この記事を読んでわかること
・アテトーゼ型脳性麻痺の原因がわかる
・アテトーゼ型脳性麻痺の症状がわかる
・アテトーゼ型脳性麻痺との向き合い方がわかる
胎児期や出生時に何らかの原因で脳にダメージを受け、運動障害や知的障害・言語障害など、生まれながらにさまざまな神経症状をきたす病気を脳性麻痺といいます。
出現する症状によって4つの病型に分類され、身体に不随意運動が生じる脳性麻痺をアテトーゼ型と呼びます。
この記事では、アテトーゼ型脳性麻痺の原因や症状について解説します。
アテトーゼ型脳性麻痺の主な症状とその原因
出生前の脳の発育過程で生じた脳の奇形や、出生前・分娩中・出生直後の低酸素などが原因で脳が広範に障害された結果、さまざまな運動障害・知的障害・行動障害・視覚障害・難聴・けいれん性疾患などの神経症状を起こす病気を脳性麻痺と呼びます。
脳性麻痺の4つの病型の分類
脳性麻痺は、主に下記の4つの病型に分類できます。
- 痙直型:筋緊張(筋肉のこわばり)や筋力低下を認めるタイプ
- アテトーゼ型:脚や体幹・腕など、身体をよじるような不随意運動が起こるタイプ
- 運動失調型:体の動きがうまく協調せず、筋力が低下するタイプ
- 混合型:上述のうち2つの病型が複合したタイプで、ほとんどが痙直型とアテトーゼ型の混合
このうち、最も多いのは痙直型で全体の70%、次いでアテトーゼ型が約20%と多く、どちらも一般的に知能が正常であることが多い病型です。
なんらかの原因で脳が障害を受け、どの部位が障害されるかで病型も変わりますが、病型によって原因が異なるわけではなく、どの病型でも主に下記のような病態が原因となります。
- 先天的な脳奇形
- 出生前・分娩中・出生直後の酸素欠乏
- 風疹やサイトメガロウイルスなどの感染症
- 早産児
- 髄膜炎
- 敗血症
- 外傷
- 重度の脱水
- 核黄疸
上記のような原因で脳が損傷され、アテトーゼ型脳性麻痺を発症すると、具体的に下記のような症状が出現します。
- 腕・脚・体幹などの筋肉が不随意にゆっくり動く(この運動をアテトーゼという)
- アテトーゼは強い感情の変化で生じやすく、睡眠中には起こらない
- 知能は正常であることが多く、痙攣発作なども起こりにくい
- 全身の筋緊張によってうまく発音できなくなることが多い
- 難聴
- 視線を上に向けられなくなる
アテトーゼ型と呼ばれるくらいなので、アテトーゼ型脳性麻痺ではアテトーゼの出現が最も代表的な症状であり、日常生活に与える影響も大きいです。
不随意運動と筋緊張の変動が日常に与える影響
では、具体的にどのような影響があるのでしょうか??
体幹や頭部におけるアテトーゼや筋緊張の影響によって、アテトーゼ型脳性麻痺の方は正常な姿勢を維持することができず、頭を正中位で保持できなくなります。
その結果、前方のものを見たくても見られず、スムーズに何かを注視することができなくなります。
(参照サイト:アトテーゼ型脳症麻痺児における姿勢運動障害と視覚昨日の関連性|J STAGE
また、頚部のアテトーゼによって頚椎に負担がかかり、時間の経過とともに頚椎の変形を招くことで頚椎症性脊髄症を発症する可能性があるため、注意が必要です。
頚椎症性脊髄症は、頚椎の変形に伴い頚椎の近隣を走行する脊髄が圧迫され、さまざまな神経症状をきたす疾患であり、上肢や下肢の麻痺やしびれをきたす可能性があります。
上位の頚椎で発症した場合、呼吸筋が麻痺して呼吸停止する可能性もあるため、早期から対策が必要な病態です。
(参照サイト:入院中の松葉杖免荷歩行自立に関わるスクリーニング項目の検討|J STAGE
正しい理解とサポートが生活の質を向上させる鍵
脳性麻痺を発症した子供は、適切な訓練や治療を行うことで、多様な神経症状を抱えつつもほとんどの場合、死亡することなく成人になります。
子供の成長のために特に重要な点は、早期からのリハビリテーションと、家族や介護者の脳性麻痺に対する正しい理解・サポートです。
例えば、左右いずれかの上肢に麻痺を認めない場合、あえて麻痺していない方の腕を拘束し、麻痺している方の腕でさまざまな作業・動作を日常的に行わせる、いわゆる「非麻痺側上肢抑制療法」では、麻痺側の上肢の機能改善が目指せます。
また重度の知的障害がなければ、子供本人も自身に起きている事態や、改善するためにどう行動すべきかを理解ができるため、多くの場合は正常な発育を遂げ、普通の学校に通うこともできます。
さまざまな神経症状を根治させることは困難ですが、脳性麻痺に対する上記のような知識や理解を持っておくことで、生活の質や子供の可能性を最大限向上させることができるため、周囲の大人は正しい理解を得ておくことが肝要です。
まとめ
今回の記事では、アテトーゼ型脳性麻痺について詳しく解説しました。
胎児期や出生時に、何らかの原因で脳に重篤な障害をきたし、さまざまな神経症状を残してしまう脳性麻痺。
神経症状の重症度次第で余命も大きく変わりますが、通常は成人に至るまで成長できます。
一方で、中には重篤な神経症状を残した結果、自身で食事摂取できなかったり、思うように身体を動かせず、若くして命を落とす子供もいます。
現状、唯一の改善策はリハビリテーションですが、それでも神経症状を根治することは不可能です。
一方で、近年では脳性麻痺に伴う重篤な神経学的後遺症に対する再生医療の効果が大変注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脳性麻痺による神経学的後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- アテトーゼ型脳性麻痺の特徴は?
- アテトーゼ型脳性麻痺の特徴は、上肢や下肢、体幹などにアトテーゼと呼ばれる不随意運動が起こる点です。
アテトーゼとは、身体をよじれるように動かす運動で、自身で意図せず勝手に動いてしまう点が特徴的です。 - アテトーゼ型脳性麻痺 頚椎症性脊髄症 なぜ?
- アテトーゼ型脳性麻痺では、頚部のアテトーゼによって頚椎に負担がかかり、長期的には頚椎が変形してしまう可能性があります。
その結果、頚椎周辺を走行する脊髄が圧迫され、頚椎症性脊髄症を発症します。
<参照元>
(1)脳性麻痺|MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/
(2)アトテーゼ型脳症麻痺児における姿勢運動障害と視覚昨日の関連性|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2008/
(3)入院中の松葉杖免荷歩行自立に関わるスクリーニング項目の検討|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/
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