脳卒中に対する幹細胞治療について

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日本人では約11万人の方が脳血管障害(脳卒中)で亡くなっています。これは、死亡原因の第3位です。
しかし、亡くなっている人の10倍近い人が脳卒中を発症しており、発症後に手足が動かしにくいなど後遺症に苦しんでいます。
脳細胞は一度ダメージを受けて機能を失うと、基本的に復活することはありません。
後遺症に苦しむ方は多少症状が改善することはあっても、通常はその後長い期間リハビリが必要となります。
しかし、最近幹細胞治療を行うことで、脳卒中後の症状が改善することが分かってきています。
そこで今回の記事では、脳卒中における幹細胞治療についてご説明いたします。

まず脳卒中とは何なのか?

脳卒中とは
まず、脳卒中とはどのような病気なのか、簡単にご説明します。

脳血管が閉塞する|脳梗塞

動脈硬化やコレステロールの蓄積があって細くなっている脳血管の部位に、血液の塊(血栓)が詰まることによって発生することが一般的です。
その結果、脳血管に血液が流れなくなり、血管周囲の脳細胞が死滅してしまいます。

脳血管が裂ける|脳出血・くも膜下出血

動脈硬化の結果、脳血管がもろくなっていたり、高血圧の影響で動脈の壁の一部が風船のように膨らんだ状態(動脈瘤)になっていたりする場合、脳血管が裂けて出血することがあります。
その結果、血管周囲の脳細胞が死滅し、出血によって脳内の圧が上昇して、広い範囲の脳細胞が影響を受けることになります。

脳卒中に対する再生医療(幹細胞治療)とは?

幹細胞治療とは
次に、脳卒中に対しなぜ再生医療を使用するのかについて、ご説明します。

再生医療(幹細胞治療)とは?

再生医療とは、病気や怪我によって傷つき、機能を失った臓器の機能を、科学の力で再び機能できるようにする医療です。
再生医療には、いろんなタイプの治療法が考えられていますが、現在注目されているのがさまざまな細胞の元になる細胞(幹細胞)を利用した幹細胞治療です。
幹細胞は、あらゆる細胞に分化する能力を持つiPS細胞やES細胞と、限られた種類の細胞に分化する能力を持つ間葉系幹細胞に分けられます。
iPS細胞やES細胞を用いた治療は、実用化に向けて研究が進んでいますが、まだ広く利用できる段階ではありません。
他方、間葉系幹細胞を用いた幹細胞治療は、徐々に実用化が進んでいます。

なぜ脳卒中の治療に幹細胞治療を使用するのか?

脳卒中では、脳細胞が一度死滅してしまうと、その細胞が復活することはありません。
しかし、脳細胞や脳血管に分化する細胞を利用することで、失われた機能を取り戻すことができる可能性があります。
そこで脳卒中発症後にリハビリが必要な方に対し、特に間葉系幹細胞を用いた幹細胞治療が注目されています。

脳卒中に対する再生医療(幹細胞治療)|期待できる効果

では幹細胞治療は、脳卒中に対してどの程度効果があるのかについて、ご説明します。

期待できる機能回復

脳卒中に対する幹細胞治療では、並行してリハビリも行います。
というよりも、リハビリは必須です。
脳卒中に対する幹細胞治療は魔法の治療ではありません。
単に、リハビリをするための下地作りと言って良いと思います。
一旦、死滅した脳細胞が再生することは無いとお話ししましたが、実は我々には自分を治す力が備わっており、死滅した周囲の細胞が新しい神経回路を作る作用があります。そして、幹細胞治療が、その自分を治す力を高める環境作りとなり、神経機能の回復に有効であることが分かってきました。
それにより失われた体の機能が回復するだけでなく、特に動かすことができなかった関節が動かせるようになることで痛みが軽減されることも期待できます。
また、脳血管の再生も進むことから脳卒中の再発予防の効果も期待されます。

