この記事を読んでわかること
・小脳性運動失調の原因
・口以外からの栄養摂取法
・脳梗塞後の胃ろうと寿命の関係
小脳性運動失調は血管障害や変性、腫瘍などの原因により歩行障害や協調運動障害、構音障害などを生じた状態です。
原因が明らかであれば治療を行いますが、変性のような根治治療が難しい疾患もあります。
この記事では小脳性運動失調の症状や原因について、再生医療と交えながら解説を行います。
小脳性運動失調の原因となる疾患
小脳は子頭部の下方にある脳の一部であり、外観はカリフラワーのようになっています。
小脳が障害されると小脳性運動失調を呈し、小脳の障害の原因には以下のようなものがあります。
- 腫瘍
- 小脳脳幹部腫瘍、リンパ腫、原発性、転移性
- 血管障害
- 小脳や脳幹の梗塞、出血、血管の奇形
- 炎症
- 感染(ウイルス性やプリオン病など)、自己免疫疾患(多発性硬化症、膠原病による脳炎など)
外傷・奇形(キアリ奇形など)
代謝障害・内分泌疾患(アルコール中毒、ビタミンB1欠乏症、甲状腺機能低下症など)
変性疾患(脊髄小脳変性症)
機能性(明確な原因が見つけられない、病変がない) - その他
- ミトコンドリア病など
診断までにはこれらの症状が「どのような経過で出てきたのか」が重要になります。
年単位でだんだん悪くなる緩徐進行であれば変性疾患を思い浮かべますし、月単位での経過は腫瘍や自己免疫性疾患を思い浮かべます。
もっと短い日・週単位で悪くなる場合は感染症を疑いやすく、「何時何分、何をしているときに起こった」と突然症状が出た場合は血管障害を想起します。
特に変性疾患の一つである脊髄小脳変性症では、遺伝性があるものが多くありますので家族歴も重要になります。
小脳性運動失調の主な症状とは?
小脳性運動失調では、主に歩行や手足の協調運動に障害が見られます。
まず、運動失調とは目的の動作に対する様々な動きの協調性が低下して、円滑に動作を遂行できない状態とされます。
小脳に病変がある場合の自覚症状には、歩行がふらつく、体が揺れる、字が書きにくい・線が定まらない、言葉がうまく言えない・呂律が回らない(構音障害)、指先を使う細かな動作が行えないなどがあります。
小脳性運動失調による歩行は「酩酊歩行」とも言われ、「酔っ払ったような歩き方」が特徴で、足を横に大きく広げて(歩隔の拡大、wide-based)、体を前後左右に大きく揺らして歩きます。
構音障害も併発して何を言っているのか分からなくなるので、本当に酔っ払ったように見えます。
小脳以外にも脊髄や末梢神経の障害で同じような症状が出る場合があります。
脊髄障害との大きな違いは、深部感覚という体の位置や運動を認知する感覚が保たれていることです。
脊髄障害による運動失調では体や関節の位置が分からないため、目で確認して調整する視覚での代償が必須になります。
「暗い場所で症状が強くなる」など訴える場合もありますが、小脳性運動失調の場合は暗くても明るくても症状が出現します。
これらの症状は、病気の進行によって重篤化するため、早期発見と治療が重要です。
小脳の役割と運動調節への関係と影響
小脳の基本的な役割として、
- 協調性(目的の動作に対して、関連する器官を適切に連動させて動作の完遂を目指す)
- 予測性(日常生活で行われる程度の速さの動作に対して、予め運動の軌道を予測する)
- 運動学習と適応(動作を無意識のうちにできるように体が覚えていく)
などがあります。
これらの多くは実験で証明されてきました。
協調性については目的の動作に対して、健常者とは真逆の働きをする筋肉の活動から始まります。
ゆっくりの動作や自由度を下げた動作では症状が起きずとも、速く行う・目的を持って行う場合に症状が強く出ることから予測性が推測されました。
学習については複数の考え方がありますが、少なくとも小脳障害があると筋緊張が低下し、それにより適切な情報が入らないことも学習に影響しているのではないかと考えられています。
小脳も脳の一部であり、大脳皮質から視床、橋を経由する経路で様々な連絡を取り合っているので、この経路が遮断されても同様の障害が起こります。
小脳性運動失調についてのまとめ
この記事では小脳性運動失調について解説しました。
一般に神経は一度障害されてしまうと、回復がしにくいと言われています。
小脳性運動失調の原疾患を治療しても、後遺症が残ってしまう場合もあります。
そもそも脊髄小脳変性症のように有効な根治治療が確立されていない疾患もあります。
一方で、近年では再生医療が新たな治療法として期待されています。
脊髄小脳失調症に対してはiPS細胞を利用して発症メカニズムがわかり、臨床試験も行われています。
血管障害の後遺症に対しては間葉系幹細胞などの再生医療を行うことができます。
また、後遺症が残るということはそれだけリハビリテーションも重要になります。
当院でもニューロテック®として再生医療を導入し、神経再生医療×同時リハビリ™で患者さんの生活の質をできるだけ上げる工夫をしています。
原因や治療が未解明なものはまずはその発展を、同時に再生医療など新規の治療にも期待したいものです。
よくあるご質問
小脳運動失調の症状は?
小脳性失調では、歩くときにふらつく、体が揺れる、呂律が回らない、字が書きにくいなどの症状が生じます。安静時ではなく運動時に生じることが特徴で、時にバランス能力も低下します。
小脳症状の失調歩行とは?
小脳症状の失調歩行の特徴は、歩行中に体が揺れること、足を横に広げて(歩隔を広げる、wide-basedとも)歩く、歩幅が短くなる、歩行速度が低下するなどがあります。
<参照元>
神経メカニズムから捉える失調症状: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/2/56_56.88/_pdf
小脳失調症の病態と治療―最近の進歩:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/3/101_669/_pdf
小脳症候の病態生理:https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/049070401.pdf
あわせて読みたい記事:小脳性運動失調と小脳性構音障害の関連性
外部サイトの関連記事:脳梗塞後の日常生活の管理と家族支援
コメント