脳出血の平均余命はどのぐらいなのか?

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日本人の三大死亡原因のひとつである脳卒中。
脳卒中には、脳の血管が閉塞する脳梗塞のほかに、さまざまな理由で血管が破れてしまう脳出血も含まれています。
この脳出血が原因となり、毎年3万人を超える人が亡くなっていると言われています。
しかし脳出血を起こした人は、必ずしも出血してすぐに亡くなるわけではありません。
初回の脳出血を起こしたあと、社会復帰できるまで回復する人も当然おられます。
そこで今回の記事では、脳出血を起こした方がどの程度生存しておられるのか、また脳出血後の平均余命はどの程度なのかなどについて、過去の研究結果なども交えてご説明をいたします。

脳出血を起こした方の5年生存率について

5年生存率
まず、脳出血を起こした方の5年後の生存率について、過去の研究をご紹介します。

スニア・ヘルツェゴビナの病院で行われたこの研究では、初発の脳梗塞および脳出血を起こした836人の5年後の生存率を分析しました。
836人のうち223人(27%)が脳出血を起こした人であり、くも膜下出血は除外されています。
発症後1年目は、脳出血患者の38%が生存し、さらに5年後には脳出血の患者24%が生存していました。
つまり、脳出血を起こした人の約4分の1が5年後も生存していたということになります。
なお、生存率は50歳以下で最も高く(57%)、70歳以上では最も低くなっていました(9%)。
また脳出血を起こした人の5年後の死亡率の予測因子は、高齢と高血圧、そして糖尿病でした。

(出典: Smajlovic D, et al. Five-year Survival after first-ever stroke. Bosn J Basic Med Sci. 2006; 6(3): 17-22)

木県の医療機関で実施された追跡調査もあります。
脳卒中を発症した5,081人を対象に実施されたこの調査では、5年後の生存率は脳卒中全体で約62%、脳出血に限ると約58%でした。
脳出血後に亡くなる方は、多くが発症30日以内に脳出血の再発で亡くなる特徴も認められました。

(出典:今井明ら. 脳卒中患者の生命予後と死因の5年間にわたる観察研究. 脳卒中. 2010; 32: 572-8)

その他にも、脳出血後の5生存率を調べた調査はありますが、多くの場合は再び脳出血を起こして亡くなっていました。
したがって脳出血の再発を高める原因となる、高血圧や糖尿病をしっかりと治療しておくことが大切といえるでしょう。

脳出血の10年再発率について

10年生存率
次に脳出血の10年後の再発率について、過去の研究結果をご紹介します。

タリアで初回の脳出血を起こした112人を、退院後も追跡した調査があります。
この調査では、最長11年以上追跡していますが、その間に24%(27/112人)が1回以上の再出血を経験していました。
再発した27人のうち、8人(30%)は追跡期間の最初の1年間で再発していました。

(出典: Passero S, et al. Recurrence of Bleeding in Patients with Primary Intracerebral Hemorrhage. Stroke. 1995; 26: 1189-92)

ィンランドで行われた別の調査では、初回の脳出血を起こした961人のその後の記録を振り返って調査しています。
記録をみると、58人が68回の脳出血を再発していました。
また5年と10年の累積発生率は、それぞれ9.6%、14.2%でした。

(出典: Huhtakangas J, et al. Predictors for Recurrent Primary Intracerebral Hemorrhage. Stroke. 2013; 44: 585-90)

再発する危険因子などが解明されたことで、脳出血を起こした人の医学的管理は改善されていますが、それでも10%以上の人が10年以内に脳出血を再発しているといえるでしょう。

脳出血後の余命(長期生存率)について

余命・生存率
では脳出血を起こしたあと、どの程度生きながらえることができているのか、余命に関する研究結果をご紹介します。
まずフィンランドで初回の脳出血を起こした患者を対象に調査した研究があります。
411人の初発脳出血の患者のうち、男性は199人(平均年齢64.9歳)、女性は212人(平均年齢69.5歳)でした。
このうち30人は病院に入院する前に亡くなっていました。
また208人(50.6%)が、発症後28日以内に死亡していました。
生存時間を推定する手法であるKaplan-Meier法を用いた解析を行ったところ、発症してから16年が経過した時点での累積生存率は男性で3.2%、女性で9.8%となっていました。
ただし実際は65歳以下の患者が最も予後が良く、19.3%が脳出血後16年間も生存していたのに対し、65〜73歳の患者では2.7%、73歳以上の患者では1.8%しか生存していませんでした。
なお同年齢・同性のフィンランドの一般人口と比較すると、死亡リスクは1年目に4.5倍、2〜6年目に2.2倍に増加していましたが、その後は減少し、7〜16年目には0.9倍になっていました。
つまり脳出血を起こした人は、発症後1年後は脳卒中を起こさなかった人と比べて4.5倍亡くなるリスクがありましたが、発症から7年以上が経過すると死亡のリスクは脳卒中を起こしていない人たちと比べてもさほど変わらなかったと言えるでしょう。

