珍しいけど怖い脊髄腫瘍の症状とは | 脳卒中・脊髄損傷|麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

珍しいけど怖い脊髄腫瘍の症状とは

           

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脊髄腫瘍とは脊髄内部もしくは脊髄周囲から発生する良性、もしくは悪性の腫瘍のことで、腫瘍の増大に伴い脊髄そのものや脊髄神経根に圧迫が加わり、しびれなどの感覚障害や麻痺などの運動障害をきたす疾患です。
急速な脊髄の圧迫は、他にも様々な神経症状をきたす可能性があります。
そこで本書では、脊髄腫瘍における症状に関して詳しく解説していきます。

脊髄腫瘍とは?

脊髄には運動を司る運動神経や感覚を司る感覚神経、さらに血圧や脈拍、体温や睡眠、排尿や排便など多くの生理機能を司る自律神経が走行しています。
一般的には、脊髄は交通事故などの外傷で障害されることが多いですが、稀に脊髄腫瘍によって障害され様々な神経症状をきたすことがあります。
特に、麻痺やしびれ、呼吸や循環への障害は日常生活のみならず生命維持にも影響を与えるため、神経症状の程度によっては緊急での手術が必要になる可能性もある怖い病気です。
脊髄腫瘍は原発性と続発性に分類され、脊髄内部もしくは脊髄周囲から発生する良性、もしくは悪性の腫瘍のことを原発性と言い、別の部位で発生した腫瘍が脊髄に転移したものを続発性と言います。
続発性の場合、他臓器からの転移による発症であるため、常に腫瘍は悪性です。
また脊髄腫瘍は発生部位によって、髄内腫瘍、硬膜内髄外腫瘍、硬膜外腫瘍に分けて考えられます。
脊髄は神経細胞の集まりであり、周囲を脳脊髄液という液体に覆われ、内側から軟膜、クモ膜、硬膜の3層の膜に覆われています。
つまり、髄内腫瘍とは脊髄細胞内部から発生した腫瘍、硬膜内髄外腫瘍とは硬膜より内側で脊髄より外側に発生した腫瘍、硬膜外腫瘍とは硬膜より外の組織に発生した腫瘍のことを指します

髄内腫瘍

脊髄細胞そのものが腫瘍化したものであり、星細胞腫上衣腫血管芽腫神経膠腫と言われる腫瘍が多いです。
これらは脊髄細胞そのものが腫瘍化しているため、正常な脊髄に対する影響が最も出やすく、麻痺やしびれなど多くの神経機能が障害される可能性があります。
また排尿や排便にも支障をきたし、急速に神経症状が悪化していく可能性もあります。

硬膜内髄外腫瘍

脊髄細胞そのものではなく、硬膜より内側の組織が腫瘍化すると硬膜内髄外腫瘍となります。
例えば、神経細胞の周囲を覆っている細胞である神経鞘が腫瘍化すると神経鞘腫と呼ばれ、脊髄を外から覆うクモ膜が腫瘍化すると髄膜腫と呼ばれます。
これらの腫瘍は良性腫瘍であることが多く、脊髄そのものが腫瘍化している訳ではないため手術によって切除できれば症状が改善する可能性も高いです。

硬膜外腫瘍

脊髄を包む膜のうち最も外側の硬膜よりも外側に発生する腫瘍を硬膜外腫瘍と言います。
硬膜外腫瘍は悪性腫瘍であることが多く、骨肉腫や軟骨肉腫、転移性骨腫瘍などが多いです。
つまり、脊髄周囲の脊椎を形成する骨の腫瘍化によって、脊髄や脊髄神経根を圧迫することで神経症状をきたします。
この場合、部分的に脊髄神経根が圧迫されることが多く、圧迫された神経根が支配する領域に、痛み、しびれ、チクチク感、筋力低下などが起こります。
長期間の圧迫が続くと、影響を受けた筋肉が萎縮してしまうため、早期介入が重要になります。

脊髄腫瘍による症状とは?

脊髄腫瘍による症状は、どのレベルにどれくらいの大きさの腫瘍ができるかで様々です。
例えば、頸髄の大きな髄内腫瘍であれば頸髄そのものが広範に障害されてしまい、上肢や下肢、体幹部の感覚障害や麻痺が出現します。
最も下位のレベルに存在する仙髄が担う排尿や排便の機能も、当然障害されやすいです。
その一方で、腰髄付近の右椎体に転移性骨腫瘍ができた場合、上肢や体幹の感覚、運動は保たれます。
また、右側の神経根が圧迫されているだけであれば、右下肢の部分的なしびれや麻痺が出現するだけに留まります。
しかし、腫瘍が増大して腰髄そのものを圧迫し始めると下肢全体の麻痺やしびれ、さらに仙髄の機能も障害され膀胱直腸障害が出現します
以上のことからもわかる通り、脊髄腫瘍の症状は腫瘍の発生部位や腫瘍の範囲によって大きく変わってくるのです。
多くの場合、可能であれば手術療法で腫瘍の切除を試みますが、腫瘍の場所や性状によっては手術が難しいこともあり、その場合は放射線療法や化学療法で腫瘍のサイズを小さくするよう試みます。

まとめ

今回は脊髄腫瘍について詳しく解説してきました。
脊髄腫瘍、なかでも悪性腫瘍の場合周囲の組織に浸潤するように増殖していくため、脊髄や神経根を巻き込む形で肥大し、多くの神経症状を来してしまいます。
巻き込まれた、もしくは圧迫された脊髄や神経根の部位に応じて、しびれ、麻痺、排尿や排便の異常が出現することが多く、長期的な神経障害は筋力低下を招くため早期介入が必要になります。
しかし、脊髄腫瘍の場合、腫瘍が正常な脊髄に浸潤するように存在しており、境界が見分けにくいため、手術療法で腫瘍を切除しきれないことも多いです。
場合によっては手術で腫瘍は切除できても、神経を傷つけてしまい麻痺やしびれは治らない可能性もあります。
そこで近年では再生医学の注目度が増しています。
損傷した神経細胞の形態や機能そのものを代替えできるように、自身の骨髄内の自己幹細胞を取り出し、培養して増殖させたものを体に戻すことで損傷した細胞を再構築する再生医療では、一度損傷した神経細胞やその機能が再び蘇る可能性があると期待されています。

あわせて読みたい記事:脊髄損傷の再生医療
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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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