脊髄損傷に伴う恐ろしい麻痺性イレウス | 後遺症・神経障害を幹細胞点滴と幹細胞上清液点鼻×専用リハビリ治療

脊髄損傷に伴う恐ろしい麻痺性イレウス

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脊髄は上肢や下肢の運動、感覚のみならず、排尿や排泄、血圧、脈拍など人体にとって様々な、重要な機能を調節している器官です。
脊髄損傷の中でも上位の脊髄を損傷した場合は、これらの生理機能が障害される可能性があり、その中の1つに麻痺性イレウスがあります。
そこで今回は、脊髄損傷における麻痺性イレウスに関して詳しく解説していきます。

脊髄損傷と自律神経の関係とは?

交感神経副交感神経
脊髄には運動を司る運動神経や感覚を司る感覚神経、さらに血圧や脈拍、体温や睡眠、排尿や排便など多くの生理機能を司る自律神経が走行しており、交通外傷や転倒によって脊髄が損傷されると、多くの神経症状が出現します。
中でも交感神経と副交感神経の総称である自律神経は、2つの神経が互いに作用し合うことで多くの臓器の機能調節を行なっています。
例えば、交感神経の活性化により多くの血管平滑筋が収縮し血圧を上昇させます。
逆に、副交感神経が活性化すると多くの血管平滑筋が弛緩し血圧を低下させます。
交感神経が活性化すると、基本的に人体はアクティブモードに切り替わるため、心臓は強く早く鼓動するようになり、睡眠相は覚醒のフェーズに入り、エネルギー確保のために血糖値を上昇させ、より多くのものが視界に入るように瞳孔は散大します。
腸管などの臓器への血流を抑制する代わりに骨格筋への血流を増加させ、体がたくさん動けるようにシフトチェンジします。
副交感神経が活性化すると、基本的に人体は穏やかなモードに切り替わるため、心臓はゆっくりと鼓動し、睡眠相は睡眠のフェーズに入り、緩やかに血糖値は低下し、光を目の中に入れないように瞳孔は縮瞳します。
このように多くの機能を調整しているわけですが、特に腹部臓器は、胸髄以下の脊髄から分岐する自律神経によってその機能を支配されているため、胸髄より上のレベルでの脊髄損傷では自律神経の機能の多くが障害され、腹部臓器の運動にも多大なる影響が出てしまうのです。
では具体的にどのように障害されてしまうのでしょうか?

脊髄損傷による腹部臓器への影響

交感神経は第1胸髄から腰髄、仙髄に至るまで、頸髄よりも下のレベルの全ての脊髄から分岐し、胃、十二指腸、小腸、大腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸などの腸管や、副腎などの臓器の機能をコントロールしています。
それに対し副交感神経は第2-4仙髄から分岐し、骨盤内臓神経として横行結腸遠位部から下行結腸、S状結腸、直腸の機能をコントロールしています。
つまり、上位胸髄や頸髄を損傷することで、胃から直腸までの全交感神経機能と、横行結腸遠位部以下の副交感神経機能が失われてしまうことになります。
基本的に、正常な腸管の蠕動運動とは腸管平滑筋の収縮と弛緩が繰り返されることで得られており、交感神経の活性化により腸管平滑筋は弛緩し、副交感神経の活性化により腸管平滑筋は収縮しています。
しかし、脊髄損傷によって横行結腸遠位部以下の下部消化管は副交感神経の刺激を得られなくなり弛緩してしまうため、正常な蠕動運動が起こらず難治性の便秘や腸閉塞(イレウス)を起こします。
ここでのイレウスは、腸管の蠕動が麻痺することで引き起こるイレウスのため、麻痺性イレウスと言います。
他にも、腸管内が腫瘍などで狭窄、閉塞する単純性イレウス、腸管が捻れたり血流が途絶えることで腸管が壊死してしまう絞扼性イレウスなどが挙げられます。
どのタイプのイレウスでも、腸管の内容物が肛門側に進まなくなってしまうため、腸管の内圧が上昇し腹痛や嘔気、嘔吐を引き起こし、逆に排便は得られなくなります。
実際には麻痺性イレウスのリスクが高いのは比較的急性期であり、ある程度時間が経過すると腸管の動きは正常化すると言われています。
しかし厄介なことに、第7胸髄以上のレベルの脊髄損傷患者では腹部の感覚も障害されているため、イレウスによる腹痛を自覚しにくく、重症化してから発見されることも少なくないため、死亡率が高い傾向にあります。
またイレウスによって膨らんだ腸管は横隔膜を胸側に押し上げてしまい、無気肺や肺炎などの呼吸器合併症が起こりやすくなるため、消化器症状以外にも注意を払う必要があります。
また、胃では交感神経の活性化により胃酸分泌が抑制され、副交感神経の活性化により胃酸が分泌されますが、脊髄損傷では胃に分岐する交感神経が障害されるため、胃酸分泌が亢進してしまい胃潰瘍や胃穿孔、十二指腸潰瘍のリスクも高まってしまいます。
腸管に穴が空くと内容物が腹腔に流出し、腹膜炎と呼ばれる命に関わる病気へ進行するため注意が必要です。

まとめ

今回は脊髄損傷における麻痺性イレウスについて詳しく解説しました。
麻痺性イレウスがおこる原因は、脊髄内を走行する交感神経や副交感神経などの自律神経の機能に支障をきたすからであり、特に損傷直後の急性期は消化器症状、呼吸器症状など多方面で注意が必要です。
自律神経以外に腹壁の感覚神経も障害されるため、自覚症状に乏しく発見が遅れやすいという点でも注意が必要です。
しかし、近年では再生医学の進歩が目覚ましく、損傷した神経細胞を修復できる可能性が高まっています。
本来であれば一度損傷した神経細胞の機能や形態は回復することがないと考えられてきましたが、自身の骨髄内の自己幹細胞を取り出し、培養して増殖させたものを体に戻すことで損傷した細胞を再構築する再生医療によって、正常な蠕動運動や腹壁の感覚を取り戻せる可能性があり、今非常に注目されています。

あわせて読みたい記事:脊髄損傷と交感神経遮断について

貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表 Dr.貴宝院 永稔

大阪医科薬科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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