くも膜下出血の後遺症でみられる記憶障害について | 脳卒中・脊髄損傷|麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

くも膜下出血の後遺症でみられる記憶障害について

           

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毎年10万人あたり20人がかかると言われるくも膜下出血。
命を落とすことや麻痺が残ることがありますが、よくみられる後遺症に記憶障害があることについて、よく知らない方もおられるかもしれません。
今回は、くも膜下出血の後遺症としてみられる記憶障害に焦点を当て、その症状やリハビリ、日常生活の工夫などについてご説明します。

くも膜下出血の後遺症としてみられる記憶障害

脳風船
まず、くも膜下出血の後遺症としてみられる記憶障害の特徴についてご紹介します。

くも膜下出血の後遺症

くも膜下出血は、脳とその周囲の膜との間の空間(くも膜下腔)で出血することで、その多くが脳動脈瘤と呼ばれる血管にできたコブが破裂することで起こる、脳血管障害の一種です。
出血は脳の表面で起こりますが、脳そのものや脳を覆う膜を刺激し、激しい頭痛や嘔吐を起こし、意識を失うこともあります。
適切に治療を開始しないと、半分近くの方が命を落としてしまいますが、命が助かっても、約2割の方が後遺症として手足の麻痺や言語障害を起こすこともある病気です。
くも膜下出血の後遺症のうち、一般的にみられる後遺症が高次脳機能障害です。
高次脳機能障害とは、記憶や思考、計算や判断などを行う知的な脳機能に障害を生じることです。
くも膜下出血の後遺症として発生する高次脳機能障害の多くはリハビリや時間の経過とともに改善しますが、記憶力の問題は持続することがあります。
また高次脳機能障害の他の症状には、の半分に注意が向かない、認識できないと言った半側空間無視、またひとつのことに集中できない、あるいは注意をひとつのことから別のことに移すことが難しいといった注意障害などがあります。

くも膜下出血の後遺症としてみられる記憶障害の症状

わたしたちの記憶は、記憶している時間から短期記憶と長期記憶と分けられます。
短期記憶は、例えば電話番号を覚えることで、電話をかけるまで覚えていても、そのあとは忘れてしまうことが一般的です。
また短期記憶は、個人差はあるものの保持することができる記憶量に限界があります。
他方、長期記憶は、親戚の顔と名前を覚えている、友人と旅行に行ったことを覚えているなど、意味のあることやエピソードを契機に長く覚えていることができるものです。
くも膜下出血の後遺症としてみられる記憶障害は、どちらかというと短期記憶が影響を受けることが知られています。
通常、出血する前の記憶は影響を受けません
しかし、新しい情報や事実を思い出すことに問題が発生することがあります。
例えば待ち合わせの場所や時間を忘れる、思い出せないなどです。
また、ある程度の計画を必要とする課題の実施が困難となることがあります。
例えばお茶を作るなどの単純なタスクでも、計画して順番にこなしていく必要があるタスクが、特に実施できなくなる傾向があります。
このような症状は、手足の麻痺など目立ちやすい後遺症に比べ、くも膜下出血を発症した直後は目立ちにくいものです。
また記憶障害の症状に波があることもあり、発見が遅れてしまうことがあります。

くも膜下出血の後遺症による記憶障害への対処法

次に、くも膜下出血後に記憶障害がある方への対処法として、リハビリと自宅でのケアについてご紹介します。
リハビリテーション

記憶障害のリハビリ

くも膜下出血後のリハビリには、手足が麻痺した運動障害に対するリハビリ、食事の飲み込みや言葉を話しことが困難になってしまう嚥下障害や言語障害に対するリハビリなどがあります。
記憶障害に対するリハビリには、重症度やその他の認知障害の有無によって異なりますが、記憶する方法や補助的な手段を使う訓練をすることがあります。
例えば、目に見えるものと言葉を結びつける覚え方を練習する視覚イメージ法、覚える必要があるもののリストを、頭→額→鼻→口…のように体の部位と紐付けて覚えていくペグ法など、記憶法を使った覚え方を繰り返し練習する方法などもあります。
しかし、本人はこの様な複雑な方法を身につけていることも通常は忘れてしまいます。
手帳やスケジュール帳、モバイル端末など、外部の記憶媒体に繰り返しアクセスすることを、訓練することがよく用いられます。
つまり、推奨される記憶方法としては、『情報の入力時に十分注な意を払い情報を反復復唱し、メモ帳やスケジュール帳を活用し、論理的に情報の想起を試みること』、それを繰り返す。
身体に染み付けることになります。

記憶障害のある方に対し、ご家族にできること

記憶障害のリハビリを補うために、ご家族ができることがいくつかあります。
例えば、メモ用紙はすぐに使えるようにしておく、大切なものの置き場所は決めておくなど、環境の調整は重要です。
また日課を決めて目に見えるところにメモを置き、そのメモをみながら毎日ルーチンとしてやるべきことを繰り返すことで行うべきことが習慣化できます。

なお記憶障害のために以前できていたことができなるため、イライラしたり、逆にやる気が起きなくなったりされることがあります。
そのような時は、ご本人を責めたり、ストレスをかけたりすることがないような配慮も必要です。


まとめ

くも膜下出血後の記憶障害について、その症状の特徴や対処法についてご説明しました。
くも膜下出血後の記憶障害は、気になるほどのものではない場合もあれば、日常生活に支障をきたすレベルの場合もあります。
また、一時的な場合もあれば永続的な場合もあります。
でも根気強く対処することで改善が期待できますので、ぜひ諦めないでリハビリや自宅でのケアを続けていきましょう。



貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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