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脳出血の後遺症は回復するのか?

           

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日本では脳出血の脳卒中全体に占める割合が欧米の3〜4倍と言われており、脳出血は日本人の国民病ともいえる病気です。
漬け物や味噌汁など、日本元来の塩分の多い食事が高血圧の原因となり、脳出血が多い原因と考えられています。
現在では血圧に関する薬剤の進歩や食事の欧米化に伴い発生数自体は減少傾向にあります。
しかし、一度発生すると多くの場合後遺症を伴う怖い病気です。
今日は、脳出血について解説します。

脳出血?脳内出血?くも膜下出血?

それぞれの違いは脳の病気には様々な用語が使われます。
一度整理しましょう。
脳卒中とは、急性期脳血管障害のことです。
脳には血管がたくさんありますが、そこに何らかの異常が起きて脳が障害されます。
脳の血管が破れる場合、詰まってしまう場合に起こる病気の総称が脳卒中です。
脳の血管が詰まってしまうのが脳梗塞です。
それに対して血管が破れる場合を出血性脳卒中と呼び、中でも脳の内部の血管が破れて出血するものが脳出血脳の表面にある血管(動脈瘤)から出血するものがくも膜下出血です。
脳出血は、出血部位をはっきりさせるため脳内出血とすることもありますし、脳溢血と呼ばれることもあります。
脳の内部は様々な機能を持った場所に分かれており、それぞれ名前が決まっています。
脳出血の場合、出血した場所により名前をつけることがあります。
出血する頻度が高いのは「被殻」という場所と「視床」という場所です。
それらの場所で出血した場合、それぞれ被殻出血、視床出血と呼ばれます。

脳出血の診断はどんな検査が必要?

脳出血
脳出血は、特徴的な症状からその可能性を考え、検査をして診断されます。
ここでは診断に必要な症状、検査について解説していきます。

脳出血の症状

脳出血の症状は出血を起こした場所や出血の量によって異なり、多彩な症状が見られます。
多くの場合、突然頭痛を感じ吐き気や嘔吐を自覚します。
続いて手や足の麻痺、ろれつが回らないなどの症状がでることがありますが、ポイントはこれらの症状が「突然に」起こることです。
多くの場合、「何時何分にこの症状が出たと特定できるような発生の仕方をします。
また症状が刻々と変化していくのも特徴の一つです。
症状が急速に悪化する場合には、一刻も早い治療が必要であり急を要します。
出血が最も起こりやすいのは被殻です。
脳出血の約40-50%を占めています。
被殻は大脳の中央部に左右1対あるもので、被殻出血を起こすと頭痛や片麻痺(右や左半身の麻痺)、感覚障害、失語症や構音障害などの症状を起こします。
次に起こりやすいのが視床です。
脳出血の約30%といわれています。
視床は触覚や痛覚など様々な感覚を集約する役割を持っており、視床出血を起こすと感覚障害や半身の激しい痛みを起こすことがあります。
他にも皮質下出血、小脳出血、橋出血などがあり様々な症状を呈します。
特に「橋」は生命を維持する機能を司る「脳幹」に含まれる部位であるため、橋出血を起こすと多くの場合重症となります。
意識障害や四肢の麻痺、昏睡状態となり命を落とすこともあります。

脳出血の診断に必要な検査

脳の内部で出血している場合、CTを撮ると出血が白く写るため診断がつきます。
脳梗塞と症状が似ているため、脳出血なのかどちらかを判別するためにはMRI検査が有効です。
MRIでは血管の形に異常がないかを調べることもできます。
状況によっては出血が続いているかどうかを判断するために血管造影検査を行います。
ただし、実際の医療現場では頭痛やめまいなどの症状は脳出血だけに見られる症状ではないため、CTやMRIなど頭の画像検査だけではなく、採血検査や心電図などの一般的な検査も行われます。

脳出血の治療とは?手術はどんな時に適応される?

手術の様子
脳出血を疑った場合、とにかくできるだけ早く救急車を呼びましょう。
症状が軽くても時間が経つとともに症状が悪化することがありますし、脳卒中専門のチームにより適切な初期治療が行われることで経過が大きく変わってきます。
救急車を呼んだら、嘔吐に備えて横向きにしてあげて救急隊の到着を待ちましょう。
脳出血の診断がついたら即入院し、治療を開始します。
脳出血の治療には、薬物治療と手術治療があります。
脳出血の原因の多くは高血圧です。
入院したらまずベッドで安静にして、血圧を下げる薬剤を使用し、それ以上出血が起こらないように血圧をコントロールします。
症状の変化や画像検査の結果から脳の腫れが強いと判断された場合には、脳の腫れをとる薬剤が使用されます。
意識や呼吸状態が不安定になるような場合には、人工呼吸器を使用するなど集中的な治療が必要となります。
このような様々な治療を行っても出血がコントロールできずに症状が悪化する場合、もしくは初めの時点で出血が多く薬物治療では効果が期待できない場合に手術が行われます。
手術は、頭の骨を開けて脳にたまった血液の塊を取り除くことで脳の圧迫を減らす方法です。
症状がそれほど重くない場合などには、頭の骨に小さな穴をあけてそこから内視鏡を入れて血液を取り除く手術が行われることもあります。
手術は残念ながら完治する方法ではありません。
手術に至るような場合、脳の損傷はすでに広がっていることが多いからです。
このような場合には後遺症が残ってしまうことが多くなります。

