脳卒中の後遺症としての片麻痺と再生医療の効果

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脳卒中の片麻痺は、片側の脳(運動野)が障害されることで発症します。
障害された神経を元通りに回復する治療として、再生医療が注目されています。
幹細胞、および幹細胞が分泌する物質(サイトカイン)を利用した再生医療は臨床研究が積み重ねられ、民間のクリニックでも実施可能な段階へと進んでいます。

脳卒中の片麻痺はなぜ治らない?

脳卒中の後遺症
脳梗塞などの脳卒中の後に残る症状として、代表的なものに片麻痺があります。
片麻痺とは、体の片側に麻痺の症状が残るもので、運動の障害が生じます。
脳卒中後の生活の質に大きく関わる片麻痺について、基本的なことから学んでいきましょう。

脳梗塞や脳出血で片麻痺が発症するメカニズム

脳卒中を起こした後の片麻痺は、なぜ片側にだけ発症するのでしょうか?
それは、脳は場所によって異なる機能を担当しているからなのです。
脳は大きく分けると大脳、小脳、脳幹に分けることができます。
小脳は平衡感覚やバランスなどの運動調節機能を主に担当しており、脳幹は呼吸、循環など生命の維持に関わる活動を支配し、大脳と体の間で情報を中継する機能を担当しています。
最も発達しているのが大脳で、体を動かすよう運動を命じ、記憶や認知、感情など人間らしくあるための高次機能を担当しています。
大脳の中には、運動野と呼ばれる部分があり、手足を動かす命令はここから発せられます。
左右の大脳それぞれに運動野があり、右の運動野からは左側の手足を動かす指令が、左の運動野からは右側の手足を動かす指令が出されます。
脳梗塞や脳出血では、脳全体が侵されることは少なく、脳の一部が障害され症状が発生します。
障害部位が運動野に及ぶと麻痺が発生しますが、両側の運動野が同時に障害されるほどの重症では生命を維持することすら難しいことが多く、一命をとりとめたあとに後遺症として残る麻痺症状は片側、つまり片麻痺であることが多いのです。
病状により程度はさまざまで、細かな動きができないといった軽度なものから、腕や足が固まってしまい全く動かすことができないというような、重い症状となることもあります。

片麻痺は一生治らない

脳梗塞や脳出血により発症した片麻痺は、現時点では元通りに戻す方法はありません。
脳や脊髄など、神経の機能は一度障害が完成してしまうと、元の形に再生することはないからです。
障害を受けた神経は早い時期には一定の回復能力を見せるため、脳卒中の発症後もある程度までは運動能力が回復します。
しかしその回復能力には限界があり、一生残る後遺症となってしまうのです。
脳梗塞や脳卒中の治療は早い段階で原因を取り除くことで神経の障害を最小限にすること、障害を受けてしまった場合は残された能力で生活をいかに送るかといった点に注力され、「障害を回復させる治療」は未だ一般的とはなっていません。

脳卒中の後遺症に対する再生医療

サイトカイン上清液
脳卒中により残ってしまった後遺症、障害を回復させる治療として大きな注目を集めるのが再生医療です。
近年夢のような治療として語られる機会も多い再生医療ですが、その進歩は目覚ましく、いよいよ私達の手の届くところまで来ています。
脳卒中の後遺症に対する再生医療について紹介します。

幹細胞を使用した再生医療

再生医療の手法として現在の主流は、幹細胞を使用した幹細胞治療です。
幹細胞とは人の体にあるさまざまな細胞になることのできる能力をもった細胞のことで、幹細胞そのもの、もしくは幹細胞から目的の細胞を作成し病変へ移植するといった手法で治療が行われています。
脳卒中に対する幹細胞治療は、世界中で研究が行われ、2019年時点では30を超える研究が行われ、現在も臨床研究が進行中です。
日本では札幌医大や国立循環器病センター、北海道大学などで臨床研究が行われています。
特に間葉系幹細胞を静脈投与(点滴から投与する)する手法は安全性が高く、上記のような大病院だけではなく、民間のクリニックでも治療を受けることができるようになってきています。

幹細胞が後遺症に効く理由

幹細胞治療が脳卒中の後遺症に効く理由として、動物実験などから二つの機序が推測されています。
一つ目は、移植した幹細胞が神経細胞(に近い細胞)に変化し、体内で機能するようになるという機序です。
移植された幹細胞は損傷部位に移動し、そこの環境に適した形で成長し機能するようになります。
実際に、神経細胞のネットワークを再構築していることが示された研究もあります。
二つ目は、幹細胞が増殖・分化する時に分泌されるさまざまな物質が、脳を保護し修復させるという機序です。
幹細胞が分泌する物質は成長因子や栄養因子などのサイトカインであり、これらの物質が存在すると障害された細胞の生存率が改善することや、脳の神経細胞を活性化させることが分かっています。

幹細胞を使用しない、サイトカイン上清液を使用した再生医療

幹細胞治療が後遺症に効く二つの機序のうち、細胞そのものよりも二つ目の「幹細胞が分泌する物質=サイトカイン」による効果が大きいという考えがあります。
そこで、幹細胞を培養した時に得られる上澄み液(サイトカイン上清液)を治療に使用する再生医療があります。
細胞を使用しないため拒絶反応などの心配がなく、他人のものでも安心して使用できるというメリットがあります。
※上記の画像は実際に当院で処方するサイトカイン上清液となります。

まとめ

脳卒中の後遺症としての片麻痺、それに対する新たな治療として再生医療の手法について紹介しました。
幹細胞治療は現在保険適応ではなく、自費での治療となりますが、研究実績、治療実績が着実に積み重ねられています。
脳卒中に対する治療は新たなステージに入ってきていると言えるでしょう。


脳卒中や脊髄損傷など再生医療に関する情報はこちらでもご覧頂けます。
脳卒中ラボ


貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表【 Dr.貴宝院 永稔 】
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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