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錐体路と皮質脊髄路の違い

           

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この記事を読んでわかること

錐体路と皮質脊髄路の違いがわかる
錐体路の構造やメカニズムがわかる
錐体路と錐体外路の関係がわかる


錐体路や皮質脊髄路は、人の身体の運動機能をコントロールしている神経経路です。
錐体路と皮質脊髄路はほとんど同義として扱われており、混同して使われることも珍しくありませんが、厳密には違いがあります。
そこで、この記事では錐体路や皮質脊髄路の担っている構造や機能を解説し、両者の違いについても紹介します。

錐体路の構造と機能

末梢神経、大脳皮質
錐体路とは、身体の随意運動を可能にしている神経の伝導路です。
随意運動とは自分の意思に従った運動のことで、反対に自分の意思ではコントロールできない心臓などの運動は不随意運動と言います。
では、実際にどのようなメカニズムで随意運動が生じているのでしょうか?
錐体路全体の構造を先に示します。

  1. 大脳皮質運動野
  2. 大脳内包後脚
  3. 中脳の大脳脚
  4. 延髄錐体
  5. 錐体交叉
  6. 脊髄前角
  7. 末梢神経

始まりは、大脳皮質運動野からの運動の指令です。
大脳皮質運動野からの運動の指令は放線冠を通って脳内部に集約され、大脳の内包後脚と呼ばれる部位を通過して脳幹(中脳・橋・延髄)に向かいます。
中脳のより腹側に位置する大脳脚と呼ばれる部位を通過し、橋→延髄を下降します。
この時、延髄の錐体と呼ばれる部位を通過することが、「錐体路」と呼ばれる所以です。
その後、延髄の錐体交叉と呼ばれる部位で左右の錐体路は交叉し、右脳からの運動の指令は左半身に、左脳からの運動の指令は右半身に向かいます。
この時、厳密に言えば交叉する神経線維は全体の約90%であり、残り10%は交叉せずに同側の脊髄内を下降していきます。
交叉した神経線維は、脊髄内のやや側方にある外側皮質脊髄路と呼ばれる部位を下降し、脊髄の前角と呼ばれる部位で運動の指令を末梢神経に伝達するわけです。
一方、交叉しなかった神経線維は脊髄内の前方にある腹側皮質脊髄路と呼ばれる部位を下降し、前角にて運動の指令を末梢神経に伝達します。
運動の指令を受け取った末梢神経は、その後それぞれが分岐する筋肉へと指令を伝達し、最終的には筋肉の収縮を引き起こします。
このように、大脳皮質から始まった運動の指令は長い道のりを経て筋肉を収縮させ、随意運動を可能にしているのです。
具体例を出すとわかりやすいでしょう。
例えば、左腕を曲げるという動作を行うとき、右大脳皮質から生じた指令は内包後脚・中脳大脳脚・延髄錐体を経由し、錐体交叉にて左右反転し、脊髄に入ります。
脊髄内では外側皮質脊髄路を下降し、第5〜7頸髄の前角にて末梢神経へと刺激が伝達されます。
最終的には、筋皮神経と呼ばれる末梢神経が上腕二頭筋を収縮させることで、腕の屈曲運動が起こるわけです。

皮質脊髄路の特徴

錐体路とほとんど同義の言葉として、皮質脊髄路と呼ばれる神経経路があります。
皮質脊髄路とは、その名の通り「大脳皮質から始まり、脊髄へと伝達される神経経路」という意味です。
これはまさに錐体路と同義なのですが、そもそも錐体路は「延髄の錐体を通過する線維束」に対して命名されたものです。
運動の指令は、確かに大脳皮質から生じて脊髄へと伝達されるため、皮質脊髄路を通ります。
途中で錐体も通過するため、錐体路でもあり、これが長年「運動の指令=錐体路=皮質脊髄路」という誤った認識に至った経緯ですが、厳密には両者には違いがあります。
錐体を経由する線維束は、皮質脊髄路以外にもあるためです。
これは、のちに発見された皮質核路と呼ばれる線維束であり、主に脳神経運動核へと刺激を伝達する神経経路です。
脳神経運動核とは、主に眼球運動に関わる外転神経核・動眼神経核・滑車神経核や、顔面の表情運動に関わる顔面神経核、喉音や嚥下に関わる迷走神経核・舌下神経核などが挙げられます。
これらの運動は全て、大脳皮質から始まり、皮質脊髄路と同様の経路で延髄錐体まで到達し、その後皮質脊髄路とは離れて、それぞれの運動神経核へと至ります。
つまり、錐体路=皮質脊髄路+皮質核路ということです。

錐体路・錐体外路の相互作用と重要性

錐体外路とは、錐体路による随意運動をよりスムーズにするように働く神経経路です。
錐体路とは違い、錐体は経由しないため、錐体外路と名付けられています。
錐体路による主動作筋の収縮に対して、拮抗筋の弛緩が錐体外路の主な働きです。
人体のほとんどの部位には、ある運動を行う際に主に動作する「主動作筋」と、その運動とは反対の運動を行う「拮抗筋」が存在します。
先ほどの例を出すと、腕を曲げようとしたときには、錐体路からの指令で上腕二頭筋が収縮しますが、その裏で腕を伸展させる筋肉(拮抗筋)である上腕三頭筋は錐体外路によって弛緩しているのです。
もし、上腕三頭筋が弛緩していない場合、腕を曲げる筋肉と伸ばす筋肉が同時に作動するため、動作がぎこちなくなってしまいます。
そのため、より滑らかでスムーズな運動のためには、錐体外路が必要不可欠です。
錐体外路が障害される病気の代表例であるパーキンソン病で、歩行や体動がぎこちなくなってしまうのはこのためです。

まとめ

今回の記事では、 錐体路と皮質脊髄路の違いについて詳しく解説しました。
錐体路と皮質脊髄路はほとんど同義であり、混同して使用されているのが現状ですが、厳密には違います。
皮質脊髄路の他に、皮質核路のように錐体を通過する線維束が存在し、それらの総称を錐体路と呼びます。
もし脳卒中や脊髄損傷などにより錐体路が激しく障害されれば、運動の指令が正しく身体に伝達されなくなるため、麻痺などの重篤な神経症状をきたす可能性があり、注意が必要です。
現状、一度損傷した神経細胞は再生しないと考えられているため、後遺症として残ってしまう可能性もあります。
しかし、最近では再生医療の発達が目覚ましく、不可逆的な神経症状に対し「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、脳脊髄損傷部の治る力を高める治療『リニューロ®』を提供しており、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「再生医療×同時リハビリ™」によって、これまで困難であった後遺症からの改善・再生を目指しています。

Q&A

錐体路と皮質脊髄路の違いは何ですか?
皮質脊髄路とは、大脳皮質から始まり、運動の指令を脊髄へ伝達する線維束のことを指します。
一方で、錐体路とは延髄錐体を通過する線維束のことを指し、皮質脊髄路をもちろん含みますが、その他に皮質核路と呼ばれる神経経路も含みます。

皮質脊髄路の機能は?
皮質脊髄路の機能は、筋肉へと収縮刺激を伝達し、身体の随意運動を可能にすることです。
大脳皮質から始まり、中脳や延髄、脊髄を経由して末梢神経に刺激を伝達し、最終的に筋肉を収縮させます。

あわせて読みたい記事:錐体外路障害の原因と治療
<参照元>
・J Stage(皮質脊髄路の基礎知識):https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/29/3/29_267/_pdf
・J Stage(運動機能に関与する中枢神経系の形態学):https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/23/7/23_KJ00001307813/_pdf/-char/ja


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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