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フレイルとは何だろう

           

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この記事を読んで分かること

フレイルは高齢者において身体機能だけでなく、認知機能や社会性も低下するのか
フレイルが進行すると要介護状態のリスクや、健康寿命が分かる
予防や適切な対処でフレイルは改善できるのか


フレイルとは、特に高齢者において身体機能が低下するだけでなく、認知機能の低下や社会とのつながりを欠くことによる社会性の脆弱も認める状態です。
フレイルが進行すると、要介護状態となり健康寿命が短くなると言われています。
ただ予防可能であり対処次第で改善することもあるため、早期に診断し介入することが重要です。

フレイルとは?

フレイルの症状
フレイルは虚弱とも訳されることがありますが、高齢者の身体機能や健康状態のレベルが低下した状態のことです。
加えて認知機能が低下する精神・心理面の虚弱、また一人暮らしで閉じこもる社会性の虚弱も、フレイルを構成する重要な要素と考えられています。
年齢を重ねることが必ずしもフレイルであることを意味するわけではありませんが、高齢になると、フレイルの状態になる確率は高くなります。
フレイルになると、健康であれば通常は影響を受けることがない程度の軽い病気であっても、対応能力が低下しているため、一気に全身状態が悪化することがあります。
その結果、軽い病気や怪我であっても、寝たきりとなったり長期の介護が必要な状態になったりします。
フレイルの状態である人は、年齢から予想されるよりも、健康状態の悪化や死亡のリスクが高くなります。
フレイルを抱える高齢者は、要介護となるリスクを抱えていますので、進行を止めるために予防に取り組むことも大切です。

フレイルの症状について

フレイルとは、一般的に筋力の低下や疲れやすくなるなどの、健康上の機能低下を特徴とします。
さらに認知機能と社会性が低下します。
ただしフレイルを抱えていても、能力がないとか、充実した自立した生活ができないということではありません。
またフレイルは、複数の長期的な健康状態を抱えていることとは異なります。
フレイルの方のなかには、健康診断を受けても全く問題がない、つまり治療を必要とする病気を抱えていない場合もあります。

フレイルの評価基準・フレイルチェック

フレイルのひとつの問題は、フレイルの状態にあることをご本人も家族もなかなか気づかないことがあるということです。
したがって例えばがん検診などのように、ある年齢以上の人は全員チェックを受けることができると、早期発見につながる可能性があります。
しかしフレイルの状態にある人を見つけ出すために、系統的にスクリーニングを行うことは、とても費用のかかる事業であり、簡単に実施することはできません。
また例えば認知症の検査を全国民に実施して早期に認知症と診断したとしても、診断されることが世間から拒絶されたと感じる人が出てくる可能性があります。
それと同様に、フレイルと診断されることを嫌がる人が出る可能性があり、スクリーニング検査を受けたがらない人が出てくるかもしれません。
そのため、フレイルの状態を客観的に判断するため、できる限りわかりやすい、統一された基準があるとよいのですが、現時点ではまだそのような評価基準はありません。

Friedらによる評価基準

しかし一般的な評価基準として、Friedらはエネルギーの低下を示す5つの表現型を基準として提示しています。
この基準は、元々はフレイルに関する研究を行うために開発されたものです。

  • 意図しない体重減少
  • 活力の低下(主観的な疲れやすさの増加)
  • 身体活動量(日常生活における活動量)の低下
  • 握力(筋力)の低下
  • 身体能力(歩行速度)の低下

このうち3つを満たすことをフレイル、また1〜2項目が該当すると前フレイル(プレフレイル)と定義しています。
日本では、2016年度に国立長寿医療研究センターで行われたフレイルの進行に関わる要因に関する研究に利用された、フレイル評価基準がよく用いられます。

国立長寿医療研究センターによる評価基準

Friedらの評価基準に明確な数値による基準を設定したことが、この評価基準の特徴です。
Friedらの評価基準と同様に、5つのうち3つ以上が該当すればフレイル、1〜2が該当すればプレフレイルと考えられます。

