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疼痛スケールの役割と使い方

           

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この記事を読んでわかること

疼痛スケールの概要、目的があるのかが分かります。
疼痛スケールの具体的な使用方法が分かります。
慢性疼痛に対する再生医療は何があるのかが分かります。


痛みは主観的な体験であり、時に他人に伝えることが難しくもあります。
痛みを伝える際に有用なのが疼痛スケールです。
疼痛スケールを使えば、経過が良いのか悪いのかなどの判断ができます。
この記事では疼痛スケールの目的、具体的な疼痛スケールについて解説します。

なぜ疼痛スケールが必要なのか

疼痛
世の中に痛みは様々ありますが、全てが主観的な体験です。
自分がどれだけ痛みを感じていても、痛みを直接他人と共有することはできませんし、他人の痛みを感じることもできません。
さらに痛みの表現の仕方にも個人差があります。
動けないほど痛くても「いつもあることだから大したことない痛み」と表現する人もいれば、動作に支障がないのに「苦痛が大きくて辛い」と言う人もいます。
子供や言語能力に障害がある人は、そもそも表現することができません。
このように痛みという症状を全て拾い上げて経過を負うのは難しいです。
そこで有用なのが疼痛スケールです。
疼痛スケールは定められた手法により、痛みを「別の数値」で表します。
同じ聞き方をするので、一人の方について痛みの経過を評価することが可能です。

主な疼痛スケールの種類

代表的な疼痛スケールには以下のようなものがあります。

Visual Analogue Scale(VAS)

背景のない紙に、10cm(100mm)の線を引き、左端を痛みが全くない状態、右端を想像できる最大の痛みと設定します。
その線の中で現在の痛みがどこにあるか、痛みを感じる人自身が線・印をつけます。
痛みは左端からの距離(mm)として知ることが出来ます。
連続した数値がでるので経過を追うことに有用です。
慢性腰痛症の患者ではVASで20mmの改善を、臨床的に重要な変化の最小値としており、治療の効果判定に使用することも有用です。
紙を用いて自身で印をつけてもらうという流れが、子供や認知機能が低下した人、言語障害のある人には少し難しいこともあるので注意しましょう。

Numerical Rating Scale(NRS)

0を全く痛みがない状態、10が想像できる最大の痛みと設定して、11段階でどの程度の痛みかを尋ねる手法です。
聞き方も単純なので、子供や高齢者にも用いやすいです。
VASと比べて、道具を用いずに疼痛を評価できることが利点です。
電話での問診・インタビューやフォームを用いての入力でも用いることができます。
各スケールを比較したシステマティックレビューでは、感度、簡便さなどの視点からNRSが最も使用しやすいと報告しています。
慢性疼痛患者への調査では、臨床的に重要な変化の最小量をNRSでは1ポイントとしています。
NRSで2ポイントもしくは33%減少した場合は、患者が「(以前と比較して)はるかに良い」状態に改善した場合と一致すると言われています。

Verbal Rating Scale(VRS)

0:痛くない、1:少し痛む、2:かなり痛む、3:耐えられない程痛む、の4段階で現在の疼痛がどの程度あるのかを教えてもらう手法です。
VASやNRSよりも項目ごとの幅が大きいので、簡単に聞きやすい一方で経過を詳細に追うことが難しいです。

Face Rating Scale(FRS)

6段階の表情が並んだ用紙から、現在の痛みがどの表情くらいなのかを聞くスケールです。
言葉によるルールの理解が少なく、子供や高齢者、言語障害がある人にも用いやすいです。
外国の方など言葉が通じない方にも用いることができます。
VRS同様、項目ごとの幅が大きいことに注意が必要です。

疼痛スケールを用いる注意点

疼痛スケールを用いる際にはいくつか注意が必要な点があります。
まずはその人にあった疼痛スケールを用いることです。
上記のように、子供や高齢者ではスケールの使用が難しいことがあります。
正しく評価ができていないのであれば経過を追うこともできません。
2つ目は、質問の方法を統一することです。
例えばNRSの10を「想像できる最大の痛み」ではなく「ものすごく痛い」としてしまうと、疼痛を過大に評価してしまう可能性があります。
常に「ものすごく痛い」と聞くのであれば、手法としては正しくなくとも経過を追うことはできます。
しかし、毎回聞き方が変わるのであれば経過を追うことすらできなくなります。
同じ人には同じスケールで同じ聞き方をしましょう。
3つ目は、違う人との間で比較しないことです。
疼痛スケールは主観的な体験を数値に出す以上のものではないので、個人間での比較はしてはいけません。
VASで100mmと50mmの人がいたとして、前者が後者の人より2倍の痛みを感じている、2倍重症であると判断してはいけないのです。

まとめ

疼痛は急性であっても慢性であっても、多くの人が悩む症状の一つです。
疼痛スケールをうまく使用しながら、自分の疼痛を伝えたり、他人の疼痛に共感できるとよいです。
これまでは疼痛に対する治療法は対症療法が主でした。
近年では慢性疼痛に対する再生医療が注目されています。
骨髄由来間葉系幹細胞は再生医療の一つであり、慢性腰痛に対する臨床研究も行われています。
当院では慢性疼痛患者さんへ間葉系幹細胞投与の実績を多く経験しています。
更にリハビリテーションを並行して行う再生医療×同時リハビリ™も実施しています。
慢性疼痛に対する更なる研究を待ちながら、更なる実績と検証を積み重ねていきます。

Q&A

疼痛スケールとは?
疼痛スケールとは、主観的な症状である痛みを数値化して伝える方法の一つです。VAS(Visual Analogue Scale)、NRS(Numerical Rating Scale(NRS))、FRS(Face Rating Scale)などがあります。痛みの強さを表すのに用いられますが、痛みの質については用いることが出来ません。

疼痛評価の目的は?
疼痛を評価する目的には、効果の判定や診断に近づくなどがあります。ある治療を始めて、Visualk Analogue Scale(VAS)が20下がるなどがあれば効果があるといえます。疼痛には侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分けられ、両者の区別には質の評価が有用です。

あわせて読みたい記事:慢性疼痛の神経障害性疼痛とは
<参照元>
慢性疼痛診療 ガイドライン:https://www.jhsnet.net/pdf/totsu_guideline_jp.pdf
Regenerative Medicine: Pharmacological Considerations and Clinical Role in Pain Management:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36074255/


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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