なお最初の6年間に死亡した患者は、6年目以降も生存した人たちに比べて、有意に高齢で、高血圧、心不全、心房細動、水頭症の有病率が高くなっていました。
また発症後28日以内に死亡した208人のうち、200人が脳出血によるものでした。
28日目以降に死亡した159人の死因は全く異なり、脳血管障害によるものは34%に過ぎませんでした。

(出典:Fogelholm, R, et al. Long term survival after primary intracerebral haemorrhage: a retrospective population based survey. J of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry. 2005;76:1534-8)

イのバンコクで行われた、脳梗塞と脳出血を起こした人の平均余命を推定することを目的とした研究をご紹介します。
この研究では、予想される損失生存年数も算出しています。
これは通常予想される平均余命から、脳卒中により死亡が早まったために失った年数を意味しています。
5,210人を対象とした本研究では、74.2%が脳梗塞、残りが脳出血を発症していました。
約54%が男性で診断時の平均年齢は64.3歳でした。

平均余命を計算したところ、脳梗塞を発症した患者では12.5年、脳出血の患者では12.0年となっていました。
脳出血患者の予想される損失生存年数は、虚血性脳卒中患者に比べて有意に高くなっていました(10.1対5.7)。
つまり脳出血を起こした患者の方が、生存すると予想された年数を多く失っていたということです。
また女性は男性よりも両タイプの脳卒中でより多くの余命を失うと予想され、若年層の患者は高齢層の患者よりも多くの余命を失うと予想されました。

(出典:Butsing N, et al. Estimation of expected years of life lost for patients with ischemic stroke and intracerebral hemorrhage. J of Health Research. 2019; 33:4 08-15)

ランダのロッテルダムに住む住人を対象に、高齢者の生活習慣病を含むさまざまな病気に影響を与える要因などを調べるために行われている、Rotterdam Studyから得られた研究結果をご紹介します。
この研究では、3つの期間(1991~1998年、1999~2007年、2008~2015年)で初発の脳出血患者162人と初発の脳梗塞患者988人の生存率の時間的傾向を評価しています。
この研究によると、脳出血後の死亡率は、1991年の25/100人年に対し、2015年は30/100人年と、長年にわたり同程度の死亡率が観察されました。
同様に、最も古い研究期間(1991~1998年)と比較すると、最新の研究期間(2008~2015年)でも死亡率は変わっていませんでした。
一方脳梗塞の患者群では、2015年の死亡率は1991年(29/100人年)に比べて低下していることがわかりました。
これは、最新の研究期間である2008年から2015年においても同様に減少傾向を示しました。
つまり、脳梗塞後の生存率は過去10年間で改善していますが、脳出血後の生存率には変化が見られなかったということです。

(出典:Waziry R, et al. Time Trends in Survival Following First Hemorrhagic or Ischemic Stroke between 1991 and 2015 in the Rotterdam Study. Stroke. 2020; 51: 824-9)

以上から、脳出血を起こした人の平均的な余命は12年程度であり、それ以上生きながらえる方は少ないこと、さらに高齢の人ほど余命が短いこと、また発症してからの期間が短いほど再発して亡くなる確率が高いことがわかりました。
またその生存率は、過去10年間で大きな変化がないこともわかりました。

まとめ

脳出血を起こした人の生存率や余命について、いくつかの研究結果をもとにご説明をいたしました。
まとめると、脳出血は脳梗塞に比べて予後が悪く、10年程度以内に再出血を起こして亡くなる方が多いと言えるでしょう。
もちろん年齢や持病の有無などにより、全ての人が同じ経過をたどるというわけではありません。
ただ確実に言えることは、生活習慣病など脳卒中の危険因子がある人は、その持病をしっかりと治療しておくということです。
この記事をきっかけに、ご自身の生活習慣を見直すきっかけにしていただければ幸いです。


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脳卒中ラボ


貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表【 Dr.貴宝院 永稔 】
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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