幹細胞治療が脳出血後遺症に与える効果 | 再生医療|脳梗塞・脊髄損傷の後遺症を幹細胞治療で改善|ニューロテックメディカル

幹細胞治療が脳出血後遺症に与える効果

           

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脳出血は約20%に後遺症を残し、寝たきりの原因の1位の疾患です。
脳梗塞と異なり、後遺症を減らすための有効な治療は確立されていませんでした。
近年では障害の残った方に対する再生医療が注目されています。
この記事では当院でも扱っている幹細胞治療について解説します。

脳出血とは

脳出血 血管破裂
脳出血とは脳内の血管が破裂することで、脳内に血腫を形成してしまう疾患です。
原因には高血圧や動脈有、血管奇形などがあり、最も多いのは高血圧性の脳出血です。
どこが出血してしまうか、どの程度の血腫なのかにより症状は様々です。
最もイメージしやすいものは片麻痺で、障害を受けた脳の反対側の手足が動かしにくくなる状態です。
その他に、意識障害、感覚障害、失語、嚥下障害、構音障害、高次脳機能障害(判断や注意、認知などに障害がある状態)などがあります。

幹細胞治療がもたらす後遺症の改善とは

脳出血は脳梗塞と比べて死亡率が高い疾患です。
それを乗り越えても様々な後遺症があるのですが、後遺症に関する治療は限られています。
例えばA型ボツリヌス注射は片麻痺での筋緊張の低下に有効ですが、発症前と同じように手足が動かせるようになるかというと話しは異なります。
そのような中で注目されているのが再生医療です。
再生医療とは幹細胞を利用して障害を受けた臓器や組織を直接的に改善、修復を目指す治療です。
幹細胞は自己再生能力と増殖能力が強い細胞で、様々な細胞に分化する能力があります。
臨床で最初に使われたのは造血幹細胞で、血液がんに対して用いられました。
その後、間葉系幹細胞、胎児由来神経幹細胞、ES細胞、iPS細胞などの幹細胞が研究されています。
間葉系幹細胞は当院でニューロテックとして用いられているものです。
ほぼ全ての最終段階の細胞に分化する可能性があるために、非常に期待されています。

脳出血後の運動機能や認知機能障害は改善するのか

間葉系幹細胞をヒトに対して初めて用いた研究は、遷延性意識障害で植物状態のヒトに投与されたものです。
脳卒中の症状を示す評価法の一つにNIHSSというものがあり、幹細胞点滴により改善を認めました。別の研究でもプラセボ群(投薬をしない集団)と比較して、間葉系幹細胞点滴をされた脳卒中患者で、運動障害と認知機能障害が有意に改善したという報告をしています。
現段階で脳出血後遺症に対する幹細胞点滴の研究が十分であるとは言えません。少なくとも有害事象が多くあるものではなく、対照試験でも運動機能・認知機能ともに効果があると言われており、今後は更に研究が進んでいくでしょう。

再生医療による脳出血後遺症の改善ケース

脳出血後に間葉系幹細胞治療を初めて行ったケースを紹介します。
(Fauzi AA, et al.J Stem Cells Regen Med. 2016;12(2):100-104. Published 2016 Nov 29. )

【51歳男性】

左前頭頭頂葉の脳出血で遷延性意識障害があり、寝たきりの状態だった。気管切開で経鼻胃管での栄養投与をされていた。NIHSS23点。
脳室内に幹細胞移植を行った。投与後、NIHSSは3ヶ月後に20点、6ヶ月後19点、1年後19点だった。1年の時点で、経口摂取で食事ができるようになり、経鼻胃管は抜去された。

【52歳男性】

左大脳基底核の出血で遷延性意識障害があり、寝たきりの状態だった。気管切開されており、経鼻胃管で栄養投与をされていた。NIHSS17点。
発症11ヶ月で骨髄由来幹細胞治療を行った。投与後、NIHSSは3ヶ月後に17点、6ヶ月後15点、1年後15点だった。
いずれの例も、発症して長期間が経ったなかでの幹細胞治療で改善を認めています。特に1例目の方は経鼻胃管も外れており、大きな効果があったようです。

まとめ

この記事では脳出血に対する幹細胞治療について解説しました。まずは脳出血を起こさないための生活を心がけて、脳出血が起こって後遺症が生じてしまった際には再生医療が選択できると良いですね。
当院でもニューロテック®という幹細胞治療を導入しており、多数の患者さんへの実績があります。rTMSなどの先進機器を利用しての再生医療×同時リハビリ™で、少しでも効果を高められるような工夫をしながら、後遺症に悩む方が少なくなる世の中を目指しています。

Q&A

脳出血の後遺症例は?
脳出血の後遺症には、片麻痺、感覚障害、失語、高次脳機能障害、嚥下障害、構音障害、運動失調などが知られています。出血する部位や血腫の大きさにより症状が異なります。重症の場合、意識障害が遷延することもあります。

脳出血の後遺症の確率は?
脳出血は寝たきりとなる原因の1位で後遺症を残しやすい疾患です。脳出血を発症した人のうち、後遺症のないかたは20%未満と言われています。再発も多く、後遺症に悩む人は非常に多いです。

あわせて読みたい記事:脳出血の症状と血圧の関係
<参照元>
Recent Stem Cell Research on Hemorrhagic Stroke : An Update https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8918254/
Mesenchymal Stem Cells Transplantation in Intracerebral Hemorrhage: Application and Challenges https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fncel.2021.653367/full
Intraventricular Transplantation of Autologous Bone Marrow Mesenchymal Stem Cells via Ommaya Reservoir in Persistent Vegetative State Patients after Haemorrhagic Stroke: Report of Two Cases & Review of the Literature https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5227101/

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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