この記事を読んでわかること
・小脳萎縮症の症状がわかる
・小脳萎縮症の病態がわかる
・小脳萎縮症関連疾患との違いがわかる
小脳萎縮症とは、さまざまな原因で小脳が萎縮し、運動失調などの症状をきたす病気です。
小脳にとどまらず、自律神経や大脳・脳幹などにも障害を与えるため、出現する神経症状は多岐に渡り、障害される部位や症状によって多くの病型に細分化されます。
この記事では、小脳萎縮症の症状や病態について詳しく解説します。
小脳萎縮症の主な3つ症状と特徴
小脳萎縮症とは、その名の通り小脳が萎縮してしまう病気であり、国内では脊髄小脳変性症と呼ばれる病気です。
小脳以外に脳幹・脊髄・大脳・末梢神経なども同時に萎縮していくことが多いことから、発症する人によって多彩な神経症状を呈し、病型もさまざまです。
しかし、どの病型でも小脳が萎縮する点においては共通しています。
ここでは、出現しやすい3つの症状を紹介します。
- 小脳性運動失調
- 自律神経障害
- パーキンソニズム
小脳性運動失調によるふらつきと細かい動作の困難
小脳の主な機能は、わかりやすく言えば「運動のバランスを整える」ことです。
そのため、小脳が萎縮すると運動時における複数の筋肉の収縮のバランスや協調運動が失われてしまい、これを小脳失調と呼びます。
小脳失調に陥ると、箸を使ったり文字を書くような細かい手の動きが苦手になり、針の穴に糸を通そうとすると手が震えてしまう企図振戦(企図振戦(きとしんせん)とは、動作を起こしたときにふるえが発生する症状)などの症状が出現します。
また、ふらつきや歩行困難・構音障害なども代表的な症状です。
自律神経障害が引き起こす影響
自律神経とは交感神経と副交感神経の総称であり、相互に作用し合うことで身体のさまざまな生理機能を調整しあっています。
血圧や脈拍・睡眠・体温・消化・排尿・排便など、多くの生理機能を調整しているため、自律神経が障害されると出現する神経症状も多彩です。
例えば、排尿障害や便秘、起立時に血圧が低下してしまう起立性低血圧、睡眠障害などが挙げられます。
パーキンソニズムの特徴とは
中には、パーキンソニズム(パーキンソン病様の症状)をきたす病型もあり注意が必要です。
スムーズな運動を可能にするために必要不可欠な錐体外路と呼ばれる神経回路が障害されることで、スムーズな運動が失われて身体が固くなっていきます。
固縮や無動、姿勢反射障害などの症状が出現し、嚥下障害なども併発すると命に関わる危険性もあるため、注意が必要です。
小脳萎縮症の遺伝的要因とリスク
小脳の萎縮を伴う脊髄小脳変性症は、さまざまな病型を全て含めると全国で3万人以上発症者がいると考えられています。
病型によって遺伝性の有無も異なりますが、脊髄小脳変性症の約1/3の方が遺伝性であると言われています。
また、これまでの研究ですでにいくつもの原因遺伝子が明らかとなっており、今後もさらなる解明が期待されるところです。
遺伝子はアデニン(A)・グアニン(G)・チミン(T)・シトシン(C)の4つの塩基配列から成っており、連続した3つの塩基配列が読み込まれることで、どのようなアミノ酸が生成されるか決まります。
遺伝性の脊髄小脳変性症においては、CAGの連続した塩基配列が繰り返し並ぶことで生成されるポリグルタミンが、神経細胞に毒性を持っていることが原因であると考えられています。
以上の理由から、遺伝性の脊髄小脳変性症はCAGリピート病と呼ばれます。
今後、さらに遺伝医学の分野が発展すれば、さらに数多くの原因遺伝子やリスク、またそれに対する革新的な治療や対策が発見される可能性もあり、今後が期待されるところです。
小脳萎縮症の発症リスクを軽減するためには、運動やバランスのとれた食事が推奨されます。
特に有酸素運動は、脳の血流を改善し神経機能を活性化する効果があります。
ストレスの管理や適切な栄養摂取も脳全体の健康維持に役立ちます。
小脳萎縮症と皮質性小脳萎縮症とオリーブ橋小脳萎縮症の違い
これまでも触れたように、脊髄小脳変性症にはさまざま病型があり、以前まではそれぞれ別の疾患として考えられていました。
しかし、医療技術や遺伝子科学の向上とともに、基本的には皮質性小脳萎縮症やオリーブ橋小脳萎縮症は脊髄小脳変性症のうちの共通した病態の疾患と考えられています。
また、日本では行政上は別の疾患として名前を分けられています。
では、具体的にそれぞれの疾患にはどのような違いがあるのでしょうか?
まず、皮質性小脳萎縮症やオリーブ橋小脳萎縮症は遺伝歴を含まない脊髄小脳変性症として分類されています。
一方で、皮質性小脳萎縮症やオリーブ橋小脳萎縮症はともに出現する症状が類似していることから、しばしば鑑別に難渋することがあります。
両者の違いは、神経病理学的検査や頭部MRI検査において有意な所見を持つか否かです。
オリーブ橋小脳萎縮症は、神経病理学的検査において、α–シヌクレインの脳内凝集・沈着を認め、頭部MRI検査でも特徴的な所見を認めます。
しかし、皮質性小脳萎縮症にはこういった疾患に特異的なバイオマーカーがなく、さまざまな疾患を否定した上で診断される、いわゆる除外診断でしか診断されない病気です。
他にも、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症と呼ばれる類似疾患などもあり、診断には慎重を期すべきです。
小脳萎縮症の主な症状についてのまとめ
今回の記事では、 小脳萎縮症の3つの主な症状について詳しく解説しました。
小脳萎縮症は、小脳萎縮に伴う運動失調や、そのほかの神経細胞の萎縮に伴い自律神経障害・パーキンソニズムなどさまざまな症状をきたす難病です。
変性疾患であるため、加齢とともに徐々に進行し、出現した症状に対する対症療法が主な治療手段のため、根治することは困難な病気です。
一方で、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、これまで改善の難しかった小脳萎縮症に伴う神経症状の改善が期待されます。
よくあるご質問
- 小脳萎縮症の症状は?
- 小脳萎縮症の症状は、小脳が障害されることで生じる小脳性運動失調です。
小脳は身体の微細な運動や協調運動をコントロールしているため、障害されることで細かな作業が困難となります。
また、身体のバランスが乱れることで、めまいや歩行困難などの症状も出現します。 - 皮質性小脳萎縮症とオリーブ橋小脳萎縮症の違いは何ですか?
- オリーブ橋小脳萎縮症は多系統萎縮症の1つの病型であり、α–シヌクレインが小脳などに蓄積することで神経細胞を障害する病気です。
一方で、皮質性小脳萎縮症も小脳が萎縮する病気ですが、診断に有用な特異的なバイオマーカーを認めない点で異なります。
<参照元>
・難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4879
・兵庫県難病相談センター:https://agmc.hyogo.jp/nanbyo/ncurable_disease/disease03.html
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/34/6/34_S108/_pdf/-char/ja
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