この記事を読んでわかること
・脊髄損傷における身体障害者手帳
・脊髄損傷退院後の支援
・脊髄損傷における介護保険の適応
脊髄損傷は非常に重篤な後遺症を残す可能性のある疾患です。
患者本人のみならず家族や社会支援などのサポートが必須となります。
特に身体障害者手帳申請による障害福祉サービスと、65歳以上の脊髄損傷患者が受けることのできる介護保険サービスについてはしっかり理解する必要性があります。
脊髄損傷における身体障害者手帳の申請
脊髄には頸部の頸髄、胸部の胸髄、腰部の腰髄が存在し、仮に損傷すると損傷部位から下の神経が全て障害されます。
つまり腰髄の損傷なら下半身のみの症状ですが、頸髄の損傷は下半身はもちろんのこと上半身にも影響が出ます。
もし仮にあなたやあなたの家族が脊髄損傷になった場合、医学的な治療は医療機関に委ねるしかありませんが自分達にもやるべきことがたくさんあります。
受傷者の年齢にもよりますが、介護保険の適応かどうかを判断し、同時に身体障害者手帳を申請することです。
介護保険については後述しますが、脊髄損傷の場合は65歳以上でなければ適応になりません。
身体障害者手帳申請に年齢は関係ありませんので、まずはこちらについて説明します。
身体障害者手帳申請の際には、障害の程度により1級から6級に分類され、それぞれ受けられる支援や介護が異なります。
1級に近づくほど障害の程度は強くなります。
市町村に申請し、審査会で程度を評価され最終的に何級か決定します。
ここで具体的な支援の内容を紹介します。
医療費の助成
身体障害者手帳を取得すると、18歳以上であれば医療費の自己負担額が原則1割に軽減されます。
また地方自治体ごとの医療費助成もあるため自己負担はさらに軽減されます。
補装具の助成
補装具とは車椅子や杖、義肢、歩行器など日常の生活をサポートしてくれる器具のことを言います。
補装具の申請や購入において助成を受けることが可能であり、自己負担額は1割まで軽減されます。
バリアフリーなどのリフォームへの助成
手すりの取り付けや段差の解消などのリフォームに必要な費用に対する助成が受けられます。
公共交通機関の割引
障害者手帳を提示することで公共交通機関であるバスや鉄道を利用する際に最大5割の割引きを受けることができます。
また場合によってタクシーや飛行機なども割引きを受けられることがあります。
また軽自動車税や自動車税や自動車取得税の減免も受けられます。
年金などの手当の給付
障害者基礎年金や、特別障害給付金などの手当が給付されます。
実際にどの給付金や手当が給付されるかはそれぞれの状況により異なります。
これらの内容は入院期間内に家族や周囲がサポートすれば十分手続き可能です。
ぜひ参考にしてみてください。
脊髄損傷退院後の支援
次に脊髄損傷急性期を脱した退院後の支援についてです。
退院後は主に障害者自立支援法に基づいたサービスを受けることができます。
主に在宅や施設で受けることのできる介護給付と、生活や就労に関する訓練に対する給付となる訓練等給付の2つのサービスがあります。
詳細は自治体や市町村により異なりますが主に下記のようなサービスが受けれます。
居宅介護
いわゆるホームヘルプで、入浴や食事、排泄などの全般的な介護を行うサービスです。
重度の肢体不自由の場合、重度訪問介護と言います。
療養介護
医療が必要な方に向けた、病院などで行われる機能訓練などのことです。
生活介護
障害者支援施設などの施設で日中に行われる入浴や排泄、食事などの日常生活の介護で、他にも創作的活動や生産活動の機会提供などの援助があります。
ショートステイ
介護する方の病気次第で、短期間の入所が必要な方には入浴や食事、排泄などの介護サービスを提供します。
ケアホーム
共同生活介護のことで、地域に根ざした共同生活住居にて食事や排泄、入浴などの介護サービスを提供します。
自立支援
日常生活や社会生活を自立させるために必要な訓練を提供する支援です。
就労移行支援
生活の自立よりもさらに進み就労活動への移行を進めるために、生産活動などの機会提供を行い就労に必要な知識や能力向上のための訓練を提供します。
就労継続支援
通常の事務所で就労が継続できない方々に対し、生産活動などの機会提供を行い就労に必要な知識や能力向上のための訓練を提供します。
退院後もこれら多くの支援を受けることができます。
再生医療の保険適用について
再生医療の保険適用について、日本では厳しい基準が設けられています。
再生医療技術を用いた治療の一部は公的医療保険の適用を受けられますが、適用外の治療も多く存在します。
特に、脊髄損傷に対する幹細胞治療や再生医療は、ケースバイケースで保険適用が決まります。
患者は治療の選択肢や適用可能な保険の範囲について詳しく理解し、経済的負担を考慮する必要があります。
幹細胞治療における保険適用
