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脊髄損傷のフランケル分類について

           

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この記事を読んでわかること

脊髄損傷がどのように分類されているのか
フランケル分類について
改良フランケル分類について


フランケル分類は脊髄損傷の程度を示すための指標です。
この記事では脊髄損傷がどのように分類されているのかをまとめます。
脊髄損傷の症状は完全に治ることはありません。
しかし、どの程度の症状があり、どの程度の改善を見込むことができるのかを知っておくことは、患者本人にとっても、家族や親戚のような本人に関わる人にとってもとても大切なことです。

脊髄損傷とは

脊髄
脊髄損傷は中枢神経を構成する脊髄が、強い力を受けて損傷し、運動機能や感覚、自律神経機能に障害が現れてしまった状態のことをいいます。
末梢神経は損傷しても回復する可能性があるのですが、中枢神経は一度損傷してしまうと、一般には修復や再生することはありません。
脊髄を痛めてしまうと、損傷した高さより下の神経への繋がりが全てなくなってしまいます。
脊髄損傷の症状には、四肢や身体が動かなくなる運動麻痺、痛み、温度、触覚や位置感覚がわからなくなる知覚麻痺があるほか、尿意や便意を感じられない直腸膀胱障害や発汗機能障害、呼吸機能の障害や内臓機能の障害があります。

完全脊髄損傷

脊髄損傷にはその損傷の程度によって、完全損傷と不完全損傷とに分けることができます。
完全損傷は脊髄の横断面が広範囲に障害されてしまい、運動麻痺と感覚麻痺の両方が症状として現れる場合に診断されます。
障害された脊髄の横断面が完全に障害されてしまうので、障害部位よりも下の神経との連絡をとることができないので、広範囲に渡って運動障害、感覚障害が現れます。

不完全脊髄損傷

不完全損傷は脊髄の横断面のうち一部分が損傷してしまい、運動もしくは感覚の機能が一部残存している状態です。
運動機能だけ障害されることもあれば、感覚機能だけが障害されることや両方とも機能が低下していることもあります。

フランケル分類と改良フランケル分類

フランケル分類は脊髄損傷の重症度をその人の日常生活のADLの程度を元に評価するための分類です。
Grade AからEまでの5段階の区分があり、アルファベットがAに近いほど障害の重症度が高くなります分類の方法は運動障害と知覚障害の有無により分けられます。
従来はフランケル分類のみで区分されていましたが、さらにB,C, D群を予後によって細分化したものを改良フランケル分類といいます。(以下F分類・改良F分類)

A Complete (完全麻痺)

一番重症度の高い分類がAです。
この定義は「仙髄の知覚(肛門周囲)脱失と運動(肛門括約筋)の完全麻痺」です。
肛門の筋肉を自分の意思で動かすことができないこととその周囲の感覚を元に分類されます。
完全麻痺なので、脊髄の連続性が完全に絶たれてしまった状態で、歩くことも足を動かすこともできず。
寝たきりになってしまいます。

B Sensory only (知覚のみ)

F分類Bは運動が完全に障害されていて、感覚の一部が残っている場合です。
完全に運動が障害されているので、足は歩くことができないだけでなく、完全に動かすことができません。
さらに改良F分類では、以下のように感覚がある部分によって以下のように分類されています。

  • B1. 仙髄領域のみ触覚残存
  • B2. 仙髄領域だけでなく、下肢にも触覚が残存する
  • B3. 仙髄領域か下肢に痛覚が残存している

数字は高い方が症状の重症度が低いです。
例えば、急性期に頸髄損傷と診断されて、改良F分類でB3と判断された人はB1やB2と判断された人よりもF分類Dへと回復する傾向が高いこという報告もされています。

▼参考:改良Frankel分類による頸髄損傷の予後予測
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/38/1/38_1_29/_pdf

C Motor useless (運動不全)

F分類Cは「運動不全で有用でない」状態です。
改良F分類では、下肢の筋力を徒手筋力テストという筋肉がどれくらいの力が出るのかという検査で、重力に逆らった動きができるかどうかを参考に分類します。

  • C1. 下肢筋力が1,2程度
  • C2. 下肢筋力が3程度

徒手筋力テストの2と3の違いは重力に逆らって足を動かすことができるかです。
歩くことができなくても、寝ている状態で、膝を立てることができればC2、できなければC1というように判断されます。
また、歩くことができても、距離が10m以下であればC2と判断されます。

D Motor useful (運動あり)

筋力の低下や感覚障害があるものの、実用性のある運動ができる場合にはDと判断されます。
実用性のある運動とは、例えば、歩行やトイレの動作、入浴や着替えなどの日常生活で行う運動のことです。
F分類Dではほとんどが自力排尿ができるという特徴もあります。
改良F分類ではどんな移動手段ができるのかなどによって、次の4つに分類されます。

  • D0. 急性期歩行テスト不能
  • D1. 車椅子を併用する
  • D2. 杖独歩あるいは中心性損傷例
  • D3. 独歩可能

D0は歩行できそうでも、障害直後などで現状では判断できず経過をみる場合に暫定で判定されます。
D1は屋内の平地では歩くことができるけれども、外出時には日常的に車椅子を使用しなくてはいけません。
D2は杖や装具などを使って屋外でも歩ける場合に分類されます。
また、歩くことができても、上肢の運動機能が障害されていて入浴や着脱のような行為ができない場合に中心性損傷としてD2に分類されます。
D3では筋肉の低下や感覚の低下はあるものの、独歩で上肢の運動も含めて介助が必要でない場合です。

E Recovery (回復)

運動機能と感覚機能は正常と判断されれば、F分類Eと判断されます。
中には身体の一部に痺れを感じる人もいるかもしれませんが、痺れはフランケル分類には含まれていないので、痺れていても、Eと判断されること妥当です。

まとめ

この記事では脊髄損傷の分類として完全脊髄損傷と不完全脊髄損傷の違い、そしてフランケル分類についてまとめました。
フランケル分類は診断された区分がリハビリテーションによって改善することもあります。
脊髄損傷になってしまった時に重要なのは、いかに残存している機能を保ちつつ、それ以上に機能を低下させないかという点です。
フランケル分類にから、自分や大切な人が今どんな状況にあって、何を目指してリハビリをするのかを把握できるようにしましょう。

Q&A

フランケル分類の目的は?
フランケル分類は、脊髄損傷患者の運動と感覚、歩行能力を評価することで、重症度を分類します。現状の機能を確認することで適切なリハビリテーションを行い、今後どこまで動作が可能になるかを推察する事が目的の評価法です。

脊髄損傷のグレードは?
脊髄損傷の分類にはフランケル分類があります。運動と感覚、歩行能力から分類され、簡便である一方詳細な評価ができないという欠点があります。ASIA(脊髄損傷の神経学的分類のための国際基準[ISNCSCI])は、脊髄の髄節ごとにより詳細に評価が行えます。


あわせて読みたい記事:中心性頸髄損傷の特徴について

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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