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脳出血の再発と再発予防

           

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脳内の血管が破れてしまうことで発生する脳出血。
その多くは高い圧に長期間曝された血管の一部が弱くなってしまうことが原因である、高血圧性脳出血です。
しかしその他にも、生まれつき脳血管に奇形があること、血液が固まりにくい病気があったり、血液を固まらせない薬を飲んだりしていることなど、血圧が高い人でなくても脳出血は生じえます。
また血圧が高いだけでなく、ストレスや喫煙、過度の飲酒も脳出血の危険因子となりえます。
このようにさまざまな因子が影響している脳出血は、一度発生して適切な処置を行ったとしても、状況次第では再発することがあります。
今回の記事では、この脳出血の再発に焦点を当て、再発率や予防策などについてご説明いたします。

脳出血の再発率

脳出血の再発率について、1,306人の患者を含む10件の研究論文を検証してまとめた報告があります。
この研究では、特に高齢の方に脳出血を繰り返し起こす、アミロイドというタンパク質に関連した脳出血とそれ以外の脳出血とを比較しています。
アミロイドが関係する脳出血が325例、動脈硬化のようなアミロイドと関係しない脳出血が981例含まれています。
年間の脳出血再発のリスクは、アミロイド関連脳出血で7.4%、アミロイド非関連脳出血で1.1%と前者で有意に高くなっていました。
またアミロイド関連脳出血では、もともと微小脳出血が複数あった場合、1~3年の追跡期間中の脳出血再発と関連していました。
微小脳出血は、症状が出ない程度の小さい出血を意味しますが、この数が多いということはもともと出血を起こしやすい要因があったことを意味し、再出血のリスクが高いことにもつながります。
実際、この研究では微小脳出血がもともと2~4個あった場合の再発リスクは、ゼロであった場合に比べて3.1倍、5~10個あった場合は4.3、10個以上の場合は3.4倍になっていました。
アミロイドに関連しない脳出血では、微小脳出血が10個以上あった場合のみが、脳出血の再発リスクが5.6倍と増加していました。

(出典:Charidiou A, et al. Brain hemorrhage recurrence, small vessel disease type, and cerebral microbleeds. A meta-analysis. Neurology. 2017;89(8) DOI: https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000004259)

脳出血を起こした患者に対し、血圧を管理することで脳出血の再発率がどの程度になるのかについて調べた調査もあります。
アミロイドが関係する脳出血は、脳の比較的表面に近いところにできる傾向があり、動脈硬化など高血圧に基づく脳出血は、脳の深いところにできる傾向があります。
アメリカのボストンで行われた研究では、脳出血のできた場所からこの両者を区別し、血圧の管理が再発率にどのような影響を与えるのかについて調べています。
アミロイドが関係すると思われる脳出血の患者の生存者505人のうち102件 (20.2%) ありました。
そして特に血圧コントロールが不十分な患者では年間1,000人当たり84件の再発であったのに対し、血圧コントロールが十分な患者では49件と激減していました。
一方動脈硬化が関係すると思われる脳出血患者の生存者640人のうち44件 (6.9%) に、脳出血の再発がありました。
そして血圧コントロールが不十分な患者では、年間1,000人当たり52件の再発であったのに対し、血圧コントロールが十分な患者では年間1,000人当たり27件と、こちらも激減していました。
共に再発のリスクは収縮期血圧が10mmHg上がると1.3-1.5倍に上昇させますし、不十分な血圧コントロールの結果、3.5-4.2倍に再発のリスクが上昇することがわかりました。

(出典: Biffi A, et al. Association between blood pressure control and risk of recurrent intracerebral hemorrhage. JAMA. 2015;314(9):904-912)

これらにより、脳出血の再発リスクは原因によって異なること、しかし血圧を管理することは原因にかかわらず重要であることが判明しました。

脳出血の再発による死亡率

救急車
脳出血は、再発のリスクがあるため、適切な管理が必要であることはお分かりいただけたのではないでしょうか?
では、もし適切な管理ができず、再発してしまうと死亡のリスクが高くなるのでしょうか?
日本の出雲市における脳出血の再発率とその特徴を調査した報告があります。
279人の脳出血患者のうち、再発した脳出血患者42人を解析したところ、16名(38%)は退院時に良好な経過をたどり、10名(24%)は死亡しました。
再発した脳出血患者全体の1年生存率は72%でした。

(出典:Inagawa T. Recurrent primary intracerebral hemorrhage in Izumo City, Japan. Surg Nruol. 2005; 64(1): 28-35.)

高血圧の管理が改善されたこと、急性期の治療技術が改善されたことなど、さまざまな要因の影響を受け、脳出血の治療成績は改善しています。
しかし初発の脳出血患者の死亡率は、およそ30%程度とも言われていますので、再発後の死亡率が特別に高いと言うわけではなさそうです。

脳出血再発の予防策

軽い運動をする
脳出血を確実に予防する方法は存在しません。
しかし、血圧をコントロールすることは大切であり、かつ可能なことです。
以下、現時点でわかっていることです。

  • 健康的な体重を維持する
  • 毎日の生活に定期的な運動を取り入れる
  • 健康的な食生活を送る
  • 医師から処方された薬を服用する
  • 喫煙者の方は、禁煙する

いずれにしても自己流で行うより、食事の具体的内容など、専門家の意見を聞く方がより効果的でしょう。

まとめ

脳出血の再発に焦点を当て、予防策などについても解説しました。
やはり大切なことは、一度脳出血を起こした人は再出血するリスクが高いこと、また再発しないようにするためには定期的な受診や服薬治療などと合わせて、生活習慣の改善が重要であるということです。
是非、かかりつけ医ともご相談し、再発予防に取り組みましょう。


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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