痙縮 というニューロン症候群の神経症状について

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“痙縮”とは?

“痙縮”は、「脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経疾患において、筋緊張亢進を主たる症候する上位運動ニューロン症候群の神経症状」です。
医療用語がいくつか出てきているので、説明させていただきます。

筋緊張・・・筋に備わっている張力。
筋緊張は生体の姿勢保持機構や体温調節機構に関与しており、特に姿勢保持機構は、運動あるいは姿勢保持の際に活動する骨格筋の準備状態に重要な意味を持っています。

亢進・・・病勢が高い度合いで進んでいること。
低下の反対用語として使われます。

上位運動ニューロン・・・脊髄の中にある神経。
脳から運動指令を出されると、下位運動ニューロン(筋へ直接指令を出す神経)へ伝達する中間の神経です。

イメージしやすいのは、膝の少し下あたりをコツンと叩くと、膝が勝手に伸びる「反射」がありますね。
医療では伸張反射といいます。
あのように自分の意思ではどうしようもできない反射が、足関節や膝など様々な場所に起こってしまうことです。

その状態が長く続いてしまうと、運動が行いにくくなり、細かい動作を無理にやろうとするとさらに痛みなど招いてしまうことになります。
また、病的な姿勢になってしまうなど、日常生活に多大な影響を及ぼしてしまいます。

“痙縮”の定義

膝 痙縮
伸長反射の病的亢進と定義されている。
混同されやすい、拘縮については下記をご参照ください。

“痙縮”のメカニズム

正常では脳や脊髄が伸張反射(そのほかにも皮膚反射・侵害受容器反射など)を調整していると考えられています。

しかし、脳卒中などで障害を負ってしまうことでこの調整機構が破綻し過剰な反射の出現、すなわち伸張反射の亢進につながるものだと考えられています。

治療

飲み薬
痙縮に対する治療法として、「脳卒中治療ガイドライン2015」では…
グレードA(行うよう強く勧められる):経口薬物療法、ボツリヌス療法
グレードB(行うよう勧められる):神経ブロック、バクロフェン髄中療法、理学療法が実施するストレッチ
と記されています。
ではそれぞれ詳しくみていきましょう。

内服薬(飲み薬)

・ジアゼパム

[効能・効果]脳脊髄疾患に伴う筋痙攣、疼痛の軽減、筋緊張緩和
[使用上注意]心障害、肝障害、腎障害のある患者。高齢者、衰弱患者。

・経口バクロフェン|チザニジン

[効能・効果]筋緊張状態の改善、痙性麻痺
[使用上注意]肝障害、腎障害のある患者は投与初期に血圧低下が見られることもある。眠気、眩暈など。

・ダントロレニンナトリウム

[効能・効果]痙性麻痺
[使用上注意]肝障害、腎障害のある患者。高齢者、イレウスのある患者。

ジアゼパム、チザニジンは十分に科学的根拠が示されており、行うように推奨されています。
ダントロレニンナトリウムは、行うことを考慮してもいいが十分な科学的根拠はないのが現状です。

注射薬(ボツリヌス)

ボツリヌス療法は、神経筋接合部でのアセチルコリン放出を抑制するボツリヌス毒素を筋に直接投与する治療法である。

メリット

・治療手技が容易。
・施注量を施注筋ごとに変えられる。

デメリット

・施注量の上限が低い

ITB療法(バクロフェン髄中療法)

ITB療法は、脊髄における抑制性神経伝達物質のGABAのアゴニストであるバクロフェンが血管脳関門を通過しにくく、経口投与では十分な髄液濃度が得られないことに対して作用部位である脊髄で直接薬剤を作用させるために開発された治療方法である

メリット

・トライアルで効果を確認できる。
・高度な痙縮に対してもコントロール可能。また歩行可能な場合に細かい投与量調節が可能。

デメリット

・体内にポンプを埋め込むことへの患者の抵抗感
・手術的加療が必要

参考
Jpn J Rehabil Med 2018;55:453-457
特集:リハビリテーション治療戦略における痙縮治療の意義 痙縮治療におけるボツリヌス療法とITB療法の選択

その他

・装具療法

装具装具を使うことによって、持続的な筋ストレッチが可能になることと、痙縮が減弱したことによる患者の機能・能力の向上の補助ができるようになります。
このようにボツリヌス療法とITB療法に、装具療法を併用する形で装具療法も注目されつつあります。

・振動療法

振動マシーン細かい振動を生み出すマシーンの上にのり、痙縮している筋に刺激を与えると関節の可動範囲が増加したり、歩行速度向上につながったという報告もされています。
振動は主に30Hzか60Hz(1秒間に30か60の振動数)で5分間程度の実施が推奨されています。

“痙縮”のリハビリテーション

急性期

重度脳卒中の場合は、筋が弛緩性で関節の可動範囲が保たれていることが多いですが、運動量が増えてきて筋や脳に刺激がいくと徐々に筋緊張が亢進し、痙縮に発展することもありますので、しっかり関節の動きが保たれるようにストレッチを行います。
しかし発症して間もない時は全身の治療がメインのため、ベッド上など患者の身体機能に配慮したリハビリ実施が必要です。

回復期

発症後、3ヶ月で21%、6ヶ月で43%の確率で痙縮は出現すると論文で発表されています。
リハビリの中で、痙縮を抑制するためストレッチなどの運動療法や患者の足にあった装具をオーダーメイドし、矯正するような持続的なストレッチが必要になってきます。
適切な治療法などを入院中から医師、看護師、理学療法士など病棟生活から共有し合い、生活期へ申しおくることが大切です。

維持・生活期

回復期で装具を作成した場合、長期間使用していると劣化してきてしまいます。
また、浮腫によって装具と接触してしまうとスキントラブルなども発生する可能性があります。
定期的に訪問リハビリや訪問看護でリハビリスタッフが伺い、装具が適切に使用されているか確認する必要があります。
必要に応じて、再作成や修理を行います。
持続的なストレッチが効果的であるため、患者自身や家族に自主トレーニングとしてストレッチ方法をお伝えするのも有効です。

【拘縮と痙縮の違い】
関節拘縮は,皮膚や骨格筋,腱,靱帯,関節包などの関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した関節可動域制限と定義されています。
つまり、痙縮は脳卒中などの病的な要素から発展して出現することが多いことですが、拘縮は脳卒中などとは関係なく関節不動の状態が長期化すると発現します。
痙縮も拘縮も、どちらも身体機能低下を招き、患者のADLやQOLを低下させる要因になりやすいです。

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