外傷性脳損傷に対するサンバイオ社SB623とは|脳卒中・脊髄損傷|麻痺痺れなど神経障害を再生医療×同時リハビリで改善

外傷性脳損傷に対するサンバイオ社SB623とは

           

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再生細胞薬(SB623)外傷性脳損傷後の運動機能障害改善で国内申請」というニュースが先日報道されました。
今回の申請は脳損傷による麻痺などの運動機能障害の回復を目的とした国内申請ですが、今後は慢性期脳出血や脊髄損傷での申請に向けた研究が進められています。
今回は、サンバイオ社の「SB623」について詳しく解説致します。

サンバイオ社の「SB623」とは

サンバイオ社SB623

今回の申請は脳損傷による麻痺などの運動機能障害の回復を目的とした国内申請ですが、今後は慢性期脳出血や脊髄損傷での申請に向けた研究が進められています。


SB623は、2001年に創業された、再生細胞医薬品の開発や製造を行うサンバイオ社が開発した、再生医療用の細胞薬です。
成人の骨髄由来間葉系幹細胞に、一時的な遺伝子改変を施したのち、培養した細胞を用いた、サンバイオ社オリジナルの治験薬です。
損傷した脳神経組織にSB623を移植すると、神経栄養因子や成長因子が分泌され、脳の自然な再生能力が引き出され、失われた運動機能が回復されることが期待されています。

先駆け審査指定制度とは

SB623は、先駆け審査指定制度を利用していることでも知られています。
この先駆け審査指定制度は、世界でまだ承認されていない医薬品を日本で申請して審査を受け、さらに承認を受けることを目指す制度です。
新しく開発された薬、再生医療に関する製品などを、優遇して審査する制度でもあります。
2015年に創設された制度ですが、2020年には医薬品医療機器等法(いわゆる薬機法)が改正されたことを受け、「先駆的医薬品指定制度」「先駆的医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品指定制度」として法制化され、本格的に稼働し始めました。
治療困難な状態に対し、著しい効果が期待できる画期的な医薬品や再生医療に関する製品のうち、一定の基準を満たすものを厚生労働省が選定し、薬事・食品衛生審議会にて審査を行っています。
対象となる製品は、優先的に審査されるだけでなく、審査期間も半年ほどに短縮されます。
サンバイオ社のSB623は、外傷性脳損傷による運動障害に用いる再生医療製品として、2019年4月に厚生労働省から先駆け審査指定制度の対象製品に選定されています。

外傷性脳損傷とは

SB623の効果が期待されている、外傷性脳損傷についてご説明します。
外傷性脳損傷とは、頭部への外傷により、脳に何らかの損傷が加わる状態です。
頭部へ直接打撃が加わること、また頭部の激しい揺れが損傷の原因となります。
頭部が激しく揺れることによる脳損傷は、乳幼児に多くみられますが、激しい揺れであれば成人でも起こり得ます。
外傷性脳損傷のなかには、頭蓋内血腫や出血、脳浮腫、びまん性軸索損傷などが含まれます。
頭蓋内血腫とは、血管の外にもれた血液が凝固した状態のことです。
脳内に血腫が発生すると、頭蓋骨内に圧力がかかり、その結果、意識を失ったり、脳に永久的な損傷が加わったりします。
頭部外傷による出血には、脳の周りの空間での出血するクモ膜下出血と、脳組織の中での出血する脳内出血があります。
いずれも出血した血液が脳組織を圧迫し、脳損傷をきたします。
脳に損傷を受けると、脳自体に浮腫が生じることがあります。
頭蓋骨に囲まれた空間では、浮腫によって頭蓋内の圧力が高まり、脳細胞そのものが圧迫を受け、損傷されます。
びまん性軸索損傷は、脳内の出血はなくても、脳細胞が損傷している状態のことです。
脳細胞の損傷により、脳細胞が機能しなくなります。
また浮腫が生じ、さらにダメージが大きくなることもあります。
びまん性軸索損傷は、外傷性脳損傷のなかで最も危険なタイプのひとつで、永久的な脳の損傷、さらに死につながる可能性があります。
外傷性脳損傷では、意識障害、けいれん、運動障害、感覚障害、記憶喪失など、日常生活を送ることが困難となる症状が生じ、その後の生活レベルに大きな影響を与えます。
急性期には、必要に応じて手術を行い、生命を維持するために集中治療室で全身の管理も行います。

外傷性脳損傷に対して期待できる効果

外傷性脳損傷において、一般的に急性期を超えて回復しない機能は、その後も著しい改善が認められません。
特に外傷は若い年代の人に多くみられますので、その後の人生に大きなハンディを背負うことになってしまいます。
したがって、失った運動機能を回復する可能性を秘めたSB623には、高い期待が寄せられています。
日本、米国、そしてウクライナで実施された共同研究であるSTEMTRA試験 (Study of Modified Stem Cells in Traumatic Brain Injury)は、運動機能の回復が望めない慢性期の外傷性脳損傷の61人の方に、SB623を実際に投与したフェーズⅡの研究です。
この研究の結果によると、投与後6ヶ月の時点でも運動機能の著しい改善が認められていました。
また投与後に嘔吐や頭痛などの症状を認めた人はいましたが、投与したことに起因する有害事象は認められませんでした。

(出典: US National Library of Medicine. A study of modified stem cells in traumatic brain injury (TBI) (STEMTRA). https://clinicaltrials.gov/ct2/show/results/NCT02416492)

SB623の現状と今後

2022年3月7日の報道によると、サンバイオ社は厚生労働省に対し、SB623を再生医療の製品として販売する承認を求める申請を行いました。
この後は、医薬品両機器総合機構(PMDA)における事前審査が行われ、さらに薬事・食品衛生審議会にて優先審査を受けることになります。
再生医療の製品として、外傷性脳損傷の方に使用できるまで、具体的にどの程度の時間を要するかは定かではありませんが、遠い未来ではないということは確実に言えるかと思います。

まとめ

これまでなかなか有効な治療手段がなかった外傷性脳損傷に対し、再生医療を利用することで解決が得られるかもしれません。
これは画期的なことです。
ニューロテックメディカルでも、積極的に再生医療に取り組んでいます。
今後のSB623に関する動向を注視していきたいと考えています。


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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