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急性散在性脳脊髄炎の症状や原因と予後について

           

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急性散在性脳脊髄炎とはウイルス感染やワクチン接種後などに生じることがある、脳・脊髄の病気です。
自分の細胞を誤って攻撃してしまう、自己免疫性が考えられています。
コロナ禍でも話題になった疾患です。
この記事では急性散在性脳脊髄炎の症状、治療などについて解説します。

急性散在性脳脊髄炎とは

神経細胞
急性散在性脳脊髄炎(Acute Disseminated encephalomyelitis; ADEM)は、「急な経過」で「脳や脊髄」の「様々な場所が散在して」障害される疾患です。
神経細胞を覆っている髄鞘が障害されることで症状をおこします。
神経細胞を電線とすると髄鞘はその周りを覆うビニールの役割を担います。また、髄鞘は効率よく電気活動を行う役割があります。
神経細胞が露出して直接障害されるだけでなく、電気活動が非効率となることで症状を引き起こします。
病態が似た他の疾患には、多発性硬化症視神経脊髄炎があります。

急性散在性脳脊髄炎の症状

脳や脊髄の様々な場所で病変を起こすことがあり、障害された部位により出てくる症状も異なります。
脳で炎症が強く起れば、発熱、頭痛、悪心・嘔吐、痙攣などが起きます。
脳の部位により片麻痺(左右どちらか一方の手足が動かしにくい、もしくは感覚の異常がある状態)や失語(思ったように言葉が出ない、言葉の理解ができない)、嚥下障害(飲み込みにくい)、構音障害(喋りにくい)などの症状が出ます。
脊髄で障害が起きれば、その脊髄より下の機能が損なわれてしまいます。
具体的に両方の手か足、もしくは両方を上手く動かすことができない、感覚が悪い、尿を出す事ができない、便秘などです。
脳幹や脊髄の中でも上の方など、呼吸と強く関わっている部位が障害されると呼吸障害が起きてしまうこともあり得ます。

急性散在性脳脊髄炎の原因

症状は髄鞘の破壊により引き起こされます。
破壊される原因は、自分の免疫機能が、自分の組織を誤って攻撃してしまう「自己免疫性」が考えられています。
免疫の異常にはワクチン接種やウイルス感染がきっかけとなることがあります。
急性散在性脳脊髄炎を発症した70〜80%では何らかの感染症が先に起こっていると報告されています。
先に起こる感染のほとんどは上気道感染(かぜ)が多いです。
2019年から世界で流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も急性散在性脳脊髄炎のきっかけとなります。
COVID-19で入院した患者のうち、最大73%で頭痛や神経症状があるとの報告があります。
その研究では対象の2533人のうち、13人が急性散在性脳脊髄炎と診断されました。
コロナワクチンでも急性散在性脳脊髄炎の報告があり、厚労省もまとめを発表しています。
コロナワクチンが特に多いということではないようですが、ワクチンを打った数週間に発症した症状では急性散剤脊髄炎を考える必要があります。

急性散在性脳脊髄炎の治療・予後

治療は免疫の暴走を食い止めることを目的に行います。
多くがステロイドパルス療法を行い、治療で効果が見られない場合には血漿交換療法免疫グロブリン大量療法を選択します。
この治療と並行しながら対症療法を行います。痙攣が強い場合には抗痙攣薬を用い、呼吸障害が強い場合には、人工呼吸器で呼吸管理を行うなどします。
小児での死亡率は1〜2%と報告されています。
成人は小児と比較して重症化しやすく、死亡率も高いと報告されており、研究により成人の死亡率は10%と言われています。
髄鞘の障害の程度により、後遺症があることも少なくないです。
リハビリテーションを行う為に、回復期リハビリテーション病院に転院する例もあります。

再生医療

急性散在性脳脊髄炎の後遺症に対して、再生医療の効果や適応は明確にはなっていません。
しかし、似た病態である多発性硬化症に対する幹細胞移植は病状の進行を食い止め、症状を改善させることが明らかになっています。
当院では多発性硬化症に対する再生医療は導入しておりませんが、脳梗塞や脊髄損傷の後遺症に対しての幹細胞点滴(ニューロテック®)を行っています。
また、並行してリハビリを行う、再生医療×同時リハビリ™により、効果をできるだけ伸ばす取り組みを行っています。

まとめ

今回は急性散在性脳脊髄炎について解説しました。
コロナ禍でも注目された病気の一つではありますが、病態や治療などが十分に解明されているわけではありません。
再生医療も含め、今後の更なる研究に期待したいです。

Q&A

散在性脳脊髄炎(ADEM)の死亡率は?
急性散在性脳脊髄炎の死亡率は小児では1〜2%と報告されています。
成人の研究は十分ではないですが、小児よりも重症になりやすく死亡率も高くなりやすい(10%前後)と報告されています。

散在性脳脊髄炎(ADEM)の初期症状は?
急性散在性脳脊髄炎は障害部位により多彩な症状が出ます。
脳が障害されれば、発熱、悪心・嘔吐、頭痛やけいれんが起き、脊髄が障害されれば手足の麻痺や歩きにくさ、尿閉などの症状が出ます。
関連記事▶︎ 急性散在性脳脊髄炎とは

<参照元>
Ismail, I. I., & Salama, S. (2022). A systematic review of cases of CNS demyelination following COVID-19 vaccination. Journal of neuroimmunology, 362, 577765.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34839149/
Maury, A., Lyoubi, A., Peiffer-Smadja, N., de Broucker, T., & Meppiel, E. (2021). Neurological manifestations associated with SARS-CoV-2 and other coronaviruses: A narrative review for clinicians. Revue neurologique, 177(1-2), 51–64.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33446327/
Paolilo, R. B., Deiva, K., Neuteboom, R., Rostásy, K., & Lim, M. (2020). Acute Disseminated Encephalomyelitis: Current Perspectives. Children (Basel, Switzerland), 7(11), 210.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33153097/

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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