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脳梗塞後に起こるせん妄について

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意識レベルの低下に加え、様々な認知機能の障害を伴うせん妄は、脳梗塞後の2割前後の方にみられる一般的な合併症です。
脳梗塞の重症度や発症部位が危険因子となっています。
またせん妄に対して治療をすることが、脳梗塞の治療の妨げになることがあり、入院期間の延長や予後の悪化に関係すると考えられています。

脳梗塞後に起こるせん妄について

脳梗塞後に、せん妄を起こす人が多くおられることが知られています。
まずせん妄とはどのような状態かについて、ご説明します。

せん妄とは?

せん妄とは、脳内に急激な変化が起こることにより、精神的な混乱が生じている状態です。
思考、記憶、睡眠、注意力などに異常が起こり、幻覚や錯覚も伴います。通常は一時的なもので、多くの場合問題なく改善します。
手術の後には術後せん妄が見られますが、脳卒中、肺炎や喘息などの呼吸器疾患に伴ってみられることもあります。
このほかにも代謝疾患やアルコール障害などでも発症しています。
いずれにしても、脳機能を大きく変化させるような要因があれば、せん妄を起こす可能性があります。
せん妄になると、集中力が低下したり、自分の居場所がわからなくなったりすることもあります。
また普段よりも動きが鈍くなったり、気分の落ち込みを感じたりすることもあります。
幻覚や錯覚がみられ、他人に対して暴言を吐くことや攻撃的になってしまうこともあります。
その他にも、考えがまとまらない、言葉が出ない、寝つきが悪くなる、短期記憶力が低下する、失禁なするなど、様々な症状があります。

脳梗塞後にみられるせん妄の特徴

続けて、脳梗塞後にみられるせん妄の特徴についてご説明します。

脳梗塞後にせん妄が認められる頻度

脳梗塞後にせん妄が認められる頻度はいくつか報告がありますが、せん妄の診断方法によって差が見られます。
そこでいくつもの報告を、定められた方法で厳密に分析するメタアナリシスという手法で調査したところ、脳卒中を発症した26%の方にせん妄が見られていました。

(出典:Carin-Levy G, et al. Delirium in acute stroke: a screening tools, incidence rates and predictors: a systematic review. J Neurol. 2012; 259(8): 1590-9.)

脳卒中のなかには、脳梗塞だけでなく脳出血も含まれますが、両者の違いを比較すると脳出血の方が脳梗塞よりもせん妄を発症する率が高いようです。
実際のところ、脳梗塞後だけに限った報告を見ると、15〜22%程度に見られると報告されています。
したがって、およそ2割程度の方に発症すると考えてよいでしょう。

(出典: Rhee JY, et al. Association between stroke localization and delirium: a systematic review and meta-analysis. J Stroke Cerebrovasc Ds. 2022; 31(3): 106270.)
(出典: Qu J et al. Delirium in the acute phase of ischemic stroke: incidence, risk factors, and effects on functional outcome. J Stroke Cerebrovasc Ds. 2018; 27; 2641-7.)

脳梗塞後にせん妄が認められる時期

脳梗塞後にみられるせん妄は、入院した直後、つまり脳梗塞発症直後からみられることが多いようです。

これは、やはり脳梗塞が脳全体に強い障害を与えることが影響していると思われます。
また特に急性期には、集中治療室での治療が必要になることもあり、突然の環境が変化することも影響しているのでしょう。
事実、日本の高齢者を対象に行われた研究では、集中治療室へ入室したことが、せん妄のリスク因子となっていました。

(出典:菅原峰子. 高齢脳梗塞患者のせん妄発症の実態と発症に関与する因子. 老年看護学. 2005; 10: 95-104)

脳梗塞後せん妄のリスク因子

脳梗塞後にせん妄状態になる危険因子は、比較的よく知られています。
例えば脳梗塞を発症した部位、梗塞巣の広がりの程度、脳浮腫の有無、また脳梗塞後の誤嚥や感染などの合併症の発症が影響を与えています。
まず脳梗塞の程度が重い、つまり麻痺や感覚障害などの症状が重いほど、せん妄の発生率が高いことがわかっています。
これはやはり梗塞を起こした範囲が広いほど、発症のリスクが高くなることを意味しています。
脳梗塞の発症部位については、記憶、注意、情動行動に関連する視床や尾状核、また特に前頭葉領域と側頭葉にある中側頭回に発症すると、せん妄が多く報告されています。
さらに、右大脳半球に生じた場合は左大脳半球の梗塞に比べ、せん妄の発生率が高いと考えられています。
ただし、左皮質を中心に発症する方がせん妄のリスクが高くなるとの報告もあり、こちらは一定の見解は得られていないようです。
このほかにも発症時の年齢は高齢になる程、リスクは高くなる傾向にあります。

脳梗塞後せん妄の治療

せん妄は、睡眠が妨げられることによって生活リズムが変わってしまうことが、発症の促進因子として知られていることもあり、治療には鎮静作用を持つ抗精神病薬が用いられます。
また薬物を用いない介入として、看護師や理学療法士・作業療法士たちによる、早期からの運動やリハビリの推進、生活サイクルを作ること、また環境を調整することによる睡眠補助などが挙げられます。

脳梗塞後せん妄の予後

脳梗塞後にせん妄を発症すると、発症しない場合に比べ、身体機能の予後を有意に悪化させる可能性があることが報告されています。
せん妄に対し、眠気を誘う薬を使った治療が行われると、どうしても昼間の活動レベルが落ちてしまったり、昼夜が逆転したりすることがあります。
そのためリハビリの開始や積極的な介入が難しくなってしまうことが、予後の悪化に影響を与えていると考えられています。

まとめ

脳梗塞とせん妄の関係についてご説明しました。せん妄状態の方は、自分がせん妄状態にあることが認識できません。
そして、ご自身の意図に反して攻撃的になってしまうことがあります。
ご本人の苦痛を和らげるためにも、早期に評価し、多職種で連携をとりながら対応できるように、各医療施設で対応されています。
ご心配なことがあれば、ぜひ主治医にも相談してみるとよいでしょう。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表 Dr.貴宝院 永稔

大阪医科薬科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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