幹細胞治療と脊髄損傷の治療戦略とは | 再生医療|脳梗塞・脊髄損傷の後遺症を幹細胞治療で改善|ニューロテックメディカル

幹細胞治療と脊髄損傷の治療戦略とは

           

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この記事を読んでわかること

脳梗塞と栄養摂取の関係
口以外からの栄養摂取法
脳梗塞後の胃ろうと寿命の関係


脊髄損傷は外傷や感染症などの疾患により生じ、時には完全麻痺という重篤な症状がありながらも、後遺症を改善させる治療法はこれまでありませんでした。
近年では幹細胞を用いた再生医療が注目され、研究が行われています。
この記事では幹細胞を用いた脊髄損傷の再生医療について解説します。

脊髄損傷の分類について

背骨、脊髄
脊髄は脊柱管の中にあり、脳の信号を各神経に伝える役割を担っています。
原因は交通事故、外傷、スポーツなど直接的に外力が加わるものもあれば、感染症や癌、大動脈疾患、自己免疫性疾患などの疾患によるものもあります。
日本ではもともと交通事故や労働災害が多かったのですが、近年では高齢者の転倒による脊髄損傷が増加しています。

損傷された高位による分類

脊髄は頚髄、胸髄、腰髄、仙髄からなり、このうちどこが障害を受けたかで分類されます。
基本的に損傷を受けた部位より下のレベルの症状が出ます。
頚髄は全部で8対からなります。
上位の頚髄損傷では横隔膜や肋間筋などの呼吸に関与する筋肉が働かなくなってしまうために死亡してしまう事もあります。
下位の頚髄損傷では部位により、上肢が全く動かせない例から部分的に動かせる場合もあります。
いずれにしても下肢は麻痺してしまいます。
胸髄、腰髄損傷では上肢に障害は見られず、下肢にのみ症状が出現します。

麻痺の程度による分類

脊髄損傷は症状から、完全麻痺と不完全麻痺に分類されます。
完全麻痺とは損傷を受けたレベル以下の運動、感覚の機能が完全に消失した状態です。
不完全麻痺とは、損傷を受けたレベル以下で、運動、感覚の何らかの機能が残存している状態です。
Frankel分類やASIAの機能障害尺度を用いて表現されます。
不完全麻痺の中でも、特徴的な病態として中心性脊髄損傷Brown Sequard症候群前脊髄動脈症候群などがあります。

Frankel分類

A (complete)
障害レベル以下の運動、感覚の完全麻痺。
B (sensory only)
障害レベル以下に感覚はある程度は残存しているが、運動は完全麻痺。
C (motor useless)
障害レベル以下に運動機能が残存しているが、実用的ではない。
D (motor usefull)
障害レベル以下に実用的な筋力が残っている。
E (recovery)
神経学的脱落なし。異常反射はあってもよい。

ASIAの機能障害尺度

  • A:S4.S5髄節の運動・感覚の完全麻痺。
  • B:障害レベル以下の運動の完全麻痺、感覚は障害レペル以下やS4-S5髄節で残存
  • C:障害レベル以下の運動機能はわずかに残存しているが、MMT3未満。
  • D:障害レベル以下の運動機能が残存し、筋力はMMT3以上昏
  • E:運動・感覚機能は正常。

幹細胞治療による脊髄損傷後遺症改善の可能性

脊髄損傷の病態にはいくつかの段階があります。
受傷した直後の一次損傷は外傷などの影響による機械的な損傷です。
圧迫、剪断、伸長、出血などで起きます。
一次損傷では骨や周囲軟部組織の物理的な影響も大きく、浮腫によりさらに脊髄の障害は増悪します。
続いて、虚血、炎症などにより二次損傷が起き、神経細胞がダメージを受けます。
その後の慢性期では瘢痕組織が周囲にできることが特徴です。
臨床的に一次損傷時に対応することが難しいため、再生医療・幹細胞治療ではこの二次損傷と慢性期の病態をターゲットにしています。
これまでは脳と脊髄からなる中枢神経は一度障害されると回復されることはないとされてきました。
しかし、近年では幹細胞の投与などにより神経を保護できる体内環境が整えば、中枢神経も再生することが明らかとなっています。

再生医療による幹細胞治療は後遺症改善に希望できるのか

脊髄損傷に対する再生医療、特に骨髄由来間葉系幹細胞についての研究を紹介します。

Mendonça, Marcus Vinícius Pinheiro et al. “Safety and neurological assessments after autologous transplantation of bone marrow mesenchymal stem cells in subjects with chronic spinal cord injury.” Stem cell research & therapy vol. 5,6 126. 17 Nov. 2014

この研究はASIAの機能障害尺度Aの18-65歳の男女14人を対象に、骨髄由来間葉系幹細胞による治療が行われました。
全ての被験者が知覚のレベルが改善し、8人の被験者では股関節屈曲筋力の改善を認めました。7人の被験者は仙骨機能が改善し、ASIAの機能尺度ではBもしくはCへと改善しました。
いずれの被験者にも重篤な有害事象は認められませんでした。

まとめ

今までの脊髄損傷の診療では、後遺症は改善せずに以下に合併症を減らして安全に生活していくかに焦点が当てられていました。
しかし、再生医療の進歩により、治癒・改善が目指せるようになっています。
当院でもニューロテック®という、脊髄損傷の後遺症に対する骨髄由来間葉系幹細胞点滴を行っています。
再生医療は単独では効果が十分に発揮されず、リハビリテーションの併用が必要と言われています。
当院では時にrTMSなどの先進機器を用いながらリハビリテーションを行う、神経再生医療×同時リハビリ™で、少しでも後遺症が軽減できるように取り組んでいます。

よくあるご質問

脊髄損傷の再生治療とは?
脊髄損傷の再生医療は、脊髄そのものを回復させることにより後遺症の軽減を目指す治療法です。何らかの形で取り出した細胞を脊髄に直接移植する治療と、幹細胞(自家骨髄間葉系幹細胞やiPS細胞)を静脈に投与する方法があります。

幹細胞の再生治療とは?
幹細胞とは様々な細胞に分化することができる細胞であり、失われた臓器、機能を取り戻す再生医療の分野で用いられます。幹細胞の種類は脂肪や骨髄などの自家組織から培養する間葉系幹細胞やiPS細胞などがあります。

<参照元>
Stem Cells Therapy for Spinal Cord Injury: An Overview of Clinical Trials :https://www.mdpi.com/1422-0067/21/2/659
Safety and neurological assessments after autologous transplantation of bone marrow mesenchymal stem cells in subjects with chronic spinal cord injury :https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4445989/

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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