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脳出血と高次脳機能障害そして再生医療

           

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出血などの後遺症で起こる高次脳機能障害は、目に見えない障害であり患者さんの悩みや苦しみが周囲に伝わりづらい症状です。
日常生活に及ぼす影響は非常に大きく、適切な治療を受けて障害の程度をできるだけ軽くするとともに、周囲が障害を理解し、共感と支持的態度で接することが重要となります。
脳出血の後遺症には運動や感覚の障害に代表される身体障害の他にも、様々な症状があります。
高次脳機能障害はそのうちの一つです。
軽度から中等度の脳卒中患者さんの場合、社会復帰や復職に最も重要な要素として、認知機能が挙げられます。
認知機能の障害は目に見えない障害であるために、周囲の理解を得ることが難しい症状です。
認知機能の障害というと、認知症が連想されると思います。
認知症と高次脳機能障害は似て非なるものです。
ここでは、脳出血の後遺症としての高次脳機能障害について解説していきます。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、注意力や記憶力の低下、性格の変化や場にそぐわない行動をするなど、様々な症状が原因で社会生活に支障が生じる障害です。
脳出血が発症すると、運動や感覚の症状は発症後早期に症状が強く、その後徐々に軽快していきます。
高次脳機能障害についても同様で、発症早期には多くの患者さんが経験する症状です。
時間と共に軽快するものの、脳卒中の患者さんでは退院後も40%程度の方に高次脳機能障害の症状が残存すると報告されています。
高次脳機能障害という言葉は医学的病名ではなく、日本独特の行政用語です。
医学的病名としては、「器質性精神障害」などが該当すると考えられています。

高次脳機能障害の原因

高次脳機能障害の原因は、脳の神経の損傷、障害です。
脳は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、小脳、脳幹などに分けられますがそれぞれの場所が別々の機能を持っています。
例えば認知の障害は、前頭葉などの損傷が原因になることが多いと言われています。
脳出血では血の塊によって神経が圧迫されて、脳の神経が障害を受けます。
発症早期では出血に伴って周囲組織の血流が悪くなるなどして、症状が強くでます。
時間が経つと出血が吸収され、周囲のむくみが軽減してくるために症状がある程度までは自然に軽快します。
しかし、一度強く障害された神経組織の機能が完全に回復することは少ないため、高次脳機能障害が後遺症として残存することになります。

高次脳機能障害の症状

脳の機能
高次脳機能障害は、次の4症状に分けることができます

  • 記憶障害
  • 注意障害
  • 遂行機能障害
  • 社会的行動障害

記憶障害

脳の深部にある、海馬が障害を受けることで発症する症状です。
海馬は血流が足りないときに障害を受けやすい場所であるため、記憶障害は高次脳機能障害の中でも頻度が高い症状です。
海馬はアルツハイマー病における最初の病変部位としても知られています。
物の置き場所や出来事を覚えることができないため、日常生活の障害に直結します。

注意障害

注意障害は、注意する機能の障害です。
注意する機能とは、物事に一定時間集中する能力や、他の物事に注意を切り替える能力などがあります。
それらの機能が障害されると、飽きやすく長く仕事をするとミスがでる、話題が変わるとついていけない、グループでの話し合いができない、などの症状がでます。

遂行機能障害

遂行機能というのは、ある一連の動作を効率よく実施するための能力です。
例えば家事動作の一つである料理では、

  • 何の料理を作るか決める
  • 食材の準備、調理器具の準備など手順、段取りを考える
  • 適切な方法、順番を選択する
  • 考えた段取り通りに実行し、料理を作り上げる
  • 料理の味がどうかなど、結果を確認して評価する

一連の流れ全てが遂行機能です。
遂行機能が障害されると、計画的に物事を進められない、ゴールや締め切りを決めることができない、急な予定変更に対応できない、などの症状がでることになります。

社会的行動障害

ここまで挙げた記憶、注意、遂行機能の障害は、いずれも「認知」の障害であるとみなすことができます。
社会的行動障害は別で、認知の障害に入らない「行動」の障害が広く含まれる考え方です。
意欲の低下、性格の変化、感情コントロールが効かないなどが原因で、社会行動の障害が生じます。
大声で怒鳴り散らす、暴力をふるう、意欲が低下し一日中ベッドから離れないといった症状がみられます。

高次脳機能障害の治療

高次脳機能障害の治療
高次脳機能障害の治療は、脳卒中などの原疾患の治療と、その後のリハビリテーションが中心となります。
脳出血の場合、発症直後に出血を悪くさせないために血圧をコントロールし、安静にすることで止血を図ります。
脳出血に対する治療が一段落した段階で、リハビリテーションが開始されます。

高次脳機能障害が認知症と異なる点として、「進行性の障害ではない」点が挙げられます。
脳卒中の発症後早期に出現した高次脳機能障害が徐々に進行することは少なく、自然経過である程度まで改善することが見込まれる障害です。
そのため、リハビリテーションが効果的であることが分かっています。

リハビリテーションを行う上で、環境調整が非常に重要です。
具体的には

  • 人間関係を調整し、本人に共感や支持的対応をとれる環境を用意する
  • 転倒予防のために手すりを準備する、記憶補助のためにスケジュール表を準備するなど、物理的環境を調整する
  • 身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳など、社会資源の利用を考慮する

といった環境調整です。

その上で、患者さんに残された能力を最大限に利用して、社会生活ができるように訓練をしていきます。
注意障害があれば、「自分は上手に事を処理するには時間がかかる」ことの自覚を促し、「作業をするときには時間が必要である」と第三者に告げることを覚える、遂行機能障害があれば、自分の能力の範囲内でできることを覚える、人に助けてもらうべき内容を覚える、などの訓練です。
これらの訓練は社会生活に適応するための方法を覚えるという手法ですが、ステップを踏むことによって自分自身の認知能力や管理能力が向上することが期待されます。

高次脳機能障害と再生医療

高次脳機能障害は、本人だけでなく、患者さんを支える家族や周囲の人にとって負担やストレスの大きい症状です。
長期間にわたる治療や介護で疲弊してしまうケースが少なくありません。
高次脳機能障害に苦しむ人々の光明になるかもしれない最先端治療、それが再生医療です。

国家戦略として重要な位置づけを置かれる再生医療では、脳卒中に対する治療が行われ、実際の治療成果が数多く報告されるようになってきています。
高次脳機能障害は脳の障害であるため、再生医療の効果を見込むことのできる障害です。

脳出血や脳梗塞などの脳卒中に対する再生医療は、神経の障害がある患者さんに対して幹細胞や有効な分泌物質を移植することで、神経の回復を促す方法です。
現在最も広まっているのは、間葉系幹細胞を使用した方法で、神経症状の回復が認められています。
高次脳機能障害に対する治療実績を蓄積することで、より良い治療を探求する研究が日々行われています。

まとめ

脳出血の症状の一つである、高次脳機能障害について解説しました。
周囲が障害を理解し本人を支えていけるような環境を準備することに加えて、リハビリテーションや再生医療といった適切な治療を受けることで、障害をできるだけ軽くし社会復帰を促すことができます。

[データ参照元]
「脳卒中患者の高次脳機能障害への対応」MB Med Reha(236), 2019
「高次脳機能障害の臨床:特に社会的行動障害について」日社精医誌(28), 2019

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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