低酸素脳症による脳梗塞の後遺症を再生医療で改善できるのか? | 麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

低酸素脳症による脳梗塞の後遺症を再生医療で改善できるのか?

           

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この記事を読んでわかること

低酸素脳症の症状がわかる
なぜ脳が虚血に弱いかがわかる
低酸素脳症に対する再生医療の現況がわかる


脳は酸素需要に弱く、わずか数分の虚血でも何らかの神経学的後遺症を残す可能性があります。
重度の低酸素脳症に陥れば、仮に生き残ったとしても重度の後遺症とともに生きていくしかなく、有効な治療法も確立されていません。
しかし、近年再生医療が新たな治療法として注目されており、ここでは低酸素脳症に対する再生医療の効果を紹介します。

低酸素脳症とは一体どんな症状なのだろうか

低酸素脳症とは一体どんな症状なのだろうか
低酸素脳症とは、窒息などの呼吸不全もしくは心筋梗塞や致死的不整脈などの循環不全を理由に脳に十分な酸素供給ができなくなり、脳全体が障害に陥った状態を指します。
脳細胞は、血液中から受け取った酸素を細胞内のミトコンドリアに取り込むことで、自身の活動のためのエネルギーに変換できます。
そのため、酸素供給が途絶えると細胞としての機能を維持できなくなり、機能が障害されてしまうのです。
特に脳は非常に酸素消費の多い臓器であり、酸素消費量は成人の安静時で約3.5ml/100g/分と、全身の酸素消費量の20%に相当します。
総重量が大きい臓器ではないことを考えると、いかに酸素消費が激しいかがわかります。
そのため、脳は酸素不足に対して非常に弱く、酸素供給が数秒停止しただけで意識消失し、3-5分以上の心停止では仮に心臓の動きが元に戻ったとしても、脳の障害は免れず何らかの後遺症が残るとされています。
具体的な症状としては、発症早期は頭痛・めまい・倦怠感・嘔気嘔吐などです。
その後さらに進行すると、手足の痺れや麻痺・言語障害・意識障害が出現し、重症化するとミオクローヌスやけいれんも併発します。
低酸素脳症に陥った小児35例を対象とした栗原らの報告によれば、主な後遺症として身体障害(80%)、知的障害(85.7%)、高次脳機能障害(34.3%)、てんかん(45.7%)が挙げられており、特に重度の知的障害で歩行不能、寝たきりになるケースが多いようです。

再生医療で低酸素による脳細胞の機能回復は適うのか?

再生医療で低酸素による脳細胞の機能回復は適うのか?
低酸素脳症に対する再生医療については、現在大阪市立大学が治験を行っています。
重度の低酸素脳症に陥った出生児に対し、これまで有効な治療法は脳の酸素消費量を低下させる低体温療法のみでしたが、それでも半分以上の子どもで脳性麻痺などの重篤な後遺症を残してしまうのが現状でした。
そこで、大阪市立大学では新たな治療法として「自己臍帯血幹細胞治療」を研究しています。
自己臍帯血幹細胞治療とは、出生直後の臍帯血から幹細胞を採取し、培養・増殖させて出生後24時間ごとに3日間かけて点滴投与する治療法です。
臍帯血には骨髄と同様に造血幹細胞や間葉系幹細胞が多く含まれており、投与することで期待される効果は下記の通りです。

  • 脳血流改善
  • 血管の保護・新生
  • 各種成長因子の分泌
  • マイクログリアの反応調整を含めた免疫調整および抗炎症作用
  • 神経軸索の発芽促進

また自身の臍帯血から採取した幹細胞を治療で用いるため、拒絶反応を防ぐことも可能となります。
すでに第一相試験で安全性は確認されており、治療の効果を確認するための第二相試験も始まっています。

低酸素脳症による脳梗塞患者にとって幹細胞治療の可能性と期待

幹細胞治療の国内における研究においては、どうしても対象となる患者数が多い脳梗塞や脊髄損傷に対する研究が多いのが現状です。
しかし、低酸素脳症は特に新生児や小児で生じやすく、発症後何十年も家族は病状を支える必要があり、また経済的支援や施設の充実など社会的負担も極めて大きいと言えます。
これまで効果的な治療法が見つかっていないため、近年では新たな治療法として幹細胞治療が大変注目されていますが、まだその効果と安全性は確立されていません。
上記で紹介した大阪市立大学の研究や、ほかにも日本医科大学では低酸素脳症のラットに対してヒト神経幹細胞を用いた再生医療の研究を行っており、今後の知見が待たれるところです。

低酸素脳症についてのまとめ

今回の記事では、低酸素脳症の概要や再生医療の効果について詳しく解説しました。
低酸素に非常に弱い脳細胞は、数分程度の虚血にも耐えられず、何らかの神経学的後遺症を残してしまうことが知られています。
また重度の低酸素脳症に陥れば、四肢麻痺や知的障害など、その後の自身の生活はもちろん、ともに過ごす家族に与える影響も甚大です。
これまで低酸素脳症に対してさまざまな治療法が検討されてきましたが、唯一有効性が確認された治療法は低体温療法のみであり、低体温療法をもってしてもほぼ半数は死亡、もしくは重度の後遺症を残すことが知られています。
そこで、近年では新たな治療法として幹細胞を用いた再生医療が非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善困難であった低酸素脳症のさらなる改善が期待できます。

よくあるご質問

脳細胞は再生しますか?
基本的に脳細胞は再生しないと考えられています。
正確に言えば、少数の神経細胞は再生していますが、脳梗塞や脊髄損傷によって生じた機能障害を元に戻すほどの再生能力はないです。

低酸素で脳梗塞になるのはなぜ?
低酸素で脳梗塞になるわけではないですが、脳梗塞になると一部の脳細胞に十分な酸素が供給されず、低酸素状態になる可能性があります。
梗塞の影響を受ける脳細胞は、十分な酸素を得られず機能が障害されます。

<参照元>
日本救急医学会:https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0115.html
日本救急医学会:https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0809.html
J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/4/53_311/_pdf
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000032171.pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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