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血管性認知症の症状や診断と治療について

           

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血管性認知症は脳血管障害が原因となる認知症です。
典型的には階段状の認知機能低下があり、手足の麻痺や歩行障害、言語や嚥下の障害、失禁などの合併症が多いことが特徴です。
この記事では血管性認知症の症状、病態、診断、治療について解説します。

血管性認知症とは?

認知症
血管性認知症とは脳の血管が障害されることで生じる認知症です。
脳には全体に樹木のように細かく、広く血管が存在しており、心臓から出た1/5〜1/6もの血液が流れ込んでいます。
血液から栄養や酸素が供給されて生命の維持や運動や発語などのコントロールを行っています。
これが脳梗塞(血管が詰まる)や脳出血(血管が破れる)などで障害を受けてしまうと様々な症状が出ることとなり、その中の一つに認知機能低下があります。
これが血管性認知症です。
日本では認知症患者は人口の10%程度だと言われています。
血管性認知症は認知症全体の約20%を占め、アルツハイマー型認知症(約65%)に次いで2番目に多い疾患です。
男性の方が女性より約2倍かかりやすいと報告されています。

血管性認知症の症状

大きく認知症としての症状と脳血管障害として認知機能以外の症状(合併症)に分けられます。
また、血管が障害されることで起きるので、階段状に症状が悪くなっていくことが特徴です。
血管性認知症も他の認知症と同様に以下の症状が出ます。

  • 全般性注意障害:日常の生活の中では音や光、人や物など様々な刺激があり、これに向けて適切に注意を向けることが苦手になります。
    複雑なことを理解できなかったり、刺激に対する反応が鈍くなったりします。
  • 遂行機能障害:目的を持って、計画を立てて適切に物事を行う能力が衰えてしまいます。
    状況に応じて優先順位を立てられない、トラブルに対応できない、手順を一つ一つ言われなければ行動することができないなどの症状があります。
  • 見当識障害:人、場所、時間に対する認識ができなくなってしまいます。
    家族や友人がだれかわからない、自分が今いるところがわからない、今が何年何月何日かわからないといった症状です。
  • 記憶障害:記憶は出来事などを覚えて、それを脳の中に貯めて、思い出すの一連を指し、認知症ではこの全てが障害されます。
    新しいことを覚えることができない、すぐに忘れてしまう、物の名前が出てこないなどがあります。
  • 行動、心理症状(BPSD):周辺症状とも呼ばれるもので、過活動の症状(昼夜逆転、徘徊、大声を出す、興奮状態、性的に逸脱した行動をとる)と非活動の症状(うつ状態、意欲低下、食事摂取量低下)が現れます。

また、脳血管障害としての症状(合併症)としては運動障害(片麻痺:体の左右一方の手足が動かしにくくなる、小脳失調:手を動かそうとしても上手く制御できない)、歩行障害(麻痺で歩きにくい、転倒しやすい)、呂律が回らない、尿を膀胱に貯められず漏れてしまう、尿をうまく排出できないなどが多いです。

血管性認知症の診断

認知症が疑われた場合、まず他の原因がないかの精査が重要となります。
例えば感染症などで反応が悪くなっている(意識障害)、薬剤の影響でぼんやりしている(薬剤性)、認知機能は正常で意欲が沸かない(うつ)など、認知機能が本当に低下しているのかを確認します。
次に認知機能が低下していると判断された場合、内科的疾患(甲状腺機能低下症、梅毒、ビタミン欠乏など)や外科的疾患(脳腫瘍、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫など)がないか検査をします。
これらの疾患が除外されて初めてよく言われる「認知症」ということになります。
血管性認知症はCTやMRIでの検査で、脳梗塞などの所見があり、認知機能の低下や合併症がその部位に一致していることで診断します。
しかし、アルツハイマー型認知症に脳血管障害が合併した例もあるため簡単に診断できない場合もあります。

血管性認知症のリスクと予防法は

血管性認知症は加齢、運動不足、脳卒中の罹患歴、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、心房細動(脈がばらばらになる不整脈)、喫煙がリスクとして知られています。脳卒中の危険因子と非常によく似ています。
血管性認知症の予防として血圧コントロール(減塩食や薬剤内服)、禁煙、適度な運動、肥満予防が推奨されています。
心房細動に対し血液が固まりにくくなる抗凝固薬は血管性認知症の予防になりますが、血管性認知症の治療に使われる抗血小板薬を内服しても予防できないことがわかっています。

血管性認知症の治療

血管性認知症も他の認知症の治療と同様の薬剤(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン)で効果が認められています。
また、心房細動がある場合は抗凝固薬が推奨され、心房細動を指摘されていない場合は抗血小板薬が検討されます。
近年、認知症の治療として再生医療が期待されています。
特に血管性認知症は脳卒中と同様の機序で症状が現れるという特徴があり、期待も大きいです。
当院では脳卒中後遺症の方に対し、再生医療×同時リハビリ(ニューロテック®)を行っております。
リハビリと併用することにより、より高い効果を目指しています。

まとめ

この記事では血管性認知症について解説しました。
ただの加齢による変化だと思っていても、認知症や場合によっては認知症になる前段階(未病状態)、他の病気が隠れていることがあります。
認知症かなと思ったら医療機関の受診を検討しましょう。
当院で行っている、脳・身体機能を再度高める再生医療×同時リハビリ(ニューロテック®)も、新たな選択肢になると思います。

Q&A

血管性認知症のリハビリは?
通常の認知症と同様、運動療法や音楽療法などが行われます。アルツハイマー型認知症と比較して歩行障害、転倒、嚥下障害が合併することが多いので、脳血管障害と認知症の両方を意識したリハビリを行う必要があります。

脳血管性認知症 何年生きる?
発症後の平均生存期間は男性5. 1年、女性は6. 7年であったという報告があります。生存期間は認知症のない人と比較しても短く、更にアルツハイマー型認知症と比較しても短いという報告が多いです。

あわせて読みたい記事:血管性認知症の予防と治療
<参照元>
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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