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脳梗塞が原因で起こる脳浮腫とは

           

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この記事を読んでわかること

浮腫について
脳梗塞後に発生する脳浮腫のメカニズム
脳浮腫の治療


「浮腫(ふしゅ)」という言葉を知っていますか?
浮腫というのはむくみのことで、皮膚の下にある皮下組織に余計な水分がたまっている状態のことを指します。
典型的なのは夕方になるとふくらはぎがパンパンになり、すねのあたりを押すとぎゅっとへこむ状態です。
浮腫のように、余計な水が脳にたまるのが脳浮腫です。
脳浮腫は脳梗塞や脳出血などで発生し、病状の悪化に強く関わる現象です。
ここでは、脳梗塞と脳浮腫の関係について解説していきます。

悪化すると命に関わる脳浮腫

脳浮腫
浮腫は足に起こることが多く、ふくらはぎのあたりがパンパンにはることで痛みや不快感の原因になります。
一方脳に浮腫が起こると、頭の中に水がたまっていきます。
皮膚の場合は引き伸ばすことができるため足がふくらんでいきますが、脳の場合は固い頭蓋骨に覆われているため、ふくらむことはできません
そのため、脳浮腫が起こると頭蓋骨の中の圧力が高まっていきます。
この現象を頭蓋内圧亢進と呼び、頭痛や吐き気、目がかすむなどの症状が現れます。
さらに圧が高まると、脳組織の一部が脳の中にある境界や隙間からはみ出す状況となり、これを脳ヘルニアと呼びます。
脳ヘルニアになるほどの状況になると、非常に高い頭蓋内圧により脳の血流が減少します。
脳の細胞に酸素が行き届かなくなるとそれが浮腫の原因となり、さらに圧が高まってしまいます。
悪循環が続いた結果、生命の維持を司る「脳幹」が圧迫を受けると致命的な状況になります。
脳浮腫は悪化すると命に関わる状況になる、怖い症状なのです。

脳梗塞後に発生する脳浮腫のメカニズム

脳浮腫は脳出血や脳梗塞、頭のケガや脳腫瘍などが原因で発生します。
脳浮腫が発生するには、2つのメカニズムが推定されています。
1つは、血管原性脳浮腫と呼ばれるもので、血管の中から外に液体が漏れ出ることにより起こる浮腫です。
もともと大事な脳を守るため、脳の組織と血管の間には簡単に物質が移行できない仕組みがあり、これを脳血管関門といいます。
液体もそう簡単に出てくることができないため、脳に浮腫が起きることはめったにないのです。
ところが、脳梗塞や脳出血などで脳の組織が傷つき血管が傷つくと、血液脳関門が破綻し、血液に含まれる液体成分が漏れ出てきてしまうのです。
ケガにより血管が傷ついた場合、腫瘍が食い込み血管が傷ついた場合にも同様の現象が起こりえます。
もう1つのメカニズムとして推定されているのが、細胞障害性脳浮腫です。
もともと細胞というのは、ナトリウムなどのイオンを細胞の外に排出したり取り込んだりすることで活動を行っています。
細胞が障害されるとナトリウムを外に出す仕組みが破綻し、細胞内にナトリウムと水分が貯留しやすくなります。
血管原性脳浮腫では細胞の外に液体がたまるのに対して、この細胞障害性脳浮腫では、細胞の中に水分がたまり浮腫を起こします。
脳梗塞の場合この2つのメカニズムが混在して発生することで、脳浮腫が起こると考えられています。

早めの対処が重要な脳浮腫の治療

脳浮腫を放置すると、水分が頭蓋骨内にたまり続けることで浮腫は悪化し、症状が悪化します。
脳ヘルニアにいたると致命的となり、命を落としてしまうことになります。
脳浮腫の治療はそうなる前に診断し、対処することが重要です。
頭痛や吐き気、意識の障害や血圧の上昇、けいれん発作など頭蓋内圧亢進の症状に注意する必要があります。
頭蓋内圧亢進を伴う脳浮腫の診断がついた場合、静脈内にグリセロールやマンニトールという浸透圧の大きな薬剤を注入します。
血管の外に漏れ出てしまった水分を、血管内に呼び戻すための治療法です。
グリセロールの静脈内投与は脳浮腫を改善し、大きな脳梗塞での救命に有効である、と脳卒中治療ガイドラインにも記載されています。
脳梗塞の中では心臓からの血栓が原因となる心原性脳梗塞が重症になりやすく、脳浮腫が起きやすいとされています。
発症後1週間までが脳浮腫のピークとされており、病状の悪化に注意が必要な時期です。
薬剤での治療を行ったにも関わらず頭蓋内圧亢進の症状が悪化する場合には、頭の骨を外して中の圧を下げようとする手術が検討されることがあります。
脳出血や脳腫瘍では脳浮腫が経時的に悪化するケースがあり、手術が必要になることがあります。

まとめ

脳梗塞の病状に直結する現象、脳浮腫について解説しました。
脳浮腫が起きるほどの脳梗塞では、早期発見・早期診断が救命のカギとなることが少なくありません。
自分自身やご家族の様子をよく観察し、万が一の場合には早急に病院を受診するようにしましょう。

よくあるご質問

脳浮腫の初期症状は?
脳が腫れて浮腫むと、頭蓋骨の中で圧が上がり、頭痛や吐気、嘔吐などの症状が発生します。
眼の診察を行うと、眼の奥にある視神経乳頭という場所が浮腫み、充血しています。

脳浮腫で死亡するのはなぜ?
脳浮腫が起こると頭蓋骨の中で圧が上がり、脳ヘルニア(脳の一部が押し出されてしまうこと)の状態になります。
脳ヘルニアになると脳の機能が急速に失われ、生命を維持している脳幹に障害が及び致命的となります。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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