幹細胞治療は再生医療の一環として注目されていますが、すべての治療が保険適用されているわけではありません。
例えば、特定の条件下で実施される幹細胞を用いた再生医療の治療は、臨床試験や指定難病として認定された場合にのみ適用されることがあります。
患者は事前に医療機関に確認し、適用範囲や助成金制度などの利用可能な補助を検討することが大切です。
サイトカイン治療と保険適用
サイトカイン治療は免疫反応の調整により、脊髄損傷患者の回復をサポートしますが、現時点では保険適用外のケースが多いです。
治療にかかるコストは高額になることが多いため、患者は民間保険や他の支援制度を利用することを検討する必要があります。
また、治療の進展により、将来的には保険適用が拡大される可能性もあるため、最新の情報を常に確認することが推奨されます。
脊髄損傷における介護保険の適応
脊髄損傷により日常生活に支障をきたした場合、当然自宅では介護が必要になります。
しかし自費での介護資金はかなりの負担になりますので当然介護保険を利用したいところです。
結論から言えば、64歳以下で交通事故に遭い脊髄損傷になっても介護保険は適応になりません。
介護保険の対象は65歳以上の要介護または要支援を受けた者か、40歳以上の特定疾病の方です。
ちなみに脊髄を取り囲む脊柱管が狭窄する「脊柱管狭窄症」や、脊髄の周囲に存在する「後縦靭帯骨化症」は特定疾病であり、これによる脊髄損傷は介護保険の適応になります。
つまり64歳以下の外傷による脊髄損傷は介護保険の適応外なのです。
これらのことからも、身体障害者手帳の申請により支援を受けることが重要です。
また脊髄損傷患者が65歳以上になれば介護保険の適応になるため、その際は障害福祉サービスと併用して介護保険のサービスも受けることが可能になります。
介護保険の適応になれば市区町村の介護保険担当窓口で申請を行い、認定調査員が実際に本人の機能を確認した上で要介護なのか、要支援なのか介護度を認定します。
その結果が要支援であれば地域包括支援センター、要介護ならケアマネージャーに今後のケアプランを相談します。
実際のケアプランや受けられるサービスを下記に紹介します。
居宅サービス
主に訪問介護や通所リハビリテーション、短期入所生活介護などの、障害者の方が現在の住宅に住みながら受けることのできるサービスです。
施設サービス
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院などの施設に入所した障害者の方が受けることのできるサービスです。
地域密着型サービス
訪問・通所・短期入所によるサービス、認知症の方向けのサービス、特定施設や介護保険施設におけるサービスなどが各地域に根ざして提供されています。
ここまでの介護保険のサービスの内容や機能からみて、身体障害者手帳の申請で受けることのできる障害福祉サービスと内容が被っていることがよくわかりますね。
同等のサービスがある場合は基本的に介護保険サービスを優先して受けることになります。
介護保険サービスに相当するものがない障害福祉サービス固有のものとして、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援などが挙げられます。
これらについては、障害福祉サービスを優先して受けることができます。
つまり介護保険サービスを優先的に利用するというだけで、実際には申請者が必要としている支援内容次第では必要性に応じて障害福祉サービスの利用を優先することも可能なのです。
脊髄損傷に対する支援制度についてのまとめ
脊髄の機能は脳と同様で一度損傷すると回復は困難です。
脊髄損傷は日常生活に大きな影響を与えますので、本書では社会支援や保険などについて解説してみました。
また近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
骨髄から採取した幹細胞を点滴から投与すれば、幹細胞が神経に定着して死んだ神経細胞の代わりとなり再び機能が甦る可能性があるのです。
現在、多くの治療結果を積み重ねており、その成果が期待されています。
よくあるご質問
- 脊髄損傷はなぜ治らないのか?
- 脊髄は神経が束になってできています。脊髄損傷では神経が障害されて症状が発生します。神経は非常に繊細な組織であるため、一度損傷されるとその回復には限界があることから、「脊髄損傷は治らない」ということになるのです。
- 脊髄損傷の年齢分布は?
- 脊髄損傷の原因として転落や交通事故、スポーツ外傷などの原因が多い背景から、年齢分布は、これまで20歳代と60歳代の二峰性と言われてきました。
しかし、近年では患者の高齢化によって、70歳代の一峰性に変化しつつあると言われています。
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