効果が出るまで必要とする期間

通常治療は3〜4週間の間隔を開けて数回行います。
したがって治療が終了するまで数ヶ月以上が必要です。
脳卒中を起こしてからどの程度時間が経っているか、また脳卒中の範囲などによって個人差がありますが、通常は治療を開始してから1年近くはリハビリも継続し、経過をみていただく必要があります。

脳卒中に対する再生医療(幹細胞治療)|治療方法(治療ステップ)

治療の流れ
次に、脳卒中に対する具体的な治療ステップについてご説明します。

事前診察・カウンセリング

まず診察を行い、幹細胞治療を受けるメリットがあるのか、あるいは治療を受けることができない病気がないかなど、確認を行います。

細胞採取

幹細胞治療を受けることが決まると、まずご自身の細胞の採取を行います。
脳卒中に対する治療では、脂肪や骨髄の間葉系幹細胞を利用しています。
採取は、通常は1時間程度で終わります。
全て局所麻酔で実施しますので、採取終特に問題がなければ、その日のうちに帰宅することができます。

培養

採取した脂肪や骨髄の組織は、細胞培養加工施設に送られ、組織のなかから幹細胞を分離して培養します。
通常は採取してから4〜6週間が経過すれば、治療に必要となる幹細胞を得ることが可能になります。
なお培養した幹細胞は、実際に使用するときまで保存しておきます。

幹細胞投与

幹細胞の状態を確認後、、点滴で幹細胞を投与します。
この際、幹細胞が少しでも損傷した部位に集積する様に、障害のある部位を動かす再生医療に合ったリハビリを当院では併用する様にしています。
点滴は1時間ほどで終了しますので、終了後は帰宅することができます。
また投与は通常数回に分けて行ないます。

リハビリ・効果確認

幹細胞中から、再生医療に合ったリハビリを併用していただきます。
定期的な評価、リハビリ、自宅リハビリメニューを実施してもらいます。
その後は定期的に診察を行い、幹細胞治療の効果を確認します。

脳卒中に対する再生医療|治療方法(体の安全性や負担)

では、脳卒中に対して幹細胞治療を行うことが、どの程度負担になるのかについてご説明します。

体への負担

間葉系幹細胞を用いる治療では、ご自身から細胞の脂肪や骨髄から組織や細胞を採取します。
これらは局所麻酔でできるものですので、多少痛みはありますが大きな負担はありません。
皮下出血などが生じることがありますが、通常に自然に吸収されていきます。
また点滴で細胞を投与する際も、1時間程度で終わるもので大きな負担はありません。

安全性

間葉系幹細胞を用いる治療では、ご自身の細胞を利用します。
したがって、他人の細胞を用いることで起こりうる拒絶反応や感染症の危険性は回避できます。
幹細胞を増やすために細胞培養加工施設で培養しますが、この施設も徹底した安全管理が行われていますので、トラブルが発生する可能性は低いと考えてよいでしょう。
なお、現在のところ必要な準備をされた上での脳卒中に対する幹細胞治療による大きな合併症は報告されていません。

脳卒中に対する再生医療(幹細胞治療)|費用

治療コスト
次に脳卒中に対する幹細胞治療において、どの程度の費用が発生しているのかについて、解説します。

治療にかかる費用

幹細胞治療は、一部を除いて健康保険を利用することができません。
つまり自費での診療となります。
細胞の採取、培養、点滴など、一連の治療にかかる費用がおよそ150万円~400万円程度になっています。

治療以外の費用

治療以外にも、カウンセリングや事前の検査に費用が発生し、通常2万円前後が必要となります。

まとめ

脳卒中に対する幹細胞治療に関する情報を提供しました。
かなり実用化が進んでいることは事実ですが、まだ保険診療が認められていないなど改善されるべきところはあります。
しかしさらに実用化が進み、今後10年もすれば、当たり前の診療となっているかもしれません。


脳卒中や脊髄損傷など再生医療に関する情報はこちらでもご覧頂けます。
脳卒中ラボ

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