この記事を読んでわかること
・若い世代にも発生する脳出血の特徴
・脳出血の原因
・若い世代にみられる脳出血の治療
若い世代の脳出血は、中高年になってから発症する脳出血に比べ、脳動脈の先天的異常が原因となっている特徴があります。
また高血圧や低コレステロール血症が危険因子として知られていますが、喫煙のように自分でコントロールできる生活習慣も危険因子です。
予防のためには、健康的な生活が重要です。
再生医療は、機能回復に有効な治療法として注目されています。
若い世代にも発生する脳出血
「脳出血」と聞くと、「高齢になってから発症する病気」、とのイメージがあるのではないでしょうか?
確かに、脳出血は高血圧や糖尿病などの生活習慣病を抱える60〜70歳代の中高年に多くみられる病気ですが、最近若い世代にも発症することで注目されています。
その数は決して多くありませんが、50歳未満では、10万人あたり5人に発症することが報告されています。
ここでは若い世代の人たちに発生する脳出血について、その特徴や対処法について説明します。
若い世代にみられる脳出血の特徴
まず、若い世代にみられる脳出血の特徴について説明します。
原因
若い世代の脳出血は、その原因に特徴があります。
中高年の脳出血は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病による動脈硬化が主な原因となっています。
長期間にわたる動脈硬化によって、弾力が失われた動脈に急激な血圧の変化が加わると、動脈が破れて出血してしまいます。
若い世代の脳出血も、高血圧が大きく影響しています。
しかし若い人たちの場合、自分の血圧が高いことに気付いていないこともあり、治療を受けていない、あるいは受けていても不定期にしか薬を飲んでいない特徴があります。
最近若い人の脳出血の原因として注目されているのが、脳動脈解離と呼ばれる血管の異常です。
動脈は3つの層からできていますが、アジア人のなかに生まれつき動脈の一部がもろくなっている人がいます。
そうすると3つの層の間に裂け目ができ、結果的に動脈が裂けてしまうことがあります。特に首を通る椎骨脳底動脈の動脈解離では、首をひねったり、頭部への外傷がきっかけになったりして発症します。
また、脳動静脈奇形や海綿状血管腫など、脳内血管の奇形も脳出血の原因となります。
これらの血管の奇形も血管壁がもろいため、重いものを持ち上げたりトイレでいきんだりして、急に血圧が上がることがあると、それがきっかけで血管が破裂することも知られています。
なお若い年代の脳出血のうち、高血圧に起因する脳内出血は31歳以上に多く(オッズ比3.48)、動静脈奇形に起因する脳内出血は20歳未満が多くなっていました(オッズ比2.80)。
症状
若年者の脳出血は、症状がわかりにくいという特徴もあります。
というのも、通常脳出血が若い年代の人に起こるとは思わないので、はっきりした症状でなければ気づかれにくいからです。
例えば小児に発生した脳出血の初期症状を調べた研究によると、約6割の初発症状が頭痛や嘔吐でした。
この症状は、脳出血以外のウイルス感染症などでも認められる症状ですが、小児だと脳出血よりもウイルス感染症の頻度が多いため、どうしても先にウイルス感染症による頭痛や嘔吐だと考えてしまうのです。
なおこの研究によると、発症時に麻痺を認めた小児患者は約16%しかいませんでした。
また椎骨脳底動脈の動脈解離では、首の痛みとして発症し、麻痺などの症状が出るまで数週間を要することもあります。
首の痛みだけで脳出血の原因となる動脈解離が発生した、とはなかなか気づかないため、麻痺が出てきて初めて脳出血が発見されることになります。
危険因子
40歳以下で脳内出血を発症した200人を対象に実施した調査によると、危険因子として多いものはタバコの喫煙(20%)、低コレステロール血症(35%)、高血圧(13%)、飲酒(10%)でした。
特に、低コレステロール血症と脳内出血との関連が最近注目されています。
なぜコレステロール値が低いと若い年代の脳内出血の危険性が高まるのか、そのメカニズムはまだわかっていませんが、アジア人に多い特徴と言われています。今後の研究の結果が待たれるところです。
若い世代にみられる脳出血の治療〜再生医療の可能性
若くして脳出血になり、麻痺を残すことがあると、それからの社会生活に大きな影響を与えてしまいます。
健診などを通して健康管理をし、血圧を適切に管理すること、また生活習慣病につながる喫煙や不規則な生活を避けるなど、発症や再発を予防するためのアクションは重要です。
発症してしまった場合でも、若い人の場合は回復しやすい特徴もあるため、積極的なリハビリテーションが有効です。
なお最近では再生医療が注目を集めています。
特に自分自身の骨髄に含まれる肝細胞を利用し、失われた機能を回復させる、脳出血後の再生医療は、次世代の治療法として国の認可も受けて推進されているものです。
リハビリが単独では思うような回復がみられない場合でも、再生医療を取り入れることで機能回復が進むことが期待されています。
まとめ
若い世代にもみられる脳出血について、その原因や危険因子、また治療の可能性についてご説明しました。
血管の奇形のように、生まれつき持っているものは自分でコントロールすることはできません。
だからこそ、自分でコントロールできる生活習慣を意識し、禁煙や規則正しいストレスの少ない生活に取り組むことが大切です。
ぜひご自身の日々の生活を見直してみましょう。
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