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脊髄損傷の再生医療

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脊髄損傷とは、脳からの指令を体に届ける神経の束である、脊髄が損傷されてしまうけがのことです。
脊髄に対して圧迫や強い外力が加わることで発症することが多く、米国では年間100万人あたり54人、日本では年間5000人、世界中では年間25万~50万人の脊髄損傷が発生しているとされています。
20歳前後など若い年代で受傷することも多く、神経の障害による症状は原則として永続的なものとなるため、人生への影響が非常に大きいケガの一つです。

脊髄損傷とは

脊髄の模型
「脊髄」と似た言葉に「脊椎」があります。
「脊椎」は首から背中、腰にある骨のことで、真ん中に大きな穴があいた形をしています。
真ん中にあいた穴は、多数の「脊椎」が縦に連なることで管状の構造となり、その管内を「脊髄」が通っています。
「脊椎」はその硬い骨で、柔らかく傷つきやすい「脊髄」を守っているのです。
その部分が外傷などにより損傷することで神経障害が起こります。

脊椎と脊髄、損傷レベルとは

脊椎は首の部分では頚椎、背中では胸椎、腰では腰椎と呼ばれます。
脊髄も同じく首から腰にかけて頚髄、胸髄、腰髄と呼ばれています。

脊髄は脳から出た電気信号を伝える電線のようなものなので、損傷されるとその先に信号が伝わらなくなります。
脊髄損傷がもし頚髄で起こるとその先にある胸髄、腰髄にも神経伝達が起こりません。
つまり、脳に近い部分で損傷が起こるほど障害が重くなることが多いのです。

脳にどれだけ近いかを示す言葉が、損傷レベルです。
頚髄、胸髄、腰髄はそれぞれ位置により神経の「髄節」が分けられており、脳に一番近い方を1として数字がつけられています。
例えば頚髄の第5髄節の脊髄損傷であればC5レベル(C: Cervical cord頚髄)、胸髄の第1髄節の脊髄損傷であればT1レベル(T:Thoracic cord胸髄)の損傷であるとされます。
損傷レベルにより発症する障害が大きく異なるため、重要な考え方です。

脊髄損傷の後遺症

脊髄損傷の後遺症は、損傷レベルと損傷程度により異なります。
大まかに、頚髄は呼吸筋・上肢の筋肉、胸髄は体幹の筋肉、腰髄は下肢の筋肉へ指令を送るため、例えば頚髄の損傷であれば呼吸筋・上肢・体幹・下肢すべてに障害が及び、腰髄であれば下肢の障害が残ることが多くなります。
また、重度の脊髄損傷は神経の伝達が完全に絶たれてしまいますが、一部の神経機能が残る不全損傷もあります。
損傷が軽ければ、後遺症は軽度のしびれのみ、ということもあります。

運動麻痺

神経の障害により、自分の意志で筋肉を動かす能力を障害されるのが、運動麻痺です。
重度の損傷では筋肉を全く動かせなくなります。
重い頚髄損傷では四肢、体幹の麻痺により自立した生活は非常に困難となります。
頚髄の中でも脳に近い部分の損傷では、呼吸に関わる筋肉も障害されるため、生命を維持するためには人工呼吸器の装着が必要となる場合もあります。
比較的軽い損傷であれば、箸を使うのは難しいがスプーンなら食事をとることができる、歩行はやや不安だが杖をつけば移動することができる、などの症状が残ります。

感覚麻痺

重度の損傷では、損傷された場所から先の感覚が障害され、触った時の感覚、温かい・冷たい感覚、痛みを感じる感覚が低下します。
後遺症のある患者さんは痛みに気づかず床ずれができてしまったり、手足のけがに気づかず症状が進行してしまったりするなどの特徴があります。
軽い頚髄損傷では手のしびれのみを感じ、体幹や下肢には症状が発生しないことがあります。

自律神経障害

脊髄の神経には運動、感覚だけではなく自律神経も含まれています。
自律神経は排便、排尿のコントロールや性機能に関係しているため、自律神経の損傷は便秘や尿閉、尿もれ、性機能障害の原因となります。
また、自律神経には血圧を一定に保つという重要な役割がありますが、その機能が不十分になると起立性低血圧(立ち上がった時のめまいやふらつき)や、自律神経過反射により逆に血圧が非常に高くなるといった症状が出現します。
第5,6胸髄よりも上の脊髄損傷で発症しやすく、リハビリや療養生活に影響が大きい症状の一つです。

痛み(神経障害性疼痛)

脊髄損傷の患者さんでは、約2/3の方に痛みがでることが知られています。
神経が障害されることに伴う痛みで、しばしば難治性となる難しい症状です。
じっとしていてもズキズキ痛い、痛みで夜眠ることができないなど、非常につらい症状です。

脊髄損傷の再生医療

幹細胞点滴療法
脊髄損傷は神経の障害であるため、一度損傷されてしまうと自然に治癒することはなく、後遺症は永続的に続くものとなってしまいます。
従来の治療はできるだけ損傷を軽くするための治療、または脊髄のまわりにある原因を治すといった治療で、神経そのものを治す方法はありませんでした。

しかし近年になり、神経そのものの機能を回復しようとする治療法が、再生医療の分野から急速に広まってきています。
ここでは、さまざまな脊髄損傷の再生医療、特に骨髄間葉系幹細胞を使用した脊髄損傷の治療について紹介します。

