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脊髄損傷による起立性低血圧とは

           

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脳と体をつなぐ重要な架け橋である脊髄を損傷してしまうと、麻痺やしびれなど多くの機能障害が生じます。
その症状の1つである起立性低血圧は起立時に血圧が低下する病気であり、様々な症状が出現し日常生活にも支障をきたします。
そこで本書では、脊髄損傷における起立性低血圧の病態や原因、対応について分かりやすく解説していきます。

脊髄損傷とは

脊髄損傷とはその名の通りなんらかの原因で脊髄を損傷した状態です。
原因としては交通外傷や転倒などが多く、損傷部位によっては多くの神経症状が残ってしまう病気です。
脊髄は脳から直接繋がって、上から順に頸髄、胸髄、腰髄、仙髄と高さでその名称が変わっていきます。
役割としては脳からの指令を筋肉に伝えて運動をコントロールをしたり、筋肉や皮膚からの様々な感覚の情報を集めて脳に送っているため、まさに体内の架け橋のような存在です。
このように重要な役割を担っている脊髄だからこそ、損傷してしまうと損傷したレベルから下は全て機能が障害されてしまい大きな影響が出てしまいます。
脊髄の中には運動神経だけでなく、感覚神経や交感神経など様々な種類の神経が通っていますので、脊髄損傷の高さが高位であればあるほど症状も多岐に渡ります。
運動神経の損傷は麻痺として、感覚神経の損傷はしびれなどの感覚異常として体に残りますが、交感神経などの自律神経の損傷は多くの内臓や生体反応に影響を及ぼしてしまいます。
そもそも脊髄内を走行する自律神経には交感神経と副交感神経という2つの神経が存在し、それぞれが異なる役割を持つことで生体反応に応じた様々な調整を行なっています。
例えば、交感神経が活性化することで血管は収縮し血圧は上昇しますが、副交感神経は血管を弛緩させて血圧を低下させます。
血圧以外にも排便、排尿、心拍数、体液の分泌、睡眠、体温など多くの生理機能が、交感神経と副交感神経のバランスで調整されています。
脊髄損傷による自律神経の損傷は、これらの機能をうまくコントロールできなくなってしまうのです。
そのうちの1つに起立性低血圧と呼ばれる症状があります。

起立性低血圧とは?

脊髄損傷による自律神経、特に交感神経の損傷は起立性低血圧と呼ばれる病気を併発してしまいます。
起立時には血液が重力に伴って下肢の方向に多く取られてしまい、脳血流や心臓に戻ってくる血液量が低下してしまいます。
それを感知した自律神経は交感神経を自動で活性化させて血管を収縮させたり心臓の拍動を強く、早くさせることで脳血流を保つように反応します。
このように起立時の血圧や脳血流の低下を、本来であれば交感神経の働きで未然に防いでくれているのです。
しかし交感神経が損傷した場合これらの生理反応が起こらなくなるため、起立時に脳血流が低下してしまい、脳に十分な酸素を供給できなくなるためふらつきやめまい、場合によっては意識を消失してしまう可能性があります。
これを起立性低血圧と呼びます。
腰髄の損傷であれば下肢の筋肉や血管の収縮に影響が出てしまいますが心臓のポンプ機能には影響がないため、起立性低血圧は起こりません。
しかし第5-6胸髄以上のレベルの損傷となると、心臓のポンプ機能や内臓の血管のコントロールができなくなってしまうため起立性低血圧を罹患する可能性が高まります。
特に最も頻度の高い頸髄損傷の場合は、より注意が必要です。

脊髄損傷後の起立性低血圧に対する対応

起立しただけで血圧が下がりめまいがする!なんて症状を毎回味わわないためにも、その対処法をいくつかご紹介します。

腹帯を巻く

起立性低血圧に対して、最も手早く、かつ効果的な予防法が腹帯を巻くことです。
腹帯を巻くことで外から血管を収縮させる効果が得られるため、血圧の低下をある程度予防できます。
腹帯の圧にもよりますが、不快感のない程度の圧力で巻きつけても20-40mmHgほどの血圧上昇効果を得られます。

脱水を避ける

脱水状態では起立時の血圧低下がさらに顕著になってしまいます。
ある程度の水分摂取を行い、循環血液量が不足していない状態で立ち上がったほうが症状が緩和される可能性は高いです。

弾性ストッキングを巻く

弾性ストッキングを下肢に装着することで外から下肢の血管を圧迫させることが可能となり、心臓に戻る血液量を増加させる効果が期待できます。
血管の収縮効果は腹帯ほどではないため血圧維持の面では腹帯に劣りますが、気軽に装着できるメリットがあります。

起きたり寝たりを繰り返す

症状の出現や転倒に留意しながら、起きたり寝たりを繰り返すことで交感神経を刺激し機能改善を期待できます。
また下肢の筋力増強の面でも効果が期待できますが、症状を誘発する可能性もあるため注意が必要です。

まとめ

本書では脊髄損傷における起立性低血圧についてまとめました。
特に上位脊髄の損傷で起きやすく、リハビリにも影響するため早期介入が必要となりますが、神経は一度損傷すると回復しないと言われてきたため治療が難しい病気の1つでした。
しかし、近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
骨髄から採取した幹細胞を点滴から投与すれば、幹細胞が神経に定着して死んだ神経細胞の代わりとなり再び機能が甦る可能性があるのです。
再生医療を併用すれば、リハビリによる機能回復にさらなる期待が持てます。
現在、多くの治療結果を積み重ねており、その成果が期待されています。

外部サイトの関連記事:脊髄損傷が治る可能性について

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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