体重減少(意図しない体重減少)
「6ヶ月で2〜3kg以上の(意図しない)体重減少がありましたか?」との質問に「はい」と回答した場合
主観的疲労感(活力の低下)
「(ここ2週間)わけもなく疲れた感じがする」との質問に「はい」と回答した場合
日常生活活動量の減少(日常生活における活動量の低下)
「軽い運動・体操(農作業も含む)を1週間に何日くらいしていますか?」及び「定期的な運動・スポーツ(農作業も含む)を1週間に何日くらいしていますか?」の2つの問いにいずれも「運動・体操はしていない」と回答した場合
握力の低下(筋力の低下)
利き手の測定で男性26kg未満、女性18kg未満の場合
通常歩行速度の減弱(身体能力の低下)
1m/秒未満の場合(測定区間の前後に1mの助走路をもうけ、測定区間5mの時を計測する)
とてもわかりやすくなっていますが、それでも握力や歩行速度の計測などは、容易に測定できるわけではありませんので、高齢者が自分で調べたり、家族が測定したりすることは困難かもしれません

東京大学の飯島勝矢教授によるフレイルチェック

フレイルの状態にあるかどうかを簡便に評価するために、東京大学の飯島勝矢教授によって考案されたものです。
とても容易に、医学的な知識や計測する機器がなくてもチェックできるところが最大の特徴です。
このフレイルチェックは、「指輪っかテスト」と「イレブンチェック」からなっています。

指輪っかテスト

まず本人の両手の親指と人差し指で輪を作ります。
そしてその輪でふくらはぎを囲んでみます。
このとき両手で作った輪でふくらはぎを囲むことができるか、ちょうど良いか、隙間ができるかを確認します。
隙間ができる場合、フレイルにつながるサルコペニア(筋肉量減少)のリスクが高いと判断されます。

イレブンチェック

「栄養(歯・口腔)」、「運動」、「社会参加」の3つの分野に関係する、11の質問に答えることで、フレイルの度合いを評価するチェックリストです。
このうち、4番、8番、11番の3つの質問には、「はい」に該当することがフレイルの危険性があることを意味します。
それ以外の質問は、「いいえ」と答えることが、フレイルのリスクになります。
つまり4番、8番、11番の質問に「はい」と答える、またそれ以外の質問に「いいえ」と答えると、それだけフレイルのリスクが高まります。
特に6つ以上が該当すると、よりフレイルの状態にある可能性が高いと判断できます。

栄養

1、ほぼ同じ年齢の同性と比較して健康に気を付けた食事を心がけていますか?
2、野菜料理と主菜(お肉またはお魚)を両方とも毎日2回以上は食べていますか?

口腔

3、「さきいか」、「たくあん」くらいの固さの食品を普通に噛み切れますか?
4、お茶や汁物でむせることがありますか?

運動

5、1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか
6、日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか
7、ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いと思いますか

社会参加

8、昨年と比べて外出の回数が減っていますか
9、1日に1回以上は、誰かと一緒に食事をしますか
10、自分が活気に溢れていると思いますか
11、何よりまず、物忘れが気になりますか
これらの質問を定期的に行ってみるとよいのではないでしょうか。

フレイルの予防法について

問題の発生を未然に防ぐために、計画的にフレイルの予防に取り組むことは大切です。
フレイルの予防に関して、最も研究されているのは身体活動、特にレジスタンス運動ですが、食事に関しても、タンパク質不足とフレイルの関係が指摘されています。
さらに社会参加も大切な活動です。

フレイルの運動による予防法について

フレイルを予防するために、運動面から行われている取り組みをご紹介します。

レジスタンス運動

レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗(レジスタンス)を加える動作を繰り返す運動のことです。
一般的に、加齢とともに筋肉量が減り、その結果筋力が低下してしまいます。
特に下肢の筋力が低下することが知られています。
したがって、フレイルを予防するために筋力を維持する、あるいは向上させるための筋力トレーニングが必要です。
そこで高齢者でもできる筋力トレーニングとして、椅子からゆっくり立ち上がるスクワットや腹筋を鍛えるための上体起こし、また手すりをつかんだ状態で爪先立ちをする踵上げ運動などが推奨されています。
このようなレジスタンス運動に定期的に取り組むことによって、高齢者であっても筋肉量及び筋力も増加することがわかっています。

有酸素運動

有酸素運動も、フレイル予防に非常に効果がある運動です。
有酸素運動により、筋肉量の増加だけでなく、体が酸素をより効率的に取り込むことができるようになることが期待されます。
時間を確保できる人は、息が少し弾む程度の速度で、30分程度を週2回以上歩く時間に割いてもよいでしょう。
難しい場合は、普段の外出時は、乗り物を使わずに歩くこと、エレベーターを使わないで階段を使うことを意識するだけでも十分です。
このほかにも、運動前の柔軟体操やバランス感覚を維持するためのバランス運動も、フレイルを予防する役割があります。
これらの運動を組み合わせ、できれば親しい友人たちと運動すると、社会参加につながりますので、フレイルの予防効果は高まります。

フレイルの食事による予防法について

次に、フレイルの食事による予防法について解説します。

タンパク質をしっかりと摂取する〜タンパク質をプラスワン

筋肉量をしっかりと保ってフレイルを予防するために、わたしたちの筋肉の素であるタンパク質の摂取が大切です。
タンパク質は、主に肉類や魚、乳製品や豆類に含まれていますが、適切な摂取量を毎日考えて献立を考えることは簡単ではありません。
そこで、まずは普段の食事に一品追加することが推奨されています。
タンパク質プラスワン活動です。
例えば味噌汁には豆腐を加える、パンにはハムやゆで卵を加える、など一品追加することで、タンパク質の摂取量を増やすことができます。

バランスの良い食事を摂る

目新しいことではありませんが、やはりバランスの良い食事はわたしたちが健康に生活するための基本です。
例えば、高齢者になると骨が脆くなってしまい骨折のリスクが高くなります。
骨折することはフレイルの進行にも影響しますので、
骨の強化はフレイル予防に重要です。
したがって、骨を強くする働きのあるビタミンDやカルシウムを含む食品を意識して摂取することは、フレイル予防に役立ちます。
そのほかにも、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEもフレイルの予防に大切なビタミン類です。
これらの栄養素を効果的に摂取するためには、野菜や海藻類、豆類や乳製品などをバランスよく食べることが最善です。
具体的には、ご飯やパンなどの主食を一品、肉、魚、卵などの主菜となるおかずを一品、さらに野菜、キノコ類などを中心にした副菜を一品、それぞれ毎食食べることを意識すると良いと言われています。
もし一人で料理することが難しいようであれば、配膳サービスや加熱するだけで良い冷凍食品を利用すると良いでしょう。
さらにフレイル予防の観点から、社会参加を意識して、たまには外食をする、また家族と食事を楽しむ機会を設けることも考えてみましょう。

フレイルとサルコペニアについて

加齢に伴い、ほとんどの人が筋肉量の減少、そしてそれに伴い生活能力の低下を経験しますが、これはサルコペニアと呼ばれています。
指輪っかテストのところでもご紹介しましたが、特に下肢の筋肉量減少はサルコペニアのリスクを評価するためには重要な所見です。
サルコペニアとフレイルはともに身体機能の低下の原因であり、似たような特徴を持っています。
ただサルコペニアは身体機能の低下が主たる問題ですが、フレイルには身体機能の低下以外の要素である認知機能、心理・社会面での脆弱性も含まれまれる特徴があります。
サルコペニアはフレイルの身体的機能の低下に寄与しているとも言えます。

まとめ

フレイルについて、少し詳しくご説明しました。
超高齢化社会を迎えた日本では、これからのフレイルの問題は大きな課題となるでしょう。
健康に生活できる期間を少しでも長くするために、日々の生活における運動習慣やバランスの取れた食事を意識したいものです。

よくあるご質問

フレイルになりやすい人の特徴は?
フレイルになりやすい人は、高齢であることに加え、運動不足や低栄養の状態が続いている方、慢性疾患を持っている方、社会的なサポートやつながりが不足している方が挙げられます。

フレイルを治すにはどうしたらいいですか?
フレイルの改善には、適度な運動やバランスの取れた食事を心がけることが大切です。社会的なつながりを維持し、専門家の健康チェックを受けることで、早期の介入と効果的な対処が可能です。

<参考サイト>
・健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html
・日本生活習慣予防協会
https://seikatsusyukanbyo.com/guide/locomotive.php

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
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