開発が進む多様な脊髄損傷の再生医療

iPS細胞による脊髄損傷の再生医療

iPS細胞から神経のもととなる細胞を作り出し、脊髄の損傷部位に移植する治療法です。
慶應義塾大学で治験が開始されており、京都大学が備蓄するiPS細胞が使用されます。
iPS細胞を使う再生医療の中でも重要な位置を占める治療法ですが、直接移植をするため手術をしなければならないこと、iPS細胞の腫瘍化をいかに抑えるか、といった点が課題となっています。

HGFを用いた脊髄損傷の再生医療

HGFとは、肝細胞増殖因子のことで、肝臓をはじめとするさまざまな臓器に対して保護的に作用するサイトカイン(細胞間の情報伝達物質)です。
神経に対しては血管を新生させ、栄養作用など保護的な作用を示します。
動物実験では脊髄に移植することで脊髄損傷の症状を回復させたことが報告され、国内の主要施設で治験が行われています。

Muse細胞を用いた脊髄損傷の再生医療

Muse細胞は、骨髄や血液、体内のさまざまな組織に存在する多能性幹細胞(体内のさまざまな細胞に成長することができる細胞)です。
「生体内修復幹細胞」とも称される細胞で、体内の損傷を修復する役割が期待されています。
ラットでの実験で脊髄損傷に対して治療効果がみられたことから、2019年から脊髄損傷に対する治験が開始されています。
また、Muse細胞は間葉系幹細胞に一定程度が含まれ、色々な方法を用いることでその割合を増やすことが出来ることが判明しています。
更に、実は同じMuse細胞であっても、骨髄由来Muse細胞、脂肪由来Muse細胞には明確な違いがあることも分かっており、骨髄由来Muse細胞は神経分化し易いという観点から、骨髄由来Muse細胞が現在研究が急速に進められています。

骨髄間葉系幹細胞による脊髄損傷の再生医療

多種類ある脊髄損傷の再生医療の中でも、最も段階が進み実績を積み上げているのが、骨髄間葉系幹細胞を使用した方法です。
骨髄間葉系幹細胞は骨の中に存在する幹細胞で、骨に針を刺して採取することができます。
その実用性、安全性の高さから脊髄のみならずさまざまな分野の再生医療に応用され、整形外科領域では骨や軟骨、半月板、腱、靱帯、椎間板の再生を目的に盛んに研究が行われています。

脊髄損傷に対する治療は札幌医大を中心に研究が行われ、多数の動物実験の成果が報告された後、2013年より治験が実施され良好な治療成績が報告されました。
それを受けて2018年には薬事承認されました。
骨髄から採取した間葉系幹細胞を培養増殖させ、後に点滴から投与するという治療方法です。
脊髄損傷の再生医療として唯一公的な承認を受けている方法ということになり、高い評価を得ているといえます。
その作用機序は次のように説明されています。

  • 投与後早期
    静脈内へ投与された骨髄間葉系幹細胞は体内の損傷部位へ移動し、種々のサイトカインを分泌し神経保護・栄養作用、炎症を抑える作用を発揮します。
    さらに、大脳の神経再生に関与する遺伝子発現を変化させることで、神経の再生作用を促進するという機序が示されています。
  • 投与後中期
    損傷された神経周囲の血管を新しく発生させ、神経の損傷を修復する働きが発揮されます。
  • 投与後晩期
    移植された間葉系幹細胞が神経系の細胞へと成長し、神経が再生します。
    細胞の移植を行う再生医療ですが、同時に移植される、または体内で細胞が増殖する際に分泌されるサイトカインが重要な役割を果たしていることが分かります。

脊髄損傷の再生医療で期待できる治療効果

脊髄損傷の再生医療では、神経機能が再生し損傷に伴う種々の症状改善効果が期待されます。
運動に関しては筋力、動作、歩行の改善、感覚に関しては触覚などの改善、またしびれの改善が期待されます。
自律神経に関して排尿や排便状況、性機能の改善や血圧コントロールの改善といった効果が期待されます。

また、日常生活や精神的な影響が大きい「痛み」について効果があると報告され、注目されています。
札幌医大では痛みが強い脊髄損傷の患者さん12名に治療を行ったところ、骨髄間葉系幹細胞の移植後12週時点で痛みは半分以下程度に減少していました。
今後さらに有効性を分析するとのことであり、難しい痛みの治療について、さらなる成果が期待されます。

脳卒中・脊髄損傷専門の再生医療リハビリ(ニューロテック®)で受けることのできる再生医療

ニューロテック®では、研究成果による裏付けがある「骨髄間葉系幹細胞の点滴投与」を受けることができます。
法律により「二種」に分類される再生医療であるため、申請をして認可を受ける必要がある治療です。
当院では、2018年9月に特定認定再生医療等委員会の審査を受け承認、2019年1月に厚生労働省に受理されています。

まとめ

現時点では、当院で行う脊髄損傷の再生医療には健康保険が適応されないため、自費負担となります。
幹細胞の培養は厳格に管理されたクリーンルームで行うなど、高い安全性と品質を保つためコストがかかります。
そのため、治療費はやや高額となります。
一生残る後遺症のケアには多額の費用がかかり、また何より健康な体は費用に代えられない価値があるものです。
当院では入念なカウンセリング、そして最先端の再生医療を通じて、患者様が前向きに治療に立ち向かうお手伝いをしたいと考えています。

外部サイトの関連記事:脊髄損傷が治る可能性について

貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表 Dr.貴宝院 永稔

大阪医科薬科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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