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脳卒中に対するtms治療

           

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脳卒中の急性期には生命維持を優先して治療が行われ、残った症状に対しては飲み薬やリハビリテーションで治療を行っていきます。
薬剤やリハビリはどちらも効果的な治療方法ですが、一定の限界があり新たな手法が求められています。
tmsは磁気の刺激を利用して脳の活動性を調整し、治療に応用する手法です。
脳卒中治療の一翼としての役割が期待されています。
この記事では、tmsによる脳卒中の治療について解説していきます。

tmsとは

tms
tmsとはtranscranial magnetic stimulationの頭文字を取った用語で、日本語では「経頭蓋磁気刺激」といいます。
頭皮に専用のコイルを設置し、電流を流すことで発生する磁気により脳を刺激します。
磁気は人の体の中でも容易に伝わるため、効率よく脳を刺激することができます。
似た治療に頭から電気を通す「電気痙攣療法」がありますが、電気の場合骨の電気抵抗が高いため、大きな電力が必要となり体にかかる負担が大きくなります。
磁気であればほとんど痛みを感じることなく、脳を刺激することが可能です。
tmsはもともと脳の検査として行われていましたが、検査を行う中で脳の刺激により脳の活動性が変化することが明らかとなり、治療に応用されるようになりました。
磁気により脳を1秒に5-10回という高頻度で刺激すると脳の活動は活性化し、脳を1秒に1回の低頻度で刺激すると逆に脳の活動は抑制されます。
これらの性質を利用することで、脳の活動性を調節することが可能になるわけです。
アメリカやヨーロッパではうつ病に対する治療としてtmsが保険適応となり、日本でも2019年に認可されました。
うつ病以外にも、ヨーロッパから出されているガイドラインによれば神経性の疼痛、脳卒中による運動麻痺に対して有効(level A)とされています。

脳卒中慢性期に対するtms治療

脳卒中は慢性期になると損傷された部位は活動性が低下し、損傷されていない逆側では過剰な活動となっていることがあります。
そのため細かな動きができず、運動麻痺となっているのです。
そこでtmsでは損傷された側には高頻度の磁気刺激、損傷されていない側には低頻度の磁気刺激を与えることで、損傷側の活動性を向上させ非損傷側では活動性を抑えるようにします。
すると左右のアンバランスが改善し、症状の軽快につながる可能性があるのです。
現在のところ軽度・中等度の上肢麻痺に対して効果が認められています。
機能が改善した患者さんを調べると、体内の神経栄養因子(BDNF)が増加し、障害された側の脳血流量が増加していました。
慢性期になってしまうと打つ手がない、というのが脳卒中治療の常識である中、画期的な研究結果であると言うことができます。

急性期の脳卒中に対するtmsの効果

脳卒中の急性期には脳の障害が進行するため、損傷の拡大を最小限に留めるための治療が必要です。
発症後間もないうちから行うリハビリテーションが治療に有効であることはご存知の通りですが、これは障害された神経回路を早いうちに働かせることで、神経を保護する作用を期待したものになります。
そこでtmsを脳卒中の急性期から使用し、リハビリテーションと同じように障害された神経回路を働かせることで神経の障害を最小限にしようという試みが行われています。
下肢の運動麻痺は生活への影響が特に大きい症状の一つですが、急性期のtms治療で下肢麻痺が改善したという研究報告も出されています。
tmsが脳卒中の治療において重要な役割を占めるようになってきている、と言うことができます。

再生医療とtmsの組み合わせ治療

tmsは神経の栄養因子や血流量を変化させ、脳の機能改善や損傷拡大の防止といった効果を示す治療法です。
同じように急性期には脳の回復能力を最大限に引き出し、回復期以降は脳の機能を再生し改善しようとする治療法が、再生医療です。
再生医療では神経の元になる細胞を移植し、体内で増殖し成長する中で神経の栄養因子や成長因子を分泌し、脳に対して保護的に作用します。
成長した細胞が脳に定着し、神経として働くようになることを確認した研究結果もあります。
再生医療とtmsはその作用機序が近いことから、組み合わせて治療に用いることで相乗効果を期待することができます。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
脳卒中に対しては、再生医療と最先端のリハビリテーション、tmsを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
脳卒中の症状にお悩みの方、またtmsによる治療を希望される患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。

まとめ

tms治療について、脳卒中に対する治療応用を中心に解説しました。
磁気による刺激は副作用が少なく、体への負担が軽い治療方法です。
再生医療も安全性が向上し、負担の軽い治療方法として発展してきています。
両者の併用による治療効果が期待されています。

<参考>
「反復性経頭蓋磁気刺激法を併用したリハビリテーション治療」Jpn J Rehabil Med 58, 2021
「急性期脳卒中における反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)の有効性と役割」聖マリアンナ医科大学雑誌48, 2021
「High-frequency rTMS on leg motor area in the early phase of storoke.」Acta Neurol Belg 117, 2017

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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