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脊髄小脳変性症のリハビリ

           

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この記事を読んでわかること

脊髄小脳変性症とは
脊髄小脳変性症にはどんな種類があるのか
脊髄小脳変性症の治療・リハビリ


脊髄小脳変性症は一つの疾患名ではなく、運動失調症状をきたす変性症の総称で、主な症状は小脳性運動失調・パーキンソニズム・自律神経症状です。
日常生活上での転倒や、飲み込みの機能障害などが問題となる難病です。
この記事では、脊髄小脳変性症の種類や症状、治療法、リハビリ、再生医療の展望について詳しく解説していきます。

脊髄小脳変性症とは

小脳
脊髄小脳変性症(SCD:spinocerebellar degeneration)は病名ではありません。
運動失調を主症状とする変性疾患の総称です。
現在では脊髄小脳変性症の原因の多くが解明されつつありますが、一部まだ原因が解明されていない疾患も残されています。
多数の病型があり、発症経路・症状・進行速度ともに多種多様ですが、慢性的に進行する疾患であり罹病期間は10年から20年が大半を占めます。
治療をする際には、各疾患の進行段階に応じた評価・適切な治療が不可欠です。
この記事では、
脊髄小脳変性症にはどんな種類があるのか
脊髄小脳変性症はどんな症状が出現するのか
脊髄小脳変性症のリハビリ治療、再生医療の可能性について知りたい
などの疑問に対して、詳しく解説していきます。
脊髄小脳変性症についての理解を深めていきましょう。

脊髄小脳変性症の種類・症状

脊髄小脳変性症には、大きく分けて「孤発性(非遺伝性)」と「遺伝性」があります。
それぞれの発症割合、発症時期については以下の表の通りです。

孤発性 遺伝性
発症割合 約2/3 約1/3
発症時期 中年以降 小児〜中年

日本での発症数が多い疾患を中心に、孤発性・遺伝性の内容を詳しく解説していきます。

孤発性

孤発性には多系統萎縮症と皮質性小脳萎縮症があります。
また、多系統萎縮症にはオリーブ橋小脳変性症、シャイ・ドレーガー(Shy-Drager)症候群、線条体黒質変性症があります。
疾患別の主な症状は以下の表の通りです。

初発・主要症状 その他の兆候
オリーブ橋小脳変性症 小脳性運動失調 パーキンソニズム
自律神経症状
シャイ・ドレーガー症候群 自律神経症状 パーキンソニズム
線条体黒質変性症 パーキンソニズム 自律神経症状
皮質性小脳萎縮症 小脳性運動失調 なし

遺伝性

遺伝性の脊髄小脳変性症には、以下の7つの疾患があります。

  • 脊髄小脳失調症1型
  • 脊髄小脳失調症2型
  • 脊髄小脳失調症3型(Machado-Joseph病)
  • 脊髄小脳失調症6型
  • 脊髄小脳失調症31型
  • 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症
  • フリードライヒ運動失調症

ここでは日本での発症が多い、3型(Machado-Joseph病)、 6型、 31型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)について解説します。
疾患別の主な症状は以下の表の通りです。

初発・主要症状 その他の兆候
脊髄小脳失調症3型
(Machado-Joseph病)
発症年齢により
特徴が異なり
IからIV型に分類される
小脳性運動失調 痙性
パーキンソン症状
末梢神経障害
眼球突出
眼球運動障害による複視
脊髄小脳失調症6型 小脳性運動失調 稀に
ジストニア、痙性
末梢神経障害、めまい感
脊髄小脳失調症 31型
日本特有の遺伝性SCD
小脳性運動失調 目立った症状はない
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA) 小脳性運動失調 【若年者】
てんかん発作
ミオクローヌス
【高齢者】
舞踏病
認知機能障害、精神症状

脊髄小脳変性症は、起因疾患によって多種多様な症状が見られます。
起因となる疾患をよく理解し正しく評価した上で、治療・リハビリを実施することが重要です。

脊髄小脳変性症の治療・リハビリ

現段階では脊髄小脳変性症が完治する、あるいは進行を止めるという根本的な治療法は確立されていません。
そのため病気の進行を遅らせる、また病気の進行に伴って生じる様々な症状を緩和するという対症療法をメインに治療を進めていきます。
また社会生活、日常生活の質を維持するために積極的なリハビリを行います。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、また日常生活上のケアをする看護師や介護士とも連携を図りながら、個々の患者さんに合わせたリハビリテーションの実施が必要です。

治療内容

症状に応じた治療方法は主に以下の表の通りです。

症状 治療薬・治療法
小脳失調 内服や注射薬
パーキンソニズム 抗パーキンソン病治療薬
膀胱直腸障害(便秘や排尿障害など) 薬剤によるコントロールや導尿
痙性 抗痙縮薬

リハビリ内容

リハビリの目的は、ADL(日常生活動作)・QOL(生活の質)の維持です。
そのために、まずは日常生活上で必要な環境設定・補助具の選定を行います。
主な介入アプローチは以下の通りです。

