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多発性硬化症と再生医療への期待

           

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多発性硬化症は中枢神経の様々な部位に発生し、視力や運動、感覚、認知機能や排尿などに障害を起こします。
ステロイドや疾患修飾薬という薬剤を使用し、進行の抑制を試みます。
造血幹細胞を使用した治療に注目が高まっており、今後再生医療の適用が期待されています。
多発性硬化症は、自己免疫が関わると考えられる、神経の難病です。
視力障害、運動障害、感覚障害、認知症、排尿障害など様々な症状が出現し、徐々に進行します。
炎症を抑制し免疫を調整する薬剤が投与されますが、根本的な治療とはなりえず、再生医療の適用が期待されている疾患の一つです。
まずは多発性硬化症の症状や治療について解説し、再生医療の現状と今後の期待について紹介していきます。

神経の難病である多発性硬化症とは

多発性硬化症は神経の難病の一つで、神経の信号伝達を行う「髄鞘(ずいしょう)」が脳や脊髄、視神経など中枢神経のいたるところで障害されしまう病気です。
神経の信号は、神経細胞をつなぐ軸索を通って伝えられますが、軸索を覆う髄鞘が正しく機能すると、情報が早く伝えられます。
多発性硬化症では髄鞘がはがれ落ちてしまう(脱髄といいます)ため、情報の伝達が遅くなったり届かなくなったりしてしまいます。

人口10万人あたり約14人に発症し、緯度が高い(北より)地域で有病率が高いという特徴があります。

自己免疫(自分の細胞を免疫が間違えて攻撃してしまう)が原因であるという説が有力で、根本的な治療方法はなく徐々に進行します。
平均発症年齢は32.3歳と若い年齢で発症するため、就労や結婚、出産などライフイベントに大きな影響を与える疾患です。

多発性硬化症の多彩な症状

難病症状
多発性硬化症は中枢神経の様々な部位に発生する疾患であるため、どこで発生するかによって多彩な症状を引き起こします。
ここでは代表的な症状を紹介します。

視力障害

視神経に脱髄が起こると、視力が低下したり、物が二重に見えたりするなどの症状が発生します。
初発症状として頻度が高いため、目の病気かと思っていたら神経の病気だった、というケースがあります。

運動障害、感覚障害

脊髄に病変が発生すると、手や足の運動障害、感覚障害が発生します。
発生する脊髄高位や場所により、足だけに症状がでるか、手足なのか、片側か両側かなど様々です。
運動障害による歩行障害は徐々に進行し、15-20年ほどで車椅子が必要になるケースが多いとされています。

認知症

大脳に脱髄が起こると、認知機能の低下や、精神症状を発症させることがあります。
認知機能の低下は発症初期から始まり、疾患の進行とともに増悪するとされています。

排尿障害

排尿に関わる膀胱の機能は、脊髄を通る自律神経により維持されています。
そのため脊髄に病変が発生すると、頻尿や尿もれ、尿閉など排尿障害の症状が発生します。

多発性硬化症に対する治療の進歩

多発性硬化症に対する治療は、発症時・急性悪化時に行う急性期治療、慢性期の進行抑制、後遺障害に対する対症療法の3つに分けられます。

急性期にはステロイドパルス療法(多量のステロイドを点滴投与する)により、炎症を抑える治療が試みられます。
症状が改善すれば急性期の治療を終了しますが、効果が不十分な場合や症状が重い場合には、血漿浄化療法(血液中の自己抗体などを取り除く)が追加で行われることがあります。

慢性期の進行抑制には、疾患修飾薬と呼ばれる薬剤が使用されます。
2010年時点では2種類の疾患修飾薬が使用可能でしたが、2020年時点では7種類と増えており、治療の進歩が目覚ましいことが分かります。
薬剤は様々な機序で多発性硬化症の進行を抑制しますが、中心となるのは自己の免疫を調整する作用が効果を発揮していると考えられています。
後遺障害に対する対症療法は、筋肉の緊張に対して筋弛緩薬、痛みに対する痛み止めの使用などが行われます。

幹細胞を使用した多発性硬化症治療

再生医療
多発性硬化症の新たな治療法として、自家造血幹細胞移植の認識が高まってきています。
化学療法で体内の白血球を減らし、あらかじめ保存しておいた自分の造血幹細胞を移植する治療方法です。
白血病ではドナーから提供された造血幹細胞を移植(骨髄移植)しますが、多発性硬化症の患者さんは骨髄に病気があるわけではないので、自分の細胞を使用することができます。

アメリカやイギリスなど国際的に行われた研究により、疾患修飾薬と比較して症状の進行が抑制できたという結果が示されています。
化学療法は患者さんの体に大きな負担がかかるため気軽にできる方法ではありませんが、疾患活動性が高い(進行が早い)多発性硬化症に対する治療として、有望であると考えられています。

多発性硬化症に対する再生医療の期待

再生医療とは「機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を積極的に利用して、その機能の再生をはかるもの」とされています。
前述の幹細胞を使用した多発性硬化症治療は、進行を抑制することで神経機能の再生を図る治療であるため、再生医療の一つであると捉えることができます。

iPS細胞の利用に代表される再生医療は、日本の国策として推進が強力に進められている分野であり、年々実績が積み重ねられています。
特に脳梗塞や脊髄損傷など、治らない神経障害に対する治療が積極的に行われ、その結果が出始めています。

難病である多発性硬化症に対して、再生医療がどこまで立ち向かうことができるのか。
その成果が期待されています。

まとめ

多発性硬化症の症状、治療、再生医療にかかる期待について解説しました。
ヒトの体には解決することのできていない難病が、他にも多数あります。
再生医療が解決の糸口となることが、期待されています。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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