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全身性エリテマトーデスとは

           

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全身性エリテマトーデスとは、本来体内に侵入した異物を攻撃するはずの免疫細胞が誤って自身の細胞を攻撃してしまう病気です。
さまざまな臓器を障害するため、出現する症状も多岐にわたり、全身に症状が及ぶことから「全身性」と名付けられています。
この記事では、全身性エリテマトーデスの症状や原因・治療法などについて解説していきます。

全身性エリテマトーデスとは

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)とは、自己免疫が関わり全身にさまざまな症状をきたす自己免疫性疾患です。
本来であれば体内に侵入した細菌やウイルスを退治する役割を担う白血球などの免疫細胞が、なぜか自分自身の細胞を敵と見なし、誤って攻撃してしまいます。
攻撃範囲は関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経系など全身に及ぶことから英語で「systemic(全身性)」と名付けられています。
さらに、代表的な症状である皮膚症状の見た目が、狼(ラテン語でlupus)に噛まれた痕のような赤い紅斑(erythematosus)であることから「lupus erythematosus」と名付けられています。
日本でも難病に指定されており、日本人の約6〜10万人が罹患していると考えられています。
また、そのうち9割が女性であり、特に20〜40代の女性に多い病気とされています。

全身性エリテマトーデスの原因

前述したように、全身性エリテマトーデスが自己免疫機能の異常によって引き起こされていることは解明されていますが、なぜ自己免疫異常が起きてしまうのかは現在に至るまで解明されていません。
とはいえ、何もわかっていない訳ではありません。
全身性エリテマトーデスを発症する患者の98〜99%の方の体内では、抗核抗体と呼ばれる自己抗体が体内で生成され、抗核抗体が各臓器の細胞と反応して複合体を形成し、沈着することでさまざまな症状をきたします。
また、紫外線の被曝、風邪などのウイルス感染、侵襲的な外科手術、妊娠や出産などで症状が誘発されることが知られています。

全身性エリテマトーデスの症状

全身性エリテマトーデス 蝶型紅斑
全身性エリテマトーデスでは一般的に発熱や倦怠感などの全身症状・皮膚症状・関節症状などが出現します。
これに加え、臓器症状(さまざまな臓器や血管・神経など)が加わることもありますが、患者ごとに経過はさまざまです。
このうち、最も代表的な症状として皮膚症状の「蝶型紅斑」が挙げられ、顔面の両頬に蝶が羽を広げているような赤い発疹が生じるためこのように名付けられています。
臓器症状を併発する場合、中等症もしくは重症に分類され、生命に関わるような症状をきたす可能性もあるため、注意が必要です。

ループス腎炎

全身性エリテマトーデスに伴う腎機能障害を「ループス腎炎」と言います。
自己抗体と抗原の複合体が腎臓内の血管に集積し、炎症を引き起こすことで腎臓自体を破壊してしまいます。
放置すれば腎不全に至る可能性もあり注意が必要です。

神経精神ループス

全身性エリテマトーデスに伴う神経機能障害を神経精神ループスと言います。
神経細胞に対する自己抗体が産生されることで末梢神経や脳が攻撃されるため、全身性エリテマトーデスの最重症に分類されます。
主な症状はけいれん、頭痛、手足のしびれ、筋力低下などの神経症状や、不安感、抑うつ状態などの精神症状です。

心外膜炎・胸膜炎

心臓を覆う心外膜や肺を覆う莢膜にも自己抗体が炎症を及ぼし、心外膜炎・胸膜炎をきたす可能性もあります。
どちらも、心臓や肺の拡張を障害するため、動悸や息苦しさを自覚することがあります。

全身性エリテマトーデスの治療

全身性エリテマトーデスの治療は、自己抗体の産生を抑えることが重要です。
そこで、自己免疫能を低下させるステロイドや免疫抑制剤を病状に合わせて組み合わせた治療法が主です。
しかし、どちらの薬も多くの副作用を有するため、うまく副作用と付き合っていきながら治療していく必要があります。

まとめ

今回の記事では全身性エリテマトーデスについて解説しました。
全身性エリテマトーデスは難病指定されている自己免疫性疾患であり、体内で生成された自己抗体が全身にさまざまな影響を与える病気です。
特に、腎臓や神経・血管・肺・心臓などの臓器症状を伴う場合は注意が必要で、これらの臓器症状が進行すれば死に至る可能性もあります。
現状、ステロイドや免疫抑制剤が主な治療法ですが、一方でこれらの薬剤の長期的な使用は感染症に罹患しやすくなるなどの副作用もあり、他の治療法が模索されている現状が続いています。
そこで、近年では再生医療が非常に注目されています。
自己抗体によって障害を受けた神経細胞を再生医療によって再生できれば、最重症に分類される神経精神ループスの患者の症状を緩和できるだけでなく、ステロイドや免疫抑制剤の使用量も減らせるかもしれません
現在その知見が待たれるところです。

Q&A

全身性エリテマトーデスの寿命は?
ステロイドが使用されていなかった1950年代は、発症してからの5年生存率約50%と非常に予後不良な病気でした。
現在はステロイドや免疫抑制剤の進歩によって5年生存率約95%にまで改善しています。

全身性エリテマトーデスの原因は?
自身の細胞をターゲットとする自己抗体が産生されることが主な原因です。
また家族内発症率が高いことから遺伝的要因が、紫外線被曝などで発症率が高まることから環境的要因も関与していると考えられています。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表 Dr.貴宝院 永稔

大阪医科薬科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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