脳出血の後遺症

脳出血の後遺症
つらい痛みやしびれ、それだけではありません
脳卒中は、日本の要介護原因(日常生活に介助を必要とする)第一位です。
日常生活に介助を必要とする、というのがどのようなことかイメージできるでしょうか。
ご家族の介護を経験されたことがある方なら分かるかもしれません。
ご本人はもちろん、介護を担当する方にも大きな負担がかかることになります。
脳出血の後遺症には様々な程度があります。
意識や呼吸といった生命を維持するのに必須である機能にも、障害が発生する可能性があります。
一命をとりとめたとしても、人工呼吸器を外すことができず栄養は点滴や胃管、胃瘻(胃に直接注入する管)からしか摂ることができないというような、非常に重い後遺症が残ることも少なくありません。

意識ははっきりして食事をとることができるような場合でも、例えば半身麻痺で移動が困難になる場合には車いす等が必要となります。
日本の要介護原因第3位は骨折・転倒ですが、実は脳卒中の後遺症により転倒するというケースも多く、日常生活の中で常に注意が必要となります。
排泄の介助も大きな問題です。
また、脳には当然運動だけではなく言語の理解や状況の判断力、感情のコントロールなど高度な機能が備わっています。
脳の機能が障害されると言語の障害(失語症)、感情のコントロールができずに突然怒り出してしまうなどで、社会生活への復帰が難しくなるケースもあります。
さらには、脳血管性認知症といわれるような脳卒中の後遺症としての認知症状も問題となります。(認知症は要介護原因第2位です)
幸いにして社会復帰を果たした場合でも、後遺症とは付き合っていかなければなりません。
感覚障害からくる痛みやしびれ、痙縮と呼ばれる手足のつっぱりは日常生活に直接的に関わってきます。

脳出血治療の今後と現在行われている治験

カテーテル
様々な後遺症を残してしまう脳出血。
後遺症を残さないためには、発症直後の急性期に脳のダメージをできるだけ少なくする必要があります。
同じ脳卒中の一つである脳梗塞では、早期に血流を再開するための作戦が複数あります。
血管を詰まらせている血栓を溶かすお薬や、カテーテル治療により詰まりを治す治療です。
それらにより治療成績は劇的に向上しました。
しかし、脳出血に対して直接的に出血を止めるような方法は現在のところ一般的ではありません。
現在行われている治験(臨床研究)も無いようです。
出血の増加を抑えるための血圧コントロールに関する研究や、後遺症をできるだけ少なくするためのリハビリテーションに関してなど、間接的に作用するような方面からの研究が進んでいます。
一度死んでしまった脳の細胞は元に戻ることはなく、後遺症として残存します。
これは100年以上も前から信じられている、厳然たる事実です。
その常識を覆すかもしれないのが「再生医療」です。
神経の元となる細胞を移植する、神経細胞の増殖を促す成分を注入するなどして脳の再生を試みます。
脳梗塞の患者さんに対しては広く再生医療に関する研究が行われ、一般のクリニックでも実施できる段階になっています。
しかし、脳出血に対しては話が別で現時点で実施できる状況にはありません。
今日のタイトルである、「脳出血の後遺症は回復するのか」という問いに対しては、「現時点では難しい」と言わざるを得ません。
しかし、人類はこれまでにも治療不可能と思われていた病気を数多く克服してきました。
脳の神経細胞再生というテーマに対しても、脳梗塞に対する再生医療の治療実績が増えてきていることでおとぎ話ではなくなってきています。
2020年9月にはサンバイオ株式会社が、再生細胞医薬品の脳出血プログラムの後期臨床試験の準備を開始すると発表していますし、北海道大学では脳出血の患者さん(慢性期)に対して2023年4月を目標に治験を準備中、という情報もあります。
以上、脳出血について解説しました。
まずは高血圧をはじめとした、生活習慣病に注意をして脳出血の予防をしつつ、治療法の発展に期待と注目をしていきましょう。


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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