この記事を読んでわかること
・偽痛風とは
・偽痛風の診断
・偽痛風の治療
急に膝などの関節が腫れて痛くなる偽痛風は、脳卒中がきっかけとなって発症することがあります。
脳梗塞は脳の病気ですが、脳以外にもさまざまな問題を起こすことが知られています。
その1つが、偽痛風(ぎつうふう)です。
強い痛みを感じ、リハビリの支障となるため早いうちに医療機関を受診し、関節注射や消炎鎮痛薬、安静による治療を受けるようにしましょう。
脳梗塞の治療中、ある日突然膝が痛くて歩けなくなった。
膝が腫れて少し動かすだけでも激痛、それどころか熱まで出始めた。
そんな方は、偽痛風の可能性があります。
脳梗塞の後に発症するかもしれない偽痛風について、解説していきます。
偽痛風とは
偽痛風は、偽(ニセ)の痛風と名付けられており痛風と似た症状を起こしますが、痛風とは全く異なる疾患です。
痛風は老廃物の一つである尿酸が体内に増えすぎた時に、足の指や膝などの関節に結晶として析出し、強い炎症を起こす疾患です。
偽痛風も同じように、膝だけでなく手や足、頚椎などさまざまな関節に炎症を起こします。
炎症の程度は強くなることが多く、激しい痛みで少しも動かすことができなくなったり、場合によって38度以上の発熱を起こしたりすることがあります。
ただし尿酸の数値は関係がなく、ピロリン酸カルシウムという物質が関節に析出することが強い炎症の原因となります。
痛風の原因は食事や飲酒など生活習慣が関わっていますが、偽痛風の原因は主に加齢に伴う関節の変形と考えられています。
年齢が高くなると発症率が上昇し、70歳代では6.0%、80歳代では13.6%の方が偽痛風になるというデータがあります。
脳梗塞の発症早期に偽痛風を起こしやすい
偽痛風は加齢だけではなく、代謝性疾患などの全身疾患、手術、けがなどの後に起きやすいことが知られています。
そしてもう一つ、脳梗塞などの脳卒中急性期に発症しやすいことがわかっています。
ある研究では、脳卒中で入院した方と脳卒中以外で入院した方を比較した時に、脳卒中の方が6倍の発症率(1.8% vs 0.3%)であったことを報告しています。
別の似た研究では、同じく脳卒中の方とそれ以外の方を比較し、5.5% vs 0.6%と偽痛風の発症率に大きな開きがあることを明らかにしています。
はっきりした原因はわかりませんが、偽痛風が発症したのは脳卒中の発症早期で自立度が低い段階で多かったことから、安静や運動の制限が発症に関わっているのではないかと考察されています。
偽痛風は発症初期には発熱のみが症状となることがあり、肺炎やウイルス感染症など他の疾患と間違えられることのある疾患です。
痛みを的確に訴えることのできない方などでは、特に注意が必要なことが分かります。
また、脳梗塞では早いうちに機能を取り戻すためのリハビリを積極的に行うことが重要です。
偽痛風は強い痛みを伴うため、リハビリをするのが困難になってしまいます。
できるだけ早く適切な診断と治療を受ける必要があります。
偽痛風の診断と治療
偽痛風の診断は、問診とレントゲン所見、関節液の検査により行われます。
偽痛風はけがなどの明らかなきっかけがなく、ある日突然関節が痛くなり、腫れがしばしば見られます。
レントゲンでは関節の中に石灰化が白く写ることがあり、関節に針を刺して採取した関節液の中にピロリン酸カルシウムが確認されれば、診断が確定されます。
関節液の検査には偏光顕微鏡を使用するため、クリニックでの診断は難しいことも多く、総合病院への紹介が必要となることがあります。
偽痛風の治療には、消炎鎮痛薬が使用されます。
また炎症を起こしている関節を冷やし、安静にします。
腫れが強い時には注射で関節液を取り除き、時にステロイドの関節内注射が行われます。
多くの場合1週間程度で症状は軽くなるため、それほど難しい治療という訳ではありません。
ただし、関節の炎症を起こす他の疾患(関節リウマチや化膿性関節炎(関節の感染症))である場合治療法が大きく異なります。
特に化膿性関節炎では緊急入院や手術が必要となることがあるため、必要な検査を行いしっかりと診断することが重要です。
関節の変形が強く、偽痛風の炎症が収まってきても歩行が困難な状況が続くようであれば、人工関節置換術などの外科的治療が検討されます。
まとめ
脳梗塞に合併する疾患として、偽痛風を紹介しました。
はっきりとしたきっかけがなく強い痛みを自覚するため、本人の戸惑いが大きい疾患の一つです。
リハビリの支障となることも大きな問題です。
適切に治療すればそれほど長引く疾患ではないため、正しい予備知識をもって医療機関を受診するようにしましょう。
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