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視床出血による高次脳機能障害とは

           

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脳の視床における出血では、左右半身の麻痺以外にも失語症、半側空間無視、注意障害、記憶障害などの高次脳機能障害を併発することがあります。
高次脳機能障害によって、注意力や集中力の低下、情緒の乱れなど様々な症状を来し、日常生活にも支障をきたします。
この記事では、視床出血による高次脳機能障害について詳しく解説していきます。

視床出血による後遺症

視床
脳の内部を走行する血管が動脈硬化などによって本来の弾性を失い、破れてしまうと脳出血という病気になります。
血液内には脳が必要とする酸素やグルコースなどの栄養素が豊富に含まれているため、脳出血によって脳への血流が途絶してしまうとすぐに脳が壊死してしまいます。
出血しやすい部位として被殻、視床、小脳などが挙げられ、部位に応じて様々な症状が出現します。
特に視床出血は脳の中心部で出血が起こるため、増大する血腫によって周辺組織が圧迫され、様々な症状をきたします。
発症早期は頭痛やめまい、嘔気などが生じますが、進行すると麻痺やしびれ、上手く話せなくなる構音障害や飲み込みが悪くなる嚥下障害などが出現します。
また、さらに進行すれば意識障害や、場合によっては呼吸や心臓の動きが止まってしまい命の危険性もあります。
このように視床出血で生じる症状は多岐に渡りますが、他にも高次脳機能障害という後遺症を来す可能性もあります。
では、高次脳機能障害とは一体どのような病気なのでしょうか?

視床出血による高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と情動を含めた精神機能が障害されることで社会生活に支障が生じる障害です。
脳出血や脳梗塞、頭部外傷などの発症早期には多くの患者さんが経験する症状であり、高次脳機能障害の約80%は脳血管障害が原因となります。
通常は時間と共に軽快していきますが、脳血管障害の方では退院後も40%程度の方に高次脳機能障害の症状が残存すると報告されています。
前述したように視床は脳の中心部に位置しているため、周辺組織にも障害が及び、様々な高次脳機能障害を併発する可能性があります。
高次脳機能障害には具体的に下記のような障害があり、障害部位に応じて出現する症状は異なります。

注意障害

注意障害は主に右脳の広範囲な障害で出現しやすく、具体的には下記のような症状です。

  • 物事に一定時間集中できない
  • 注意散漫になる
  • 飽きやすい
  • 長く仕事をするとミスが出る
  • 話題が変わると追いていけない
  • グループでの話し合いができない

記憶障害

記憶障害は視床や側頭葉内部の障害で出現しやすく、具体的には下記のような症状です。

  • 物の場所が覚えられない
  • 人の名前を覚えらえない
  • 日時が覚えられない

失行・失語・失認

脳の部位に応じて、失行や失語、失認などが生じることもあります。
失行とは、体が動くにも関わらず以前まで出来ていた行為が出来なくなる、もしくはぎこちなくなることです。
失語とは、「話す」「聞く」「書く」「読む」などの機能が失われてしまうことです。
失認とは、物や人の形を認識できなくなることです。

遂行機能障害

遂行機能というのは、ある一連の動作を効率よく実施するための能力です。
例えば家事動作の一つである料理では、

  • 何の料理を作るか決める
  • 食材の準備、調理器具の準備など手順、段取りを考える
  • 適切な方法、順番を選択する
  • 考えた段取り通りに実行し、料理を作り上げる
  • 料理の味がどうかなど、結果を確認して評価する

このように、一連の流れは遂行機能によってなされています。
遂行機能が障害されると「計画的に物事を進められない」「ゴールや締め切りを決めることができない」「急な予定変更に対応できない」などの症状が出ます。

半側空間無視

半側空間無視は右頭頂葉の障害で出現しやすく、具体的には下記のような症状です。

  • 食事の時、左側にある食事を残す
  • 常に顎が右方向を向いている
  • 歩行時に左側にある物にぶつかる

社会的行動障害

上記で挙げた症状はいずれも、何かを「認知」する機能の障害であると考えられます。
それに対し、社会的行動障害は「情動や行動」の障害と言えます。
具体的には、下記のような症状が出現します。

  • 大声で怒鳴り散らす
  • 暴力をふるう
  • 意欲が低下し一日中ベッドから離れない

これらの情動の変化によって、社会行動そのものが障害された状態を指します。

まとめ

今回の記事では視床出血によって引き起こる高次脳機能障害について解説させて頂きました。
視床は脳のほぼ中央に位置しているため、視床出血によって視床そのものはもちろんのこと、増大する血腫による圧迫によって周辺組織にも障害が及び、様々な高次脳機能障害が出現する可能性があります
高次脳機能障害に対する治療は、現状ではリハビリテーションや本人の環境調整が中心となりますが、後遺症として残った症状が完全に消失することは難しく、また周囲の家族や同居人の負担も少なくありません。
そこで、近年では再生医療が注目されています。
再生医療は、自身の幹細胞を抽出して、増殖させて体内に戻す治療法です。
脳細胞は基本的に一度損傷すると自分で回復することはないと考えられていますが、幹細胞が脳細胞に置きかわり機能を再生してくれる効果が期待されています。
そうなれば、再生医療やr-TMS治療によって高次脳機能障害の治療にさらなる期待が持てるため、現在その知見が待たれるところです。

外部サイトの関連記事:視床出血と視床痛について
<参照元>
東京都医師会:https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/358-375.pdf
リハビリテーション心理職会:https://www.normanet.ne.jp/~RPA/index2_1.html

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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