り起こりますが、本人が充分に感じられないこともあります。
特に胸椎10番(T10)レベル以上の損傷のある場合は、陣痛を感じないかもしれませんが、T10以下の損傷がある場合は、子宮の収縮を感じる可能性があります。

分娩の特徴

脊髄損傷があるからといって、帝王切開をする必要はありません
実際多くの場合、損傷の程度に関係なく、経膣分娩が可能です。
ただし場合によっては、鉗子などを使って出産を手助けすることがあります。

まとめ

脊髄損傷後の性交渉や妊娠、出産について簡単にご説明しました。
さまざまなレベルで障害はあるものの、完全に出産を諦める必要はありません。
また今後再生医療が実用化されると、現在障害と考えられていることも解決できるでしょう。
今後の発展に期待したいところです。

外部サイトの関連記事:脊髄損傷が治る可能性について

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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