  • 家屋の段差解消
  • 手すり装備
  • トイレ・浴槽の改造
  • 自助具(食事用・整容用・調理用など)の選定や作成
  • 杖・歩行器・車椅子の選定
  • コミュニケーション機器の確保
  • ご家族さんへの介助指導
  • など

脊髄小脳変性症は進行性の病態である為、症状の経過に応じて適宜環境設定・補助具を再考します。
環境設定・補助具の選定を行なった上で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は以下のような訓練を実施します。

  • 関節可動域訓練
  • 筋力強化訓練
  • 立ち上がり訓練
  • 歩行訓練(平地、エアロバイク)
  • 視覚誘導によるバランス訓練
  • 動作の反復訓練
  • 【フレンケル体操】
  • 仰向けで目標物を目で見ながら足を目標物に正確に当てる
  • 【重り負荷下での運動】
  • 運動制限の促通と過剰な動揺の抑制が目的で歩行訓練にも適用されることがある
  • 弾性緊縛帯
  • 二の腕や太ももに弾性包帯を巻き、動作時の手足の動揺を抑制することが目的
  • 【プレーシング】
  • 手足を一定の位置で保持する訓練で筋の同時収縮を運動学習することが目的
  • 【発声訓練】
  • 摂食訓練(食べる訓練)
  • 排痰訓練(痰を出す訓練)
  • など

介護保険サービスは本来65歳以上の方が対象ですが、脊髄小脳変性症は介護保険の特定疾患である為、40歳以上65歳未満の方でも利用可能です。
介護が必要な際には介護保険の認定を受けて、入浴サービス、訪問介護・訪問看護・訪問リハビリなどの福祉サービスも積極的に取り入れて、QOL(quality of life)の向上に務める必要があります。

脊髄小脳変性症に対する再生医療の展望

医療が高度に発達している近年でも、脊髄小脳変性症に対する治療法は対症療法が大半を占めています。
そんな中、脳卒中や脊髄損傷の治療で注目を浴びている再生医療が、神経変性疾患である脊髄小脳変性症にも応用できるのではないかと、多くの研究者が注目しています。
間葉系幹細胞を用いた再生医療が、神経変性疾患の革新的な治療法として期待されているのです。
日本では健常者ドナー由来の体性幹細胞を用いた、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品ステムカイマル®(台湾で開発された薬)が2018年12月に厚生労働大臣からの承認を得て、希少疾病用再生医療等製品に指定されました。
現在、助成金や税制措置等、国からの支援も受けることができるようになっています。
日本でのステムカイマル®を用いた試験は、2019年11月に開始され2022年5月に第II相試験が終了し、現在解析が待たれています。
また台湾や米国、韓国でも同様に継続して臨床試験が実施されており、データ解析が行われています。

まとめ

脊髄小脳変性症の病態・治療・リハビリについて解説しました。
脊髄小脳変性症の再生医療は、研究室レベルから実際の患者さんへの投与へと確実に進歩しています。
症状の進行は緩やかな疾患が多いものの、ふらつきやパーキンソニズム、自律神経失調症状など、日常生活での阻害因子症状の多い脊髄小脳変性症。
一日も早く再生医療が臨床へ導入されることが期待されます。

Q&A

運動失調症のリハビリは?
運動失調症に対するリハビリには、代償的アプローチと回復的アプローチがあります。代償的アプローチは、日常生活上での環境の最適化や装具・自助具の使用など、 外部の代償を用いて不足している機能を補うことを目的としています。それに対し回復的アプローチは、根本的な障害の改善を目指すことを目的としています。

失調性歩行の特徴は?
失調性歩行は脳の障害部位によって異なります。大きく分けて、小脳性・前庭迷路性・脊髄性がありますが、ここでは罹患数の多い小脳性の運動失調歩行について解説します。小脳性運動失調歩行には、「酩酊歩行」と「ワイドベース歩行」があります。酩酊歩行はふらつきが顕著で酔っ払いのようにフラフラした歩行のことを指します。ワイドベース歩行は、歩幅を肩幅より大きく広げ、支持基底面を広げる(バランスを取りやすくする)歩行のことを指します。このように、失調性歩行と一口に言っても様々な歩様があります。

<参照元>
【運動失調の運動療法・リハビリテーション】:https://kango.medi-care.co.jp/blog/237
【難病指定】:https://scd-msa.net/family/application/grant/
【脊髄小脳変性症の種類】:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/spinocerebellar_degeneration/
【脊髄小脳変性症・孤発性】:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4879
【脊髄小脳変性症・遺伝性/治療】:https://agmc.hyogo.jp/nanbyo/ncurable_disease/disease03.html#02
【リハビリ内容】:https://www.kyoureha.info/blank-46
【介護保険サービスについて】:https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/sick/SCA/
【ステムカイマル】:https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/22/06/08/09593/
【書籍】リハビリテーションのための神経内科学・安藤一也、杉村公也


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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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