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脳幹梗塞と生活習慣病の関係について

           

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私たちは普段通りの生活で、意識せずに使用している「言葉」という物でコミュニケーションを取っています。
日本語という言語は非常に柔軟で、他の言語に比べても単語数が圧倒的に多いという特徴があります。
中風(ちゅうぶ)、中気(ちゅうき)といった言葉があります。
体の状態を示す言葉ですので、現代ではあまり適切な言葉とは言えません。
しかし江戸時代には既に確立していた言葉で、脳卒中の後遺症を示す言葉です。
脳卒中を患うと「言葉」を上手く発する事が出来なくなったり、手足の機能を損なってしまったり、さまざまな後遺症が知られています。
人間が生活を営む上でなくてはならない、脳という器官について知ることは、大切な脳を病気のリスクから遠ざける事にも繋がります。
ここでは日常生活においても耳にする単語の意味や違い、症状や予防なども含めて、脳幹梗塞というテーマに沿って話を進めていきたいと思います。

脳幹梗塞とは?

脳幹梗塞とは
脳梗塞」や「心筋梗塞」という病名は、命に関わる大きな病気である事をご存知の方も多いかと思います。
梗塞とは病気など何らかの原因によって、それら器官の細胞が酸欠や栄養失調状態に陥って、細胞が死んでしまった状態を示します。
たとえば心臓を動かすための筋肉が死んでしまえば、心臓の動きに深刻な影響が出てきます。
そのために心筋梗塞は命に関わる病気と言われるのです。
脳梗塞も同じく、脳という器官の中で細胞が死んでしまえば、脳のその部分が司る機能が損なわれる事に繋がってしまいます。
また、脳の病気の中で、重い病気を示す別の言葉に「脳卒中」があります。
脳卒中は脳の中を巡る血管や血液に関連する病名で、たとえば脳の血管が切れてしまったり、血管が詰まってしまうなどの状態を示す病気の総称です。
脳卒中は以下の3つに分ける事が出来ます。

くも膜下出血

脳を覆う頭蓋骨の下にある「くも膜」と「脳」の間にある空間に、出血した血液が溜まってしまいます。
溜まった血液が脳を圧迫する事によって様々な症状を呈する病気です。

脳内出血

主に脳の中を走る血管が切れて出血する事により、脳を圧迫してしまう病気です。
くも膜下出血は脳の表面の血管から出血する事を言いますが、脳内出血は脳の内部の血管から出血する事を言います。

脳梗塞

全身の細胞は血液によって酸素や栄養が運ばれ、生命活動を行っています。
その事は脳においても違いがありません。
脳梗塞は主に脳細胞へ血液を運ぶ血管が詰まって、酸欠状態や栄養失調状態から脳細胞が死んでしまった状態です。
こうした原因から起こった脳の病気は、その場所が司る働きを損ねるという特徴があります。
損傷した部位によって、さまざまな症状が現れる病気です。
人間の脳は部位ごとに細かく名前が付いていて、その中でも「延髄」、「橋」、「中脳」という部分を「脳幹」と呼びます。
「間脳」という部位を脳幹に含める場合もありますが、ここでは含めない定義を利用します。
脳梗塞という病気が脳幹で起こった場合を特に、「脳幹梗塞」と呼びます。
部位ごとに起こりやすい梗塞のメカニズムや症状も異なるため、こうして部位ごとに分けて診断や治療が行われています。

脳幹梗塞の症状

脳幹は「延髄」、「橋」、「中脳」からなる部位である事をお伝えしました。
脳の構造を見ると脳幹は他の脳の部位と繋がっていて、信号を中継する役割を持っています。
まず、それぞれの部位がどのような働きを司っているか見てみましょう。

  1. 延髄:呼吸、嘔吐、嚥下、消化を制御する役割など
  2. :運動の情報を大脳から小脳に伝える役割など
  3. 中脳:視力と聴力に関する役割など

脳幹梗塞ではどの部位であっても意識障害が出やすい傾向にあります。
また他の部位の梗塞と同じく、強い痛みを訴える患者さんが多く見られます。
特に脳幹梗塞の場合には、首の後ろから後頭部にかけての痛みが起こる場合があります。
脳梗塞に一般的に見られる言語障害や吐き気などの症状は、脳幹梗塞においてもみられます。
脳幹梗塞が起こった時は、それぞれの部位が持っている役割に関する障害の出る可能性があります。
たとえば中脳の梗塞では眼球の動きが悪くなったり、延髄の梗塞では手足や顔の麻痺などの症状が出やすいとされます。
しかし脳の他の部位との中継を担っている事からも、特徴的な症状だけではなく様々な症状を呈します。
「〇〇の症状があるから、XXの梗塞である。」
といった典型的な症状がある訳ではなく、症状は梗塞場所の参考に出来る可能性がある、といった感じです。
それだけ脳は複雑に繋がっていて、様々な機能が入り組んでいます。

