この記事を読んでわかること
可逆性脳血管攣縮症候群の病態がわかる
可逆性脳血管攣縮症候群と脳梗塞の関係がわかる
可逆性脳血管攣縮症候群に伴う脳梗塞の予後がわかる
可逆性脳血管攣縮症候群とは、なんらかの刺激によって脳血管の拡張と攣縮が繰り返され、激しい頭痛に襲われる疾患です。
脳血管に影響が起こることで、脳梗塞などの疾患を併発する可能性があり、場合によっては後遺症を残すこともあるため、注意が必要です。
この記事では、可逆性脳血管攣縮症候群と脳梗塞の関係性について解説します。
血管攣縮によってなぜ脳梗塞が起こるのか?
突然発症して、1分以内に痛みがピークに達する、まるで雷鳴の様な頭痛を、数日〜数週間繰り返す場合、可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の可能性があります。
可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS:Reversible cerebral vasoconstriction syndrome)とは、性行為や労作、Valsalva手技や感情などが引き金となり、交感神経の過活動・内皮の機能障害・酸化ストレスなどによって脳血管に拡張と攣縮が繰り返されることで激しい頭痛をきたす疾患です。
診断基準の1つに「発症から12週間以内に脳血管の攣縮が回復すること」とされており、基本的には予後良好な疾患です。
一方で、発症時の段階で撮影されたCT/MRIでは約55%、最終経過では81%に脳内病変の合併を認めています。
野村らの報告によれば、その内訳はくも膜下出血が30〜34%、脳内出血が12〜20%、脳梗塞が6〜39%、可逆性後頭葉白質脳症が8〜38%です。
脳梗塞以外の疾患は可逆性脳血管攣縮症候群発症から1週間以内に合併することが多く、脳梗塞は1〜2週間以内に合併することが多いです。
この背景には、下記の2つの要因が挙げられます。
- 脳血管攣縮の程度は発症から14日前後で最大になる
- 攣縮は発症初期は脳表の小血管から始まり、徐々に中血管・主幹動脈と中枢側に進展していく
小血管から始まった攣縮は徐々に中枢側に波及し、より中枢の方が狭窄の度合いが強くなることが知られており、攣縮の程度のピークである14日前後で過度な脳血管の収縮に伴い脳梗塞が誘発されると考えらています。
小さな梗塞でも要注意?高次脳機能への影響
一般的に、可逆性脳血管攣縮症候群に伴う脳梗塞が予後良好であることが多いと報告されていますが、それでも脳梗塞が怖い病気であることに変わりありません。
梗塞範囲が小さくても、ピンポイントで重要な部位が障害されればさまざまな神経学的後遺症をきたす可能性があります。
麻痺やしびれはもちろんのこと、思考・記憶・行為・言語・注意など知的な機能が障害される、いわゆる高次脳機能障害を発症する可能性もあるため、注意が必要です。
高次脳機能障害を発症した場合、下記の様な症状が出現します。
- 遂行機能障害
- 失語
- 失認
- 半側空間無視
- 記憶障害
- 認知機能障害
- 失行
これらの症状は、麻痺などと違って目立ちにくいため、本人や周囲の人が認識しにくい割に、日常生活に与える影響が大きいため、厄介な症状です。
脳梗塞が合併するケースの予後と治療経過
先述したように、一般的には可逆性脳血管攣縮症候群に伴う脳梗塞が予後良好であることが知られています。
主な治療法は通常の脳梗塞治療でも使用する脳保護薬エダラボンや、脳浮腫抑制薬であるグリセロールが使用されますが、可逆性脳血管攣縮症候群を伴う場合は血管攣縮に対してCa拮抗薬であるベラパミルが使用されることも多いです。
これらの治療効果を血管造影などで評価し、各血管の狭窄度合いを適宜評価しますが、狭窄部位や程度によっては運悪く麻痺やしびれが残存する可能性もあるため、注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、可逆性脳血管攣縮症候群と脳梗塞の関係性について詳しく解説しました。
可逆性脳血管攣縮症候群は突然の激しい頭痛が生じる良性疾患であり、その病態は脳血管の急激な拡張と攣縮です。
基本的には予後良好な疾患として知られていますが、脳血管の拡張と攣縮によってくも膜下出血や脳梗塞などの致死的な合併症を併発する可能性もあり、その発症率も決して低くないため、注意が必要です。
もし仮にくも膜下出血や脳梗塞を合併し、重篤な神経学的後遺症を残してしまった場合、症状改善のためにはリハビリテーションが主な治療法となります。
しかし、現在の医療では完全に根治することは困難であり、それに対し近年では可逆性脳血管攣縮症候群の後遺症に対する新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
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「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった可逆性脳血管攣縮症候群の後遺症改善が期待できます。
よくあるご質問
- RCVS症候群とは何ですか?
- RCVS症候群とは、日本語で可逆性脳血管攣縮症候群のことで、脳血管が拡張・攣縮することで電撃的に頭痛が生じる疾患です。
性行為や出産、高血圧、Valsalva手技などがきっかけで発症することが多いです。 - 可逆性脳血管攣縮症候群の合併症は?
- 可逆性脳血管攣縮症候群の合併症として、くも膜下出血・脳梗塞・一過性脳虚血発作・脳出血などが報告されています。
これらの合併症の有無が予後に大きく影響するため、注意が必要です。
<参照元>
(1):可逆性脳血管攣縮症候群(Reversible cerebral vasoconstriction syndrome)|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/35/4/35_416/_pdf
(2):脳梗塞を合併した可逆性脳血管攣縮症候群の小児例の呈示と既報例のレビュー|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspr/36/2/36_153/_pdf/-char/ja
(3):高次脳機能障害について|日本医師会:https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/358-375.pdf
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