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橋中心髄鞘崩壊症の原因と症状について

           

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この記事を読んでわかること

橋中心髄鞘崩壊症とは
橋中心髄鞘崩壊症の原因
橋中心髄鞘崩壊症の治療


橋中心髄鞘崩壊症は、主に低ナトリウム血症を急速に補正することで生じる中枢性の脱髄疾患です。
血清浸透圧が急速に上昇することで細胞内脱水となり、髄鞘が破壊されてしまいます。
意識障害、痙攣、四肢麻痺、構音障害、嚥下障害など時に死亡したり、後遺症を残したりすることもあります。
この記事では橋中心髄鞘崩壊症について解説します。

橋中心髄鞘崩壊症とは

橋中心髄鞘崩壊症

病態

橋中心髄鞘崩壊症(Central pontine myelination:CPM)とは、古典的には低ナトリウム血症の急速な補正により生じる中枢性の脱髄疾患です。
血清浸透圧(血液の濃さ)が急速に上昇すると、細胞内の水が血管内に移動してしまいます。
細胞が脱水になってしまうことで、髄鞘が破壊されます。
髄鞘は跳躍伝導という神経の電気活動を効率的にしたり、神経線維を保護したりする役割があるため、破壊されてしまうと正常な電気活動が行われず、神経線維が障害を受けることもあります。
1959年にAdamsらにより初めて報告された疾患ですが、後の医療技術の進歩したことで橋以外にも障害を生じることが明らかになりました。
現在では、橋と橋以外の病態を合わせて、浸透圧性脱髄症候群(Osmotic demyelinating syndrome:ODS)として扱うこともあります。

症状

症状は髄鞘が破壊されることで生じます。
典型的には意識障害、痙攣が先立ち、改善した頃に構音障害や嚥下障害、四肢麻痺が出現することが多いとされています。
構音障害や嚥下障害は偽性球麻痺によるものであり、脳卒中で起こる構音障害・嚥下障害と同じ病態です。
延髄(舌咽神経や迷走神経など、構音や嚥下に関わる脳神経が出る部位)より上流の神経伝達ができなくなることで生じます。
報告では意識障害が数ヶ月に渡って残存した例もあり、経過は様々なようです。

橋中心髄鞘崩壊症の原因

基礎疾患

橋中心髄鞘崩壊症の基礎疾患、すなわちなりやすい人として、慢性アルコール中毒や低栄養の人が古典的には挙げられています。
その他には、腎不全、糖尿病、血液悪性腫瘍、重症感染症なども基礎疾患として報告されています。

急激な浸透圧の上昇

血液の浸透圧は様々な物質により構成されていますが、中でも最も重要なのはナトリウムです。
低ナトリウム血症とは血液の浸透圧が低い状態です。
それを急速に補正=血液中のナトリウムが増えることにより、橋中心髄鞘崩壊症は生じると言われています。
橋中心髄鞘崩壊症を起こさない場合は、低ナトリウム血症の補正を比較的ゆっくり行うことが求められます。

低ナトリウム血症の原因は

低ナトリウム血症とは、自由水に対してナトリウムが少ない状態です。
原因には脱水、心不全、腎不全、肝硬変、ホルモン(抗利尿ホルモン)の分泌異常(その原因疾患として脳腫瘍や肺がん、肺炎など)と多岐に渡ります。
低ナトリウム血症だけでも頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、痙攣などの症状が起きます。
重度の低ナトリウム血症は死亡する例もあり、また入院中で生じたものは軽度であっても死亡率と逆相関するとも言われています。
指摘があった際は必ず治療を受けるようにしましょう。
また、低ナトリウム血症の指摘がない中で、予防のためにとナトリウム=塩をたくさんとるなどの行為は不要です。

橋中心髄鞘崩壊症の診断

橋中心髄鞘崩壊症の診断はMRIで行われます。
左右対称性にT2画像で橋に高信号を認めるのが特徴です。
浸透圧性脱髄症候群として病変が橋以外(例えば大脳基底核)などの場合もあります。
意識障害や痙攣を起こす別の疾患の除外をすることも重要です。

橋中心髄鞘崩壊症の治療

治療法

ステロイドパルス療法や血漿交換療法、TRH(Thyrotropin-releasing hormone:甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)療法、免疫グロブリン療法、浸透圧再低下療法が有効だったという報告がありますが、治療法は確立されていません。
構音障害や嚥下障害、四肢麻痺が残ればリハビリテーションや対症療法を行っていくことになります。
中には無治療で軽快する例も報告されています。

再生医療との関わり

残念ながら橋中心髄鞘崩壊症に対する再生医療の研究はほとんど行われていません。
しかし、同じ中枢性の脱髄疾患である多発性硬化症では、幹細胞治療の研究が進んでいます
橋中心髄鞘崩壊症と多発性硬化症では髄鞘が破壊される機序が異なりますが、再生医療の今後の研究に期待したいです。
当院ではニューロテック®(幹細胞点滴)という再生医療を実施しています。
現在は脱髄性疾患は対象にしておらず、脳卒中や脊髄損傷の後遺症のみを対象としています。
幹細胞点滴を行いながら並行してリハビリを行う、神経再生医療×同時リハビリ™でできるだけ高い効果が望めるような取り組みもしています。

まとめ

この記事では橋中心髄鞘崩壊症について解説しました。
橋中心髄鞘崩壊症やその原因となる低ナトリウム血症は個人レベルではなかなか予防はしにくい疾患です。
また、治療法も確立されていないので、今後は再生医療も含めて更なる研究が望まれます。

Q&A

橋中心髄鞘崩壊とは?
橋中心髄鞘崩壊症とは、血液の浸透圧が急激に上昇することで細胞内が脱水になってしまい、髄鞘が崩壊してしまう疾患です。
主に低ナトリウム血症の補正が急速に行われたときに生じます。
症状には意識障害、四肢の感覚障害、運動障害、構音障害などがあります。

橋中心髄鞘崩壊症の症状は?
橋中心髄鞘崩壊症の症状には、意識障害、痙攣、四肢の麻痺、嚥下障害、構音障害などがあります。
意識障害や痙攣が先に出現し、改善したあとに構音障害や嚥下障害の症状が起きることが多いと報告されています。

<参照元>
診断に難渋した橋中心髄鞘崩壊症の一例:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/20/4/20_641/_pdf
ステロイドパルス療法が著効したと推測される橋中心髄鞘崩壊症の1例:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/96/10/96_2291/_pdf/-char/ja



貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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