脳幹梗塞の発生部位による名称

脳幹梗塞では梗塞が起こった場所によって、特徴的な症状を呈する事があります。
場所ごとに発見者などの名前が付く事もあり、多くの症候群があります。
現在では人名を冠した症候群よりも、症状や具体的な発生部位などを症候群として呼ぶ傾向があります。
しかし著名な症候群は一般的に用いられる症候群名でもありますので、その中でも代表的なものを紹介します。

ワレンベルグ症候群(Wallenberg-Syndrome)

脳幹のうち延髄で梗塞が起こったものです。
延髄の外側に栄養を送る血管で起こる事が多く、延髄外側症候群という別名もあります。
頭痛やめまい、嘔吐などの初期症状が出る事も多く、その後に飲み込みにくさ、しわがれ声(嗄声)などの影響が出てくることもあります。
高血圧や糖尿病などの高リスク状態がなくても発症する事があります。
これは血管が縦方向に裂けてしまう(動脈解離)ケースが原因のひとつです。
そのため、他の脳梗塞に比べると、比較的若い年齢の方でも起こる事が多い梗塞となります。

フォヴィル症候群(Foville症候群)

脳幹のうち橋で梗塞が起こったものです。
フォヴィル症候群の症状

  1. 物が二重に見える(複視):これは眼筋の麻痺によるものです
  2. 梗塞があった側の顔面神経麻痺
  3. 梗塞があった反対側の片麻痺(手足のしびれなど)

3つの症状を満たす場合にフォヴィル症候群と診断されます。
このように代表的な症候群には典型的な症状が伴う事もありますが、該当しないからといって自己判断をする事は避けましょう。
たとえば重症筋無力症という病気では飲み込む力が弱まったり、目のピントが合わずに二重に見えるという症状が出る事もあります。
決して自己判断をせず、普段と異なる事を感じた場合には医師に相談をしましょう。
どの診療科を受診すればよいか分からなかった場合には、脳神経内科や脳神経外科、神経内科を受診しましょう。

脳幹梗塞の後遺症

脳幹に梗塞が起こった場合には、起こった場所によって様々な症状があらわれます。
治療やリハビリによって後遺症が残らない場合ももちろんありますが、場合によっては後遺症として症状の一部が残ってしまいます。
多く見られる後遺症としては、運動麻痺、感覚麻痺、嚥下障害があります。
運動麻痺は体を動かす機能が低下してしまう状態で、手足が上手く動かせずに日常生活に影響が出ます。
転びやすくなったり、バランスを崩して倒れてしまう事にも注意が必要となります。
感覚麻痺は痛みや熱さ、冷たさなどの感覚が麻痺し、刺激を感じにくくなってしまいます。
嚥下障害は物を飲み込む筋肉などが障害されてしまい、うまく食事が摂れなくなったり、唾液が気管の方へと流れてしまいます(誤嚥)。
特に、重篤な状態に繋がってしまう可能性のある誤嚥性肺炎という状態に陥ってしまわない様に、出来るだけ誤嚥をしない様に気をつけなくてはなりません。
こうした症状以外にも、梗塞の起こった場所によって様々な後遺症が残る可能性があります。
後遺症が残った場合には、医師をはじめとするチームのサポートを得て、機能の回復を目的としたリハビリテーションを受ける事になります。
リハビリテーションは長い時間を要します。。
肉体的にはもちろん、精神的にも大変な苦労が伴う事もあるかと思います。
つらい時には、医師やスタッフにつらい思いをしっかりと伝えましょう。
自分ひとりで抱え込んで無理をするのではなく、スタッフと共に全員でリハビリテーションを続けて行く事が大切です。

