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幹細胞療法による脳出血治療の可能性

           

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一度損傷した神経細胞はこれまで再生しないと考えられてきましたが、近年、再生医療の発達によってその常識が覆る可能性があります。
すでに国内では急性期脳梗塞患者に対する再生医療の治験が行われており、脳出血への治験についても気になるところです。
この記事では、幹細胞療法による脳出血治療の可能性について詳しく紹介します。

脳出血についての基本知識

骨髄由来間葉系幹細胞
まずは脳出血という病気の基本知識を振り返りましょう。

脳出血の概要

脳出血とは、脳を栄養する血管がなんらかの理由で破綻し、頭蓋骨内で出血を引き起こす病気です。
主な原因は高血圧であり、長期的な高血圧に伴う動脈硬化によって硬く・脆くなった血管に負担がかかることで、動脈が破綻します。
また、中には先天的に動脈瘤(動脈のコブ)や動静脈奇形などの血管奇形を持ち、脳出血のリスクが高い方もいます。
脳出血が生じると、出血部位に隣接する脳組織が強く圧迫されることで、その部位が本来担っている機能が障害されるため、出血部位、出血量によって出現する症状もさまざまです。
特に出血しやすい部位として、被殻・視床・小脳・皮質下などが挙げられます。

脳出血の症状と経過

脳出血を発症すると、最初に突然の頭痛を自覚し、それとともに麻痺や小脳性失調などの運動障害や、しびれなどの感覚障害が出現します。
しかし、出血量が多い場合は頭蓋骨内に血液が充満し、頭蓋骨内の圧(これを頭蓋内圧という)がどんどん上昇するため、隣接していない神経組織まで広範に障害を受けることとなり、注意が必要です。
この場合、局所的な神経症状には留まらず、意識障害や呼吸停止・循環破綻やけいれん発作など重篤な症状が出現する可能性があります。
出血量や手術部位・意識レベルに応じて手術を行うか、もしくは保存療法(血圧コントロールなど)を行い、出血のコントロールや脳細胞の保護を行います。
出血をコントロールできれば、血液が再吸収されるにつれて意識状態は回復し、神経症状もある程度は改善しますが、多少なりとも後遺症が残ってしまうのが一般的な経過です。

脳出血後遺症患者への再生医療とリハビリとは

急性期の脳出血に対する治療法は、現状保存療法と手術療法のみです。
これにより運よく命が助かったとしても、その後残った後遺症に対してリハビリテーションなどの理学療法を行う必要があります。
一度障害を受けた神経細胞は基本的に再生しないと考えらえているため、後遺症に対して根治する術はなく、リハビリテーションによる機能回復しか手立てがない、というのが現状です。
しかし、再生医療の発達がこの現状に一石を投じる可能性があります。
再生医療とは、脳細胞にも分化可能で、自己複製能を持つ幹細胞を用いて、障害された脳細胞の機能再生を促す治療法です。
わかりやすく言えば、体内に投与した幹細胞が脳細胞に変身(分化)し、しかも自分のコピー細胞をたくさん作り出し(自己複製)、脳を元に戻すという治療法です。
実際に、2023年1月現在の日本では脳梗塞に対する再生医療の治験が4つ終了し、1つは現在進行形で進んでおり、実用化に向けて順調に進んでいます。
再生医療のさらなる発達と、リハビリテーションとの併用によって、脳出血後の後遺症も改善する可能性があります。

幹細胞治療がもたらす脳出血後遺症改善の可能性

幹細胞治療がもたらす脳出血後遺症改善の可能性は高いです。
実際に、すでに治験の行われている脳梗塞に対する再生医療では、下記のような効果が期待されます。

  1. 損傷した脳細胞の再生と機能回復
  2. 破綻した血管の新生

前述した脳細胞の再生と機能回復以外に、幹細胞は脳細胞以外にも分化可能であり、破綻した血管にも分化できるため、損傷した脳の血管を再生したり、新たな血管を新生する効果が期待できます。
そうなれば、途絶した神経細胞への血流が再開し、機能回復が期待できるわけです。
当然、脳出血患者でも同様の効果が期待できるため、理論上は脳出血後の機能回復にも効果が期待できます。
しかし、日本では脳梗塞患者に対して脳出血患者数が著しく少ないことから、現状治験が進んでいません。
一方で、北海道大学脳神経外科では、今後慢性期脳出血患者に対する再生医療の治験を実施することが予定されており、2024年4月から投薬の予定です。
これらの治験でデータが揃えば、より効果的な治療法として確立されることでしょう。

まとめ

今回の記事では、幹細胞療法による脳出血治療の可能性について詳しく解説しました。
再生医療では、分化能と自己複製能を併せ持つ幹細胞を投与し、脳出血によって損傷した神経細胞の再生や機能回復を促します。
実際に、これまでに行われた急性期脳梗塞患者に対する再生医療の治験結果を見ると、その安全性と有効性が示されています。
今後、より患者数の多い慢性期脳梗塞や慢性期脳出血に対しても治験が進めば、現状のリハビリ効果をさらに増幅できる可能性もあるため、その知見が待たれるところです。

Q&A

脳内出血の幹細胞治療とは?
脳内出血の幹細胞治療とは、脳細胞に分化可能な幹細胞を体内に投与し、脳出血によって損傷した神経細胞の再生や機能回復を促す治療法です。また、破綻した血管の新生も期待できます。

脳出血の原因はストレスですか?
ストレスによって血圧が大きく変動すれば脳出血を発症する可能性があります。また、ストレスは持続的な交感神経の活性化を招き、高血圧やそれに伴う動脈硬化の原因にもなるため、脳出血の発症リスクを増加させる可能性もあります。

あわせて読みたい記事:脳出血の改善方法と予防策
<参照元>
・北海道大学 医学部脳神経外科 再生医療について:https://kawabori-neurosurgery.com/saisei/
・MSDマニュアル 脳内出血:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/07-神経疾患/脳卒中/脳内出血


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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