脳卒中後に笑いが止まらない?感情失禁の原因と対処法 | 脳卒中・脊髄損傷|麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

脳卒中後に笑いが止まらない?感情失禁の原因と対処法

           

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この記事を読んでわかること

感情失禁の病態がわかる
感情失禁と脳梗塞の関係がわかる
感情失禁の具体的な症状がわかる


脳梗塞後の後遺症の1つに、普段穏やかだった人がすぐに怒るようになったり、突然笑い出すようになる、いわゆる感情失禁が挙げられます。
症状によっては他者とのコミュニケーションに重大な支障をきたすため、注意が必要です。
この記事では、脳卒中によって感情失禁が生じるメカニズムや、具体的な症状について詳しく解説します。

脳卒中で起こる感情失禁とは?笑いや泣きが制御できない症状のメカニズム

脳卒中で起こる感情失禁とは?笑いや泣きが制御できない症状のメカニズム
脳卒中発症後、麻痺やしびれなどの後遺症が残ることが一般的ですが、中には感情失禁を起こす人もいます。
感情失禁とは、些細な刺激や感情の動きによって、過剰に泣いたり笑うなどの感情変化をきたす状態です。
感情失禁は他者とのコミュニケーションに支障をきたすのみならず、食事中や飲水中に誤嚥やむせ込む可能性もあるため、注意が必要です。
ではなぜ感情失禁が生じるのでしょうか?
これは、下記のような情動に関わる神経回路(これを基底外側回路と呼ぶ)が前頭葉眼窩面に存在しており、そこが何らかの原因で障害されるためです。

基底外側回路:扁桃体→視床背内側核→前頭葉眼窩皮質→側頭極→扁桃体

また上記以外にも視床下部や大脳基底核が基底外側回路と連携し、複雑な情動をコントロールしていると考えられています。
そのため、脳梗塞や脳出血でこれらの部位が障害されることで、感情失禁が生じると考えられます。

どの部分が損傷すると感情失禁になるのか?原因となる脳の部位

先述したように、基底外側回路が障害されると感情失禁が引き起こされ、脳の部位で言えば主に前頭葉にあります。

  • 前頭葉穹窿面の損傷:感情の平坦化・無関心・無感情・発動性の低下
  • 前頭葉眼窩面の損傷:児戯性・多幸感・脱抑制

特に、感情失禁をきたす場合は前頭葉眼窩面を損傷している可能性が高いです。
ただし、前頭葉には情動に関わるさまざまな神経回路が存在していると考えられており、原因疾患の範囲によっては複数の神経回路が障害され、さまざまな情動の変化が混在して出現する可能性があります。
例えば、基底外側回路のうち、前頭葉眼窩皮質が主に障害される場合は、上機嫌・多幸感・脱抑制・判断力の低下・躁状態などの人格変化が指摘されることが多いです。
一方で、基底外側回路のうち、視床背内側核やそれと連携する視床下部が障害される場合は、言語の幼稚化や多幸感が出現しやすいと報告されています。
さらに、視床背内側核・前頭葉眼窩皮質と同時に、これらと連携する大脳基底核が障害される場合、強迫性障害などの人格障害が出現したケースも報告されています。
以上のことからも、どの部位がどの程度障害されるかで出現する情動・人格の変化も個人差が大きいです。

笑いが止まらない症状の他に見られる感情失禁のサイン

感情失禁のサイン
感情失禁の状態では、笑いが止まらない以外にもさまざまな症状が出現します。
感情失禁では、起きた出来事や自身の感情の変化に対して過度に反応してしまうだけでなく、起きた出来事に沿わない感情の変化をきたします。

  • 些細なことで過度に泣いたり怒ったりする
  • 葬儀など、笑うような場面でないにも関わらず笑いが止まらない
  • プレゼントをもらったのに、プレゼントしてくれた相手に怒る

一方で、躁状態の方では怒りやすくなる「易怒性」と呼ばれる変化をきたしたり、うつ病患者では悲観しやすくなり、しばしば感情失禁と混同されることもあるため注意が必要です。
感情失禁とは主に前頭葉をはじめとする情動に関与する神経回路の異常によって生じる病態であり、うつ病や躁状態などによる人格の変化とは区別して考える必要があります。

まとめ

今回の記事では、脳卒中後に笑いが止まらなくなる、感情失禁の原因について詳しく解説しました。
脳梗塞や脳出血によって前頭葉の一部が損傷されることで、無関心や感情の平坦化、もしくは感情失禁など、さまざまな情動の変化をきたします。
前頭葉のどの部位がどのように障害されるかによって、出現する情動の変化もさまざまです。
後遺症として残ってしまうと、他者とのコミュニケーションに重大な支障をきたし、その後の生活にも大きく影響が出るため、まずは根本の原因となる疾患の治療が最優先です。
しかし、現状では脳卒中によって出現する後遺症に対して、症状を根治する術はなく、リハビリテーションが唯一の改善策となります。
一方で、近年では脳梗塞後の感情失禁に対して再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、脳梗塞後遺症の感情失禁の改善も期待できます。

よくあるご質問

感情失禁を治す方法はありますか?
感情失禁の治療法として、選択的セロトニン再取り込み阻害剤やβ遮断薬などの薬剤投与が挙げられます。
一方で、これらの治療はあくまで対症療法であり、原因を根治できる治療法ではありません。

脳卒中になると感情失禁になる?
脳卒中になると感情失禁になる可能性があります。
脳内には情動に関わる神経回路が複数存在していると考えられており、多くが前頭葉に位置しているため、前頭葉の損傷によって感情失禁が出現する可能性があります。

<参照元>
J STAGE:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/31/3/31_3_173/_pdf
J STAGE:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/125/2/125_2_83/_pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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