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脊髄損傷後のメンタルケアについて

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脊髄損傷により身体的だけでなく、精神的にも障害を来たし得るということは注目すべきことです。
受傷前までできていたことができなくなることは、多大なる精神的ストレスを与えます。
早期からメンタルケアを意識した介入が必要ですが、単に薬物による治療に取り組むのではなく、社会復帰を目指す取り組みも、精神的にはよい影響を与えます。

脊髄損傷と精神疾患

脊髄を損傷し、手足が麻痺した方と精神疾患の関係は、これまで充分に解明されていませんでした。
しかしミシガン大学の研究チームが行った最近の研究によると、外傷によって脊髄損傷を負った方は、そうでない方と比較して、うつ病や不安症などの精神疾患を発症するリスクが高いことがわかりました。
研究チームの報告によると、不安障害は脊髄損傷のある方の19.3%にみられたのに対し、脊髄損傷のない方では14.1%にとどまっていました。
うつ病性障害になると、脊髄損傷のある方では29.3%、脊髄損傷のない方では9.3%と、20%も発生率に差が見られました。
なお2つ以上の精神疾患を有する人も、脊髄損傷のある方では37.4%、脊髄損傷のない方では23.9%と、発生率に違いが見られました。

(参考文献: Peterson MD, et al. Psychological Morbidity and Chronic Disease Among Adults with Traumatic Spinal Cord Injuries. Mayo Clinic Proceedings. 2020 May;95(5):920-928)

脊髄損傷後になぜ精神障害が生じるのか?

脊髄損傷後に精神障害が生じる理由について、いくつかご説明します。
まず脊髄損傷後は、生活のすべてが劇的に変化します。
これまでやっていた仕事や学業が続けられなくなり、余暇の過ごし方、家族との関わり方やそのほかの人間関係、身体イメージなど、すべてが大きく変化する可能性があります。
生活のあらゆる領域に影響が及び、トイレ、通勤・通学、家族との食事、パソコンを使った作業など、最も日常的な活動でさえ、以前とは同じようにできなくなってしまい、ストレスを感じるようになります。
これまで当たり前のように使えていたものが使えなくなると、精神的に大きな負担を感じるようになります。
そう考えると、脊髄損傷を負った方の多くが、精神衛生上の問題を経験するのは不思議なことではありません。
また脊髄損傷後は、慢性的に痛みを感じることが多く、これも精神的に確実に悪い影響を与えます。
多くの脊髄損傷後の方は、自分に対する人々の反応が以前と違うことに気づき、そのことが気になる人もいます。
外出すると見知らぬ人からじっと見られる、困っていてもなかなか手を差し伸べてもらえない、自分を無能と感じてしまう、など経験すると、自尊心が失われ、自分のアイデンティティを損なってしまうことにつながり、精神的にネガティブな影響を受けてしまいます。
こう言ったことが影響して、脊髄損傷後に精神障害が起こり得るのです。

脊髄損傷後の方へのメンタルケアの実際

脊髄損傷後の方に対するメンタルケアとは、薬を飲むことだと多くの方が考えているかもしれません。
しかし実際には、メンタルケアの選択肢はたくさんあります。
脊髄損傷に関連したうつ病やその他の精神障害に対するメンタルケアには、以下のようなものがあります。

健康的な生活習慣の回復を計画する

何気ない生活習慣の回復を計画することは、メンタルケアとして最も重要と言えるかもしれません。
運動や健康的な食事、睡眠など、健康を回復させるだけでなく心理的な幸福感を向上させることを目的に、健康的な生活習慣の回復に取り組みます。
もちろん障害の程度によっては十分な回復が得られないことは想定する必要がありますが、残存する障害に合わせた行動を計画するとよいでしょう。

過去に取り組んでいた活動への復帰に挑戦する

以前楽しんでいた活動に参加するために、何かしら新しい方法を見つけ、実際に参加することも有用です。
例えばアスリートであれば、車椅子バスケットボールを楽しむことができるかもしれません。
脊髄損傷によって運動や活動が制限されるかもしれませんが、かつて楽しんでいたすべての趣味が奪われるわけではありません。

症状緩和を目的とした薬物療法

多くの場合、本当に精神病にかかっているわけではなく、環境に反応して出ている精神障害です。
その場合、さまざまな治療に取り組んで、手足の障害やそれに関連する問題を解決するまでの間、障壁となるような精神障害に対して一時的に薬物を使用することはあります。

カウンセリング・精神療法を受ける

障害に悩み、苦しんでいる本人が、安心して気持ちを吐き出せる場所を提供することも有用です。
また経験のあるカウンセラーであれば、脊髄損傷後に問題のある思考パターンや行動パターンに陥ってしまった方に適切に対処することができます。
例えば、「もう人生における全ての楽しみを失ってしまった」という思い込みは、気持ちを落ち込ませますが、カウンセリングではこの問題のある思考パターンを消し去ることができます。

サポートグループに参加する

他の脊髄損傷後の患者さんほど、脊髄損傷後の生活の苦しみを理解する人はいません。
地元の病院やリハビリ施設にあるサポートグループは、回復への道筋をつけることができます。

リハビリテーションに取り組む

作業療法や理学療法に取り組むことで、身体能力を向上させることができます。
このようにリハビリに取り組むことは、未来を意識した考え方を持つことにつながり、結果的に精神状態が改善されることがあります。

まとめ

脊髄損傷後の精神障害、またメンタルケアについてご説明しました。
実際はメンタルケアが必要だとわかっても、何から始めればいいのかわからない人も多いでしょう。
また多くの脊髄損傷後の方は、精神的な症状が出るまでメンタルケアを受けようとしません。
しかし、症状が現れてから治療することは、症状を予防するための対策を積極的に講じることよりもはるかに困難なことです。
まずはひとりで悩むのではなく、医師と治療法について話し合うことをお勧めします。
脊髄損傷後の適切なメンタルケアは、急速に変化する生活により適切に適応するためにも不可欠なものでもあるのです。


貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表 Dr.貴宝院 永稔

大阪医科薬科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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