脳幹梗塞の原因と予防

動脈硬化-LDLコレステロール
企業などでお勤めの多くの方は、1年に1度は健康診断を受診されていると思います。
定期健康診断と呼ばれるこの健診は、法律によって企業が従業員の方に受診をさせる義務があります。
では何の目的で健康診断を行っているのでしょうか。
従業員の方の健康を維持する目的がありますが、具体的には「生活習慣病」の予防や早期発見という大きな目的があります。
もちろん他の病気に関しての早期発見も目的ではありますが、ここでは生活習慣病に焦点を当ててみましょう。
生活習慣病とは「高血圧」、「脂質異常症」、「糖尿病」など、運動習慣や食生活、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣によって引き起こされる病気のことです。
これらの病気は日々の食生活などから大きな影響を受けるので、検査結果が著しくない場合には医師などから指導が入るのです。
生活習慣病の状態にあるからといって、1日2日という短期的な時間で命に直結するものではありません。
しかし、生活習慣病は「心筋梗塞」や「脳梗塞」といった、命に直結する重大な病気を引き起こすリスクを高めてしまいます。
脂質異常症の検査項目にコレステロール値があります。
コレステロールは不要な物というイメージをお持ちの方がいるかもしれませんが、実は人間にとってはなくてはならない、非常に重要な物質です。
大切なものだからこそ溜め込みやすいとも言えます。
しかし飽食の時代ともいえる現代においては、その溜め込みやすさが逆に仇となることもあります。
血管の中を血液が流れる時には、健康な方であっても小さな傷が付く事があります。
その傷を修復するために血液中の細胞やサイトカインなど多様な蛋白質が集まって来るのですが、その際にコレステロール値が高い場合には、より多くの過剰なコレステロールが溜まってしまうことになります。

アテローム性プラーク

アテローム性プラーク
そうして出来た血管内の膨らみを「アテローム性プラーク」と呼びます。
血管内で膨らんでしまうのですから、血液の流れが悪くなる事は避けられません。
更に高血圧の状態は、そのプラークにも大きな圧力を与えます。
圧力に耐えきれなくなったプラークは時として破裂をして、中身が血管内に出てきて、血液の塊として血管を塞いでしまいます。
これを「血栓」と言いますが、血栓が発生すると血管が詰まって、その先にある細胞が梗塞を起こす事に繋がります。
また脳梗塞の場合には、脳の血管で血栓が発生する原因だけではなく、心臓で発生した血栓が血流に乗って脳へと到達し、脳の血管が詰まるというケースもあります。
生活習慣病が脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすリスクとなる仕組みを紹介しました。
それ以外にも血管の壁が柔軟さを失って、「動脈硬化」という状態を引き起こしてしまう事も知られています。
動脈が硬くなってしまえば、血管が傷付きやすくなったり、血管が切れたりもしやすくなります。
こうしたあらゆる悪い事が起こりやすくなる状態こそが生活習慣病と言えます。
だからこそ健康診断などで口うるさく指導をされるのは、食生活などの生活習慣を見直して、生活習慣病を予防する必要性があるからです。
一般的には、塩分濃度が高い食事や味付けの濃い食事を好む方に高血圧が多いとされます。
脂ぎった食事や、揚げ物などを好む方には脂質異常症が多い傾向にあるとされます。
さらに、糖分の摂り過ぎや、油分と同時に大量摂取する事は糖尿病のリスクを上げてしまうでしょう。
しかし人間の舌は贅沢に出来ているようで、油分と糖分が合わさった味を美味しく感じるようになっています。
揚げ物と白いご飯、油多めのラーメンなど、毎日のようにその誘惑に負けてしまえば、生活習慣病へとまっしぐらです。
禁煙を心がけ、飲酒も控えめに、なるべく運動不足を解消する。
こうした地道な毎日の積み重ねこそ、脳幹梗塞をはじめとするさまざまな血管の障害を防ぎ、健やかな生活を支える事に繋がっていくのです。
明るく健やかな生活を長く送るためにも、ぜひ生活習慣病の予防を心がけてみましょう。

Q&A

脳梗塞にならないためにはどうしたらいいですか?
高血圧、糖尿病、肥満などのリスクを回避するため日頃の食事や運動といった生活習慣の是正が必要です。喫煙やアルコールの多量摂取は脳梗塞のリスクを高めます。心臓の不整脈がある方は、適切な治療を受けることで脳梗塞を発症するリスクを抑えることができます。

軽い脳梗塞の後遺症は?
治療の進歩やリハビリにより、ほとんど後遺症がない方もおられます。無症候性脳梗塞といって、血管の先の方のみが詰まるため症状が全くでないタイプの脳梗塞もあります。

あわせて読みたい記事:脳血管疾患を予防するための食事
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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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