幹細胞治療による脳梗塞後遺症の軽減はできるのか | 脳卒中・脊髄損傷|麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

幹細胞治療による脳梗塞後遺症の軽減はできるのか

           

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血管内治療や血栓溶解療法など近年で治療が大きく変わっている脳梗塞ですが、それでもどうしても障害が残ってしまう場合があります。
かつては後遺症に対しては対症療法を行うしかできませんでしたが、近年では再生医療が期待されています。
この記事では、再生医療のなかでも幹細胞治療について解説します。

幹細胞療法による脳梗塞後遺症の改善メカニズム

脳梗塞
脳卒中で後遺症がほとんどない人は約20%ほどしかおらず、身の回りの介助が必要なほどの後遺症は約40%の人に現れます。
血栓溶解療法(rt-PA療法)や血栓回収療法などの医療の発達により、神経学的な予後がかなり良くなる場合も多くなってきています。
しかし、血栓溶解療法や血栓回収療法は発症時間や全身状態などの制限があります。
片麻痺や感覚障害、高次脳機能障害など退院後の生活に大きく関わる後遺症を、今の医学では完全にゼロにすることができません。
脳梗塞で虚血になってしまった部位はほとんど再生しないと言われています。
今行われている治療の多くは、虚血部位そのものを改善させるというよりもペナンプラという周囲の領域をいかに守るのかという意味合いが強いです。
そのような中で、再生医療、幹細胞治療が近年注目されています。
幹細胞はどの細胞にもなりうる分化能を保持した細胞であり、骨髄由来幹細胞や脂肪由来幹細胞、ES細胞、iPS細胞などが再生医療で研究されています。
脳梗塞に対しても幹細胞治療の効果が期待されています。
そのメカニズムとしては幹細胞から分泌される各種の液性因子による脳保護効果、抗炎症・免疫調整作用、血管新生促進、内在性神経再生の促進作用があると考えられています。
当院でもニューロテック®として幹細胞治療を行っており、多数の脳卒中後遺症患者さんへ治療を行ってきた実績があります。

脳梗塞後の運動障害に対して幹細胞治療ができること

コクランからは虚血性脳卒中に対する幹細胞移植についてのシステマティック・レビュー(複数の文献についてまとめ、考察した論文)が2018年に発表されています。
NIHSSは幹細胞治療により改善を認めていました。
しかし、一方でmodified Rankin ScaleやBerthel Indexなどの日常生活動作(ADL)に関する項目でのよい結果は得られませんでした。
脂肪などの安全性に関する重大な懸念もありませんでした。
ADLに関する項目については有意な差は無かったようですが、これまで何もできなかった麻痺そのものを改善するというのは非常に重要です。
安全性にも問題がないことも非常に重要です。
コクランもよりデザインを高めた研究が必要であると述べており、今後は更なる発展、報告を期待したいです。
また、幹細胞治療は基本的にリハビリテーションとセットと考えた方が良いでしょう。
再生医療中のリハビリテーションプログラムについての研究、報告はほとんどないために、こちらも知見の集約が期待されます。

幹細胞がもたらす脳梗塞後遺症の改善事例

当院で用いられている骨髄由来幹細胞について、日本で行われた研究を紹介します。
この研究では12人の重度の身体障害(modified Rankin Scale 3以上)のある脳梗塞後遺症の方を対象に行われました。
もやもや病で右中大脳動脈閉塞を起こした51歳の女性は、NIHSSスコアは投与前10であったのに対し、投与90日後は5まで改善しました。
日常生活動作の面でも歩行にも介助が必要な状態(modified Rankin Scale 4)から、何らかの介助が必要だが歩行は介助なしに行える状態(modified Rankin Scale 3)へと改善しました。
その後も追跡期間中(360日まで)は改善した状態が維持されています。また、有害事象もありませんでした。
左内頚動脈閉塞により脳梗塞を起こした60歳の男性の例では、右片麻痺と失語症が後遺症としてありました。
NIHSSスコアは投与前は17だったのですが、投与30日目には6まで改善しました。
modified Rankin Scale は投与前5(寝たきりの重度の障害)から3(何らかの介助が必要だが歩行は介助なしに行える状態)まで改善しました。
その他の例でもはっきりと改善が見て取れます。

まとめ

この記事では脳梗塞に対する幹細胞治療について解説しました。
当院ではニューロテック®として幹細胞治療を行っている実績があり、更にrTMSなどの機器も利用する「再生医療×同時リハビリ™」で患者さんやご家族のニーズに応える取り組みをしています。
今後は再生医療の更なる発展を期待したいしたいです。

Q&A

脳梗塞の後遺症の具体例は?
脳梗塞の後遺症には、意識障害、片麻痺、感覚障害、失語(運動性、感覚性)、高次脳機能障害(半側空間無視、注意障害、失行など)があります。どの後遺症がどの程度残るのかは梗塞が起きた部位によります。

脳梗塞の後遺症が残る確率は?
厚生労働省の調査では脳卒中(18-65歳)の予後として、まったく症候がない(modified Rankn Scale 0)は約20%と報告しており、80%の人に何らかの後遺症があります。この調査では66歳以上の方を抜いているので、より高齢になれば影響は大きくなることが予想されます。

<参照元>
Intravenous administration of auto serum-expanded autologous mesenchymal stem cells in stroke: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21493695/
虚血性脳卒中に対する幹細胞移植:https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD007231.pub3/full/ja#CD007231